読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

マクスウェル方程式 分類その1 ~方程式の形による分類~

電磁気学

前回マクスウェル方程式をいくつかの方法で分類しましたが、今回から何回かで各分類をもう少し詳しく見ていきます。 今回は方程式の形による分類。 分類は以下のようになります:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    &\begin{cases}
        \displaystyle{ \textrm{div}\,\textbf{E} = \frac{\rho}{\varepsilon} } \\[4mm]
        \displaystyle{ \textrm{div}\,\textbf{B} = 0 }
    \end{cases} &
    \begin{cases}
        \displaystyle{ \textrm{rot}\,\textbf{E} + \frac{\partial \textbf{B}}{\partial t} = \textbf{0} } \\[4mm]
        \displaystyle{ \textrm{rot}\,\textbf{B} - \frac{1}{c^2}\frac{\partial \textbf{E}}{\partial t} = \mu\textbf{i} }
    \end{cases}
\end{align*}
}

方程式の形が似ていれば数学的な取り扱いも同じになるのがこの分類の長所ですかね。

1組目

まずは1組目の発散 (div) を含む方程式を見ていきましょう。 

1つ目の方程式
1つ目の方程式

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{div}\,\textbf{E} = \frac{\rho}{\varepsilon}
\end{align*}
}

に関して、両辺を任意の体積 V で積分すると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \int_V \textrm{div}\,\textbf{E}\,dV &= \frac{1}{\varepsilon}\int_V \rho \,dV & \cdots (1)
\end{align*}
}

ここで、左辺にガウスの定理(発散定理 divergence theorem)を用いると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \int_V \textrm{div}\,\textbf{E}\,dV = \oint_{\partial V}\textbf{E}\cdot d\textbf{S}
\end{align*}
}

となります。 ただし { \partial V } は 体積 { V } の境界(表面)、{ d\textbf{S} } はその境界の面積要素(方向は面の各点での外向き法線方向)です。 これを (1) 式に使うと

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \oint_{\partial V}\textbf{E}\cdot d\textbf{S} = \frac{1}{\varepsilon}\int_V \rho \,dV
\end{align*}
}

さらに電束密度 { \textbf{D} } と体積 { V } 内の全電荷 { Q_V } を用いて書き換えると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \oint_{\partial V} \textbf{D}\cdot d\textbf{S} &= Q_V &
    \left(\textbf{D} = \varepsilon\textbf{E}, \quad Q_V = \int_V \rho\,dV\right)
\end{align*}
}

左辺は閉曲面 { \partial V } を貫く電束密度なので、これは「ある閉曲面を貫く電束密度を全て加えるたものは、その閉曲面に囲まれる領域内に存在する全電荷に等しい」というガウスの法則 (Gauss's low)を導きます。 ちなみに電束密度の単位が { \textrm{C/m}^2 } ということも分かりますね。

2つ目の方程式
2つ目の方程式からも同様の関係式が導けて

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \oint_{\partial V}\textbf{B}\cdot d\textbf{S} = 0
\end{align*}
}

これは「ある閉曲面を垂直に貫く磁束密度を全て加えると0になる」ということですが、上記の電場の場合と比べると、「磁気単極子モノポール monopole)が存在しない」という風にも言い換えられます。

2組目

次は2組目の回転 (rot) を含む方程式。 

1つ目の方程式
1つ目の方程式を変形して

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{rot}\,\textbf{E} = -\frac{\partial \textbf{B}}{\partial t}
\end{align*}
}

この両辺を任意の曲面 { S } 上で積分すると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \int_S\textrm{rot}\,\textbf{E}\cdot d\textbf{S} &= -\frac{\partial }{\partial t}\int_S\textbf{B}\cdot d\textbf{S} & \cdots (2)
\end{align*}
}

左辺にストークスの定理 (Stokes' theorem) を適用すると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \int_S\textrm{rot}\,\textbf{E}\cdot d\textbf{S} = \oint_{\partial S} \textbf{E} \cdot d\textbf{r}
\end{align*}
}

となります。 ここで { \partial S } は曲面 { S } の境界(閉曲線)、{ d\textbf{r} } は境界上の線要素(方向は曲線の各点での接線方向)です。 これを用いると (2) 式は以下のようになります:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \oint_{\partial S} \textbf{E} \cdot d\textbf{r} = -\frac{\partial }{\partial t}\int_S\textbf{B}\cdot d\textbf{S}
\end{align*}
}

