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倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

とある級数の双対性について -ちょっと細かい一般化-

数列 高校数学

前回の記事で、以下のような級数の双対性を導きました:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\left\{f(k) - f(k+m)\right\} = \sum_{k=1}^m \left\{f(k) - f(k+n)\right\}
\end{align*}
}

この双対性をちょっこっと一般化してみます。 説明のため、この級数{ F_m(n) } と置きましょう:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_m(n) = \sum_{k=1}^n\left\{f(k) - f(k+m)\right\}
\end{align*}
}

このとき、級数の双対性は

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_m(n) = F_n(m)
\end{align*}
}

と書けます。

その1

まずは { a,\,b } を整数(ただし { a < b } )として以下のような形の級数について、双対性を導いてみましょう:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{a,b}(n) = \sum_{k=1}^n \left\{f(k+a) - f(k+b)\right\}
\end{align*}
}

上記の { F_m(n) } とは添字の数で区別してね。 { F_m(n) } との関係は

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{0,m}(n) = F_m(n)
\end{align*}
}

となってます。 では双対性の導出。

導出
まず

  { \displaystyle
\begin{align*}
    g(x) = f(x + a)
\end{align*}
}

とおきましょう。 このとき

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{a,b}(n)
        &= \sum_{k=1}^n \left\{f(k+a) - f(k+b)\right\} \\
        &= \sum_{k=1}^n\left\{g(k) - g(k+b-a)\right\} \\
        &= G_{b-a}(n)
\end{align*}
}

{ G_{b-a}(n) } は関数 { g(x) } に対する級数です。 ここで双対性を使うと

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{a,b}(n)
        &= G_n(b-a) \\
        &= \sum_{k=1}^{b-a}\left\{g(k) - g(k+n)\right\} \\
        &= \sum_{k=1}^{b-a}\left\{f(k+a) - f(k+a+n)\right\}
\end{align*}
}

和のダミーインデックス { k }{ i = k + a } に変数変換すると、結局

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{a,b}(n) = \sum_{i=a+1}^b\left\{f(i) - f(i+n)\right\}
\end{align*}
}

となります。 よって、{ F_{a,b}(n) } にたいしては以下のような双対性が成り立つことが分かります:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n \left\{f(k+a) - f(k+b)\right\} = \sum_{k=a+1}^b \left\{f(k) - f(k+n)\right\}
\end{align*}
}

おおまかに言って、整数の区間として { (a,\,b] }{ (0,\,n] } が入れ替えられるというイメージですね。

上記の導出を見ると、{ a,\,b } が整数でなくても、{ b - a } が整数なら同じ双対性が成り立ちます。 ただし、右辺の和では { k } が整数でなくなります({ \sum } を使っていいかどうかは分かりませんが)。 それでも和をとる際には { k } を1ずつ増やしていきます。

具体例
上記の双対性を使って、以下級数を計算してみましょう:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\frac{1}{(k+a)(k+b)}
\end{align*}
}

まずは和の各項を部分分数に分解します:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \frac{1}{(k+a)(k+b)} = \frac{1}{b-a}\left(\frac{1}{k+a} - \frac{1}{k+b}\right)
\end{align*}
}

これと双対性を用いて和を計算すると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\frac{1}{(k+a)(k+b)}
        &= \frac{1}{b-a}\sum_{k=1}^n\left(\frac{1}{k+a} - \frac{1}{k+b}\right) \\
        &= \frac{1}{b-a}\sum_{i=a+1}^{b}\left(\frac{1}{k} - \frac{1}{k+n}\right) \\
        &= \frac{1}{b-a}\sum_{k=a+1}^n\frac{n}{k(k+n)} \\
        &= \frac{n}{b-a}\sum_{k=a+1}^b\frac{1}{k(k+n)}
\end{align*}
}

以上をまとめると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\frac{1}{(k+a)(k+b)} = \frac{n}{b-a} \sum_{k=a+1}^b \frac{1}{k(k+n)}
\end{align*}
}

