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倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

ちょっとマクスウェル方程式を分類してみる

一般的なマクスウェル方程式

電気・磁気の従うマクスウェル方程式 (Maxwell's Equations) は以下の4つ(ベクトルの各成分を独立に考えれば6つ)の方程式で与えられます:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{div}\, \textbf{D}({\bf x}, t) &= \rho(\textbf{x}, t) &\qquad
    \textrm{rot}\,\textbf{E}(\textbf{x}, t) + \frac{\partial \textbf{B}(\textbf{x}, t)}{\partial t} &= \textbf{0}  \\[4mm]
    \textrm{div}\, \textbf{B}\textbf{x}, t) &= 0 &\qquad
    \textrm{rot}\,\textbf{H}(\textbf{x}, t) - \frac{\partial \textbf{D}(\textbf{x}, t)}{\partial t} &= \textbf{i}(\textbf{x}, t)
\end{align*}
}

ここで { \textbf{E},\,\textbf{D} } は電場、電束密度{ \textbf{H},\,\textbf{B} } は磁場、磁束密度です。 少々電気、磁気で非対称ですが、電束密度と磁場が物質(媒質)の性質を反映しています。 また、物質の分布は { \rho,\,\textbf{j} }電荷分布、電流分布で与えられます。 ちなみに、微分演算子 div, rot はそれぞれベクトル { \textbf{A} } に対して

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{div}\,\textbf{A} &= \nabla\cdot\textbf{A} & \textrm{rot}\,\textbf{A} &= \nabla\times\textbf{A}
\end{align*}
}

のように作用します*1。 ただし

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \nabla = 
        \begin{pmatrix}
            \frac{\partial}{\partial x} \\
            \frac{\partial}{\partial y} \\
            \frac{\partial}{\partial z}
        \end{pmatrix}
    
\end{align*}
}

です。

誘電率透磁率による書き換え

ここで、物質(媒質)が線形応答(電束密度、磁場がそれぞれ電場、磁束密度の1次にのみ依存)、一様(電束密度の電場に対する比例定数、磁場の磁束密度に対する比例定数が座標に依存しない)、等方的(その比例定数が { x,\,y,\,z } 成分について同じ)な場合、電束密度、磁場は電場、磁束密度を用いて以下のように書けます:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textbf{D}(\textbf{x}, t) &= \varepsilon \textbf{E}(\textbf{x}, t) \\
    \textbf{B}(\textbf{x}, t)  &= \mu\textbf{H}(\textbf{x}, t)
\end{align*}
}

{ \varepsilon,\,\mu } はそれぞれ誘電率透磁率と呼ばれ、電束密度、磁場の代わりに物質の性質を反映している量です。 これを用いて上記のマクスウェル方程式は以下のように書き換えられます:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{div}\,\textbf{E}(\textbf{x}, t) &= \frac{\rho(\textbf{x}, t)}{\varepsilon} &\qquad
    \textrm{rot}\,\textbf{E}(\textbf{x}, t) + \frac{\partial \textbf{B}(\textbf{x}, t)}{\partial t} &= {\bf 0} \\[4mm]
    \textrm{div}\,\textbf{B}(\textbf{x}, t) &= 0 &\qquad
    \textrm{rot}\,\textbf{B}(\textbf{x}, t) - \frac{1}{c^2}\frac{\partial \textbf{E}(\textbf{x}, t)}{\partial t} &= \mu{\bf i}(\textbf{x}, t)
\end{align*}
}

ただし

  { \displaystyle
\begin{align*}
    c = \frac{1}{\sqrt{\varepsilon \mu}}
\end{align*}
}

は物質(媒質)中の光の速度です。 真空中では

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \varepsilon_0 &= 8.854 \times 10^{-12} [\textrm{A^2 sec^2 / N m^2}]  \\
    \mu_0 &= 4\pi \times 10^{-7} [\textrm{N / A^2}] \\
    c &= 2.999 \times 10^8 [\textrm{m/sec}]
\end{align*}
}