ここで、曲面 { S } を貫く磁束を { \Phi_S } とし、また曲面 { S } が時間的に変化しない(よって右辺の時間に関する偏微分が全微分で書ける)とすると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \oint_{\partial S} \textbf{E} \cdot d\textbf{r} &= -\frac{d{\bf \Phi}_S}{dt} &
    \left({\bf \Phi}_S = \int_S \textbf{B}\cdot d\textbf{S} \right)
\end{align*}
}

を得ます。 右辺は閉曲線 { \partial S } の周りに生じる起電力を表すので、上式は「ある曲面を貫く磁束が時間的に変化すると、その曲面の境界には磁束の周りに逆方向に起電力が生じる」というファラデーの電磁誘導の法則 (Faraday's law of induction) を導きます。 ただし、ある曲面を貫く方向に対して、その周りに順方向というのを右ねじの法則にしたがう方向と定めます。 逆方向に起電力が生じるというのは上式の負符号から来ています。

2つ目の方程式
2つ目の方程式に同様のことを施すと

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \oint_{\partial S} \textbf{H} \cdot d\textbf{r} &= \textbf{I}_S + \frac{d \textbf{N}_S}{d t} &
    \left(\textbf{I}_S = \int_S \textbf{i}\cdot d\textbf{S},\quad \textbf{N}_S = \int_S \textbf{D}\cdot d\textbf{S}\right)
\end{align*}
}

を得ます。 { \textbf{I}_S,\,\textbf{N}_S } はそれぞれ曲面 { S } を貫く電流と電束の総和です。 電束の時間変化は特に変位電流 (displacement current) と呼ばれ、マクスウェルによって導入されました。 これを踏まえると、上式は「曲面を貫く電流と変位電流は、その曲面の境界に順方向に磁場を発生させる」というアンペール-マクスウェルの法則を導きます。

特に電束密度が時間的に変化しない、もしくはその変化が小さいとき、変位電流の効果は無視できて

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \oint_{\partial S} \textbf{H} \cdot d\textbf{r} = \textbf{I}_S
\end{align*}
}

となりますが、これは「電流の周りに磁場が生じる」というアンペールの法則 (Ampere's circuital law) になります。

変位電流
変位電流が出てきたのでちょっと補足。 マクスウェル方程式をこの形にまとめた、名前の由来にもなっているマクスウェルが、アンペールの法則を表す式に変位電流の項を追加したことは有名かと思いますが、ここで簡単に導いてみましょう。

まず、前提として電荷の保存則が必要です。 固定された任意の体積 { V } 内での電荷の保存則は

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \frac{d}{dt}\int_V \rho \,dV = - \oint_{\partial V} \textbf{i}\cdot d\textbf{S}
\end{align*}
}

右辺にガウスの定理(発散定理)を用いて、{ V } が任意体積(時間に依存しない)であることを用いると、以下の微分形の電荷の保存則が導かれます:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \frac{\partial \rho}{\partial t} + \textrm{div}\,\textbf{i} = 0
\end{align*}
}

これを踏まえて、もしマクスウェル方程式に変位電流の項がない場合(アンペールの法則)を考えてみましょう。 このとき

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{rot}\, \textbf{H} = \textbf{i}
\end{align*}
}

の両辺の発散 (div) をとると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{(l.h.s)} &= \textrm{div}\left(\textrm{rot}\,\textbf{H}\right) = \partial_i\epsilon_{ijk}\partial_j H_k = 0 \\
    \textrm{(r.h.s)} &= \textrm{div}\,\textbf{i} = -\frac{\partial \rho}{\partial t}
\end{align*}
}

となり、電荷が時間変化しない場合には問題ないですが、そうでない場合には方程式が成立しません。

上記の場合、発散をとると電荷の時間変化に関する項が残るので、電束密度の発散が電荷に等しいというマクスウェル方程式の1つ

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{div}\,\textbf{D} = \rho
\end{align*}
}

に着目して、アンペールの法則を

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{rot}\, \textbf{H} = \textbf{i} + \frac{\partial \textbf{D}}{\partial t}
\end{align*}
}

とすると、両辺の発散をとったとき(左辺は先ほどと同じく0)

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textrm{(r.h.s)}
        &= \textrm{div}\,\textbf{i} + \frac{\partial \textrm{div}\,\textbf{D}}{\partial t} \\
        &= -\frac{\partial \rho}{\partial t} + \frac{\partial \rho}{\partial t} \\
        &= 0
\end{align*}
}

となり、上記の問題が解消します。

理論電磁気学

理論電磁気学

電磁気学 (上) (物理学叢書 (90)) ジャクソン電磁気学〈下〉 (物理学叢書)