倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

三角形の合同条件を3つも覚えられない君に贈る

義務教育を受けているなら、中学校で三角形の合同条件を3つ学習していると思います。 その3つはこんなのでした:

  • 3辺相等・・・3辺がそれぞれ等しい
  • 2辺挟角相等・・・2辺とその間の角がそれぞれ等しい
  • 1辺両端角相等・・・1辺とその両端の角がそれぞれ等しい

まぁ、覚えてしまえばそれまでですが、何故合同条件が3つもあるのか?というちょっとした疑問も残るところ。 この記事では「3辺相等」以外の合同条件が満たされていればキチンと3辺が等しくなることを示します。 つまり、合同条件を1つに集約できることを示します*1

下図は2つの三角形の角や辺に用いる文字の定義:

2辺挟角相等 ⇒ 3辺相等

2辺とその間の角がそれぞれ等しいときに、それ以外の他の1辺も等しくなることを示します。 ここでは

  • { b = b' }
  • { c = c' }
  • { A = A' }

のとき { a = a' } を示すことにします。

証明
{ \triangle ABC } に対して余弦定理より

  { \displaystyle
\begin{align*}
    a^2 = b^2 + c^2 - 2bc \cos A
\end{align*}
}

同様に、{ \triangle A'B'C' }に対して余弦定理より

  { \displaystyle
\begin{align*}
    a'^2 &= b'^2 + c'^2 - 2b'c'\cos A'
\end{align*}
}

ここで { b= b',\,c = c',\,A = A' } を用いると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    a'^2 &= b^2 + c^2 -2bc\cos A \\
            &= a^2
\end{align*}
}

{ a,\,a' } が共に正なので

  { \displaystyle
\begin{align*}
    a = a'
\end{align*}
}

となる。【Q.E.D.

2辺とその間以外の角が等しいとき、その他の1辺の長さは必ずしも等しくならないことが示せます。 例えば { a = a',\,b = b',\,A = A' } のとき、

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \begin{cases}
        c = c' \\
        b\cos A = \dfrac{c + c'}{2}
    \end{cases}
\end{align*}
}

のいずれかが成り立ちます。 下の条件が成り立っている場合は、2つの三角形は合同にはなりません(両方の条件が成り立つ場合は合同になりますが)。

1辺両端角相等 ⇒ 3辺相等

1辺とその両端の角が等しいときに、それ以外の他の2辺も等しくなることを示します。 ここでは

  • { a = a' }
  • { B = B' }
  • { C = C' }

のとき { b = b',\,c = c' } を示すことにします。

証明
{ A,\,B,\,C } が三角形の内角なので、

  { \displaystyle
\begin{align*}
    A + B + C = 180^\circ
\end{align*}
}

同様に

  { \displaystyle
\begin{align*}
    A' + B' + C' = 180^\circ
\end{align*}
}

ここで { B = B',\,C = C' } より { A = A' } となる。

次に、{ \triangle ABC,\, \triangle A'B'C' } の外接円の半径をそれぞれ { R,\,R' } とすると*2、正弦定理より

  { \displaystyle
\begin{align*}
    R &= \frac{a}{2\sin A} \\
    R' &= \frac{a'}{2\sin A'} = \frac{a}{2\sin A} = R
\end{align*}
}

となり、外接円の半径は等しい。

これを用いて

  { \displaystyle
\begin{align*}
    b &= 2R\sin B \\
    b' &= 2R'\sin B' = 2R\sin B = b
\end{align*}
}

よって { b = b' }。 同様に c' = c も示せて、結局 { b = b',\,c = c' } となる。【Q.E.D.

「1辺とその両端の角が等しい」ことが合同条件ですが、三角形の内角が180°であることを使えば、等しい2角が必ずしも等しい辺の両端の角である必要はありません。

*1:1つに集約したい合同条件を他の2つの条件のどちらかにすることもできますが、ここでは省略。

*2:外接円の半径を持ち出してこなくても証明はできますが。