となります。 さらに具体的にして、たとえば { a=1,\,b=3 } のとき

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n \frac{1}{(k+1)(k+3)}
        &= \frac{n}{2}\sum_{k=2}^3\frac{1}{k(k+n)} \\
        &= \frac{n}{2}\left(\frac{1}{2(n+2)}+\frac{1}{3(n+3)}\right) \\
        &= \frac{n(5n+13)}{12(n+2)(n+3)}
\end{align*}
}


その2

次はさらにもう少し一般化して

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{p,a,b}(n) &= \sum_{k=1}^n\left\{f(pk + a) - f(pk + b)\right\} & (a \equiv b \pmod{p})
\end{align*}
}

という形の級数を考えます。 似たような記号使って申し訳ないけど、やっぱり添字の数で区別してね。 { F_{a,b}(n) } との関係は

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{1,a,b}(n) = F_{a,b}(n)
\end{align*}
}

となってます。 また、「{ a \equiv b \pmod{p} }」は { a,\,b } をそれぞれ { p } で割った余りが等しい、もしくは { b - a }{ p } の整数倍である、という意味です。

導出
{ a \equiv b \pmod{p} } より、{ m } を整数として

  { \displaystyle
\begin{align*}
    b = pm + a
\end{align*}
}

と書けます。 このとき

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{p,a,b}(n)
        &= \sum_{k=1}^n\left\{f(pk+a) - f(pk+pm+a)\right\} \\
        &= \sum_{k=1}^n \left\{f(pk+a) - f(p(k+m)+a)\right\}
\end{align*}
}

ここで

  { \displaystyle
\begin{align*}
    h(x) = f(px+a)
\end{align*}
}

とおくと

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{p,a,b}(n)
        &= \sum_{k=1}^n\left\{h(k) - h(k+m)\right\} \\
        &= H_m(n)
\end{align*}
}

{ H_m(n) } に対して双対性を使うと

  { \displaystyle
\begin{align*}
    F_{p,a,b}(n)
        &= H_n(m) \\
        &= \sum_{k=1}^m\left\{h(k) - h(k+n)\right\} \\
        &=  \sum_{k=1}^m \left\{f(pk+a) - f(p(k+n)+a)\right\} \\
        &= \sum_{k=1}^{\frac{b-a}{p}}\left\{f(pk+a) - f(pk+a+pn)\right\}
\end{align*}
}

よって以下の双対性を得ます:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\left\{f(pk + a) - f(pk + b)\right\} = \sum_{k=1}^{\frac{b-a}{p}}\left\{f(pk+a) - f(pk+a+pn)\right\}
\end{align*}
}

具体例
では、具体例として以下の級数を考えましょう:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\frac{1}{(2k-1)(2k+1)}
\end{align*}
}

まずは級数の各項を部分分数分解。

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \frac{1}{(2k-1)(2k+1)} = \frac{1}{2}\left(\frac{1}{2k-1} - \frac{1}{2k+1}\right)
\end{align*}
}

これを用いて、問題の級数

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\frac{1}{(2k-1)(2k+1)} = \frac{1}{2}\sum_{k=1}^n\left(\frac{1}{2k-1} - \frac{1}{2k+1}\right)
\end{align*}
}

ここで級数

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\left(\frac{1}{2k-1} - \frac{1}{2k+1}\right)
\end{align*}
}

について、これは { F_{p,a,b}(n) }{ p=2,\,a=-1,\,b=1,\,f(x) = \frac{1}{x} } としたものなので、上記で導いた双対性を用いて

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\left(\frac{1}{2k-1} - \frac{1}{2k+1}\right)
        &= \sum_{k=1}^1 \left(\frac{1}{2k-1} - \frac{1}{2k-1+2n}\right) \\
        &= 1 - \frac{1}{2n+1} \\
        &= \frac{2n}{2n+1}
\end{align*}
}

よって

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sum_{k=1}^n\frac{1}{(2k-1)(2k+1)} = \frac{n}{2n+1}
\end{align*}
}

を得ます。

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