倭算数理研究所

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3次元の点と平面の距離の公式を導く ~ラグランジュの未定乗数法編~

前回極値条件を解いて点と平面の距離の公式を導きましたが、拘束条件がある場合の極値問題はラグランジュ乗数法 (method of Lagrange multiplier) を用いるのが定石なので、今回はその方法で点と平面の距離の公式を導いてみます(目次)。

問題設定

まず、記法を簡単にするため、以下の2つの関数を導入しましょう:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    f(x,\,y,\,z) &= (x - p)^2 + (y - q)^2 + (z - r)^2 \\ g(x,\,y,\,z) &= ax + by + cz + d
\end{align*}
}

これを踏まえて、{ f(x,\,y,\,z) } は点 { (x,\,y,\,z) } と点 { P(p,\,q,\,r) } との距離の自乗となり、また { g(x,\,y,\,z) = 0 } は平面 { ax + by + cz + d = 0 } (以下、平面 { \alpha })を表します。 このとき、点 { P } と平面 { \alpha } の距離は「拘束条件 { g(x,\,y,\,z) = 0 } のもとでの { f(x,\,y,\,z) } を最小値(の正の平方根)」という条件から求まります。

ラグランジュの未定乗数法

拘束条件 { g(x,\,y,\,z) = 0 } のもとでの { f(x,\,y,\,z) } の最小値を求めるために、まずこの場合の極値を求めましょう。 拘束条件がある場合の極値問題は、ラグランジュの未定乗数 { \lambda } を導入して以下の関数 { \Phi(x,\,y,\,z,\,λ) } を定義し

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \Phi (x,\,y,\,z,\,\lambda)
        &= f(x,\,y,\,z) -\lambda g(x,\,y,\,z) \\
        &= (x - p)^2 + (y - q)^2 + (z - r)^2 - \lambda (ax + by + cz + d)
\end{align*}
}

この関数に対して、拘束条件がない場合と同様に極値を求めればいいのでした。

極値条件

極値条件は

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \frac{\partial \Phi}{\partial x}
        = \frac{\partial \Phi}{\partial y}
        = \frac{\partial \Phi}{\partial z}
        = \frac{\partial \Phi}{\partial \lambda}
        = 0
\end{align*}
}

です。 { \Phi } の表式を使ってこれらの条件を具体的に計算すると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    & 2(x - p) - \lambda a = 0 & \cdots (1) \\
    & 2(y - q) - \lambda b = 0  & \cdots (2) \\
    & 2(z - r) - \lambda c = 0 & \cdots (3) \\
    & ax + by + cz + d = 0 & \cdots (4)
\end{align*}
}

を得ます。 これらを { x,\,y,\,z,\,\lambda } の4つの変数の連立方程式として解きましょう。 (1), (2), (3) より

  { \displaystyle
\begin{align*}
    &\begin{cases}
        x = p + \frac{1}{2}\lambda a \\
        y = q + \frac{1}{2}\lambda b \\
        z = r + \frac{1}{2}\lambda c
    \end{cases} &
    \cdots (5)
\end{align*}
}

これらを (4) 式に代入すると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    & ap + bq + cr + d + \frac{1}{2}\lambda (a^2 + b^2 + c^2) = 0 \\
    \therefore\quad & \lambda = - \dfrac{2(ap + bq + cr + d)}{a^2 + b^2 + c^2}
\end{align*}
}

この { \lambda } の式を (5) 式に代入すれば、残りの変数の { x,\,y,\,z } の値も求まりますが、式がちょっと込み入ってるので省略。 また

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \frac{\partial^2 \Phi}{\partial x^2}
        = \frac{\partial^2 \Phi}{\partial y^2}
        = \frac{\partial^2 \Phi}{\partial z^2}
        = 2 > 0
\end{align*}
}

より、この極値は極小値(よって最小値)であることも分かります。

点と平面の距離

前節で求めた { \lambda,\,x,\,y,\,z }{ f(x,\,y,\,z) } (これは拘束条件 { g = 0 } が成り立っている場合は { \Phi } に等しい)に代入すると、求めたい点 { P } と平面 { \alpha } との距離の自乗が求まります。 { x,\,y,\,z } の表式として (5) 式の形を用いて

  { \displaystyle
\begin{align*}
    f(x,\,y,\,z)
        &= \frac{\lambda^2}{4}(a^2 + b^2 + c^2) \\
        &= \frac{(ap + bq + cr + d)^2}{a^2 + b^2 + c^2}
\end{align*}
}

となります。 よって求める距離は

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \frac{\left|ap + bq + cr + d\right|}{\sqrt{a^2 + b^2 + c^2}}
\end{align*}
}

また、{ \lambda } の表式を (5) 式に与えると、点 { P } との距離が最小値を与える平面上 { \alpha } の点の座標が求まります。 実際に計算してみると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \left(p + ka,\, q + kb,\, r + kc\right) \qquad \left(k = \frac{ap + bq + cr + d}{a^2 + b^2 + c^2}\right)
\end{align*}
}

を得ます。 この点を { H } とすると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \overrightarrow{PH} &= (ka,\,kb,\,kc) = k\vec{n} & (\vec{n} = (a,\,b,\,c))
\end{align*}
}

となり、{ \overrightarrow{PH} } が平面 { \alpha } の法線ベクトル { \vec{n} } に平行、つまり { PH } が平面 { \alpha } に垂直となります。 すなわち、点 { H } は点 { P } から平面 { \alpha } に下ろした垂線の足になります。

解析入門 (2)     基礎数学 3

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