マクスウェル方程式の分類

以上を踏まえてマクスウェル方程式を2つずつ2組に分類してみましょう。 面倒なので引数は省略します。 後日、各回を詳しくやる予定。 あくまで予定。

方程式の形による分類
まずは方程式の見た目で分類した場合。

  { \displaystyle
\begin{align*}
    &\begin{cases}
        \displaystyle{ \textrm{div}\,\textbf{E} = \frac{\rho}{\varepsilon} } \\[4mm]
        \displaystyle{ \textrm{div}\,\textbf{B} = 0 }
    \end{cases} &
    \begin{cases}
        \displaystyle{ \textrm{rot}\,\textbf{E} + \frac{\partial \textbf{B}}{\partial t} = \textbf{0} } \\[4mm]
        \displaystyle{ \textrm{rot}\,\textbf{B} - \frac{1}{c^2}\frac{\partial \textbf{E}}{\partial t} = \mu\textbf{i} }
    \end{cases}
\end{align*}
}

これは素直な分類かと。 方程式の形が同じなら、使い方も同じなので道理にも適ってますな。 数学者よりの人が好むかな。 もう少し詳しくはこちら

静的な場合の電気・磁気による分類
次は静的 (static) な場合、つまり方程式中の時間微分の項を0にしたものを分類した場合。 電流は電荷の流れなので、完全な静的状態では電流もなくなってしまって制限が強くなるので、電流は存在してもその分布が時間的に変化しない定常状態 (steady state) の場合も含めましょう。 時間微分項を落とした後の分類の仕方もいくつかありそうだけど、ここでは電場を含むものと磁束密度を含むもので分類しました。

  { \displaystyle
\begin{align*}
    &\begin{cases}
        \displaystyle{ \textrm{div}\,\textbf{E} = \frac{\rho}{\varepsilon} } \\[4mm]
        \displaystyle{ \textrm{rot}\,\textbf{E} = \textbf{0} }
    \end{cases} &
    \begin{cases}
        \displaystyle{ \textrm{div}\,\textbf{B} = 0 } \\[4mm]
        \displaystyle{ \textrm{rot}\,\textbf{B} = \mu\textbf{i} }
    \end{cases}
\end{align*}
}

静的、つまり時間的に変化しない安定志向の人に好まれるかと。

場を規定する方程式、場と物質との相互作用を表す方程式で分類
最後は場のみしか含まないか、物質を含むかでの分類。 物質は電荷密度 { \rho } と電流密度 { \textbf{i} } によって与えられるので、これらを含むか含まないかでの分類です。

  { \displaystyle
\begin{align*}
    &\begin{cases}
        \displaystyle{ \textrm{rot}\,\textbf{E} + \frac{\partial \textbf{B}}{\partial t} = \textbf{0} } \\[4mm]
        \displaystyle{ \textrm{div}\,\textbf{B} = 0 }
    \end{cases} &
    \begin{cases}
        \displaystyle{ \textrm{div}\,\textbf{E} = \frac{\rho}{\varepsilon} } \\[4mm]
        \displaystyle{ \textrm{rot}\,\textbf{B} - \frac{1}{c^2}\frac{\partial \textbf{E}}{\partial t} = \mu\textbf{i} }
    \end{cases}
\end{align*}
}

ちなみに2組目を電束密度、磁場を用いて書き直す(書き戻す?)と

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{div}\,\textbf{D} &= \rho &
    \textrm{rot}\,\textbf{H} - \frac{\partial \textbf{D}}{\partial t} &= \mu\textbf{i}
\end{align*}
}

となり、電場・磁束密度を使わずに書けます。 これは物質が場に与える影響を電束密度・磁場としたので当たり前と言えば当たり前ですが。 ということで、場と物質の相互作用は電束密度・磁場を通して現れます。

この分類は物質と場との関係に重点を置いているので、より物理っぽい物理屋に好まれるかと。

マクスウェル方程式のいくつかの分類方法を簡単に見てみましたが、自分が最初に「こうだ!」と思ったものはどれだったでしょうか? なんとなくちゃちい心理テストっぽくもあるかなぁと書いてて思いましたが。 ちなみに、分類の組み分けはともかく、その分類がどういう視点でのものか?というのは上で書いた以外にもまだまだあるかと思うので、みなさんもマクスウェル方程式を眺めて独自の視点から分類してみてはいかがでしょうか?

理論電磁気学

理論電磁気学

電磁気学 (上) (物理学叢書 (90)) ジャクソン電磁気学〈下〉 (物理学叢書)

*1:rot はしばしば curl と書かれることもあります。