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倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

指数法則と指数関数では底に課される制限が違うよ

ちょっと高校の頃にはあやふやだったなぁという回顧のエントリ。 指数法則や指数関数を考えるときに、底にどのような制限がつくかを整理してみます。 この記事中では、特に断らない限り自然数に0を含めます。

1以上の自然数の指数

 { a,\,b } を実数、 { m,\,n } を1以上の自然数として、以下の指数法則が成り立ちます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^m a^n &= a^{m+n} \\
  (a^m)^n &= a^{mn} \\
  (ab)^n &= a^n b^n
\end{align*}}

掛けている  { a,\,b } の個数に着目すれば問題ないですね。

自然数の指数

 { a } を0でない実数として、 { a } の0乗  { a^0 }

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^0 = 1
\end{align*}}

で定義すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^ma^0 = a^m = a^{m+0}
\end{align*}}

などの計算より、上記の指数法則が任意の自然数  { m,\,n } について成り立つことが分かります。 0の0乗はどう頑張っても一貫した定義にできないそうなので、底が0の場合は除きます。 したがって、底が0以外なら、指数が自然数(0を含む)でも指数法則が成り立ちます。

整数の指数

 { a } を0でない実数、 { n } を1以上の自然数として、 { a^{-n} }

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^{-n} = \frac{1}{a^n}
\end{align*}}

で定義すると、整数の指数に対しても指数法則が成り立ちます。  { a } が0の場合、上記の定義の右辺で分母が0になるのでマズいです。 よって、やはり底は0以外の実数です。

累乗根と有理数の指数

 { a } を定数、 { n } を1以上の自然数として、 { x } についての  { n } 次方程式  { x^n = a } の解を  { a } { n } 乗根と言います。  { n } 乗根は、複素数の範囲では  { n } 個あります( { a=0 } の場合のみ重解)。 実数の範囲では、 { n } が奇数のときは1つ、 { n } が偶数のときは  { a } が正なら2つ、負なら存在しない、となります(例えば  { y = x^n } のグラフを考えれば分かります)。

これを踏まえて、 { a } を0以外の実数、 { n } を1以上の自然数として、 { \sqrt[n]{a} }

  •  { n } が奇数の場合
    •  { a } の唯一の実数の  { n } 乗根
  •  { n } が偶数の場合
    •  { a > 0 } なら、 { a } の実数の  { n } 乗根のうち正のもの
    •  { a < 0 } なら、定義されない

で定義します。 分類の仕方を変えれば、 { a > 0 } のときは任意の  { n } について定義される一方、 { a < 0 } のときは奇数の  { n } についてのみ定義されています。

有理数(分数)の指数はこの  { \sqrt[n]{a} } を使って定義します。  { a } を0以外の実数として、有理数の指数  { a^{\frac{1}{n}} }

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^{\frac{1}{n}} = \sqrt[n]{a}
\end{align*}}

で定めます。  { a } を0以外の実数としましたが、もちろん  { \sqrt[n]{a} } が定義されてなければいけません。 逆に定義されていれば指数法則を満たします。 よって

  •  { a > 0 } のとき、任意の有理数の指数について指数法則が成り立つ
  •  { a < 0 } のとき、分母が奇数の有理数について指数法則が成り立つ

となります。

指数関数と実数の指数

高校数学で扱う指数関数は定義域が実数です。 数学で有理数から実数を構築するには完備化 (completion) という手続きをしますが、有理数の指数から実数の指数を構築するにもたぶん同じようなことを行うんだと思います(あんまりこの辺りの話をきちんと勉強したことないけど)。 大雑把に言うと、指数関数を定義したとき「指数関数のグラフを書くと(ほとんど至るところで)グラフがえいやっと線で描ける」みたいな感じだと思います。 もう少しキチンとした話にすると、無理数の指数は、その無理数に収束する任意の有理数の数列に対して、それらの有理数を指数にした数の数列が近づく極限として値を定義します。

さて、 { a > 0 } のときは全ての有理数で指数が定義されていましたが、この完備化を行って実数の指数にしても指数法則が成り立ちます。 また、定義域が実数全体の指数関数も定義することが可能です。 ただし、 { a = 1 } のときは定数関数となるので指数関数には含めません。

一方、 { a < 0 } のときは、ある無理数を考えたとき、それにいくらでも近い分母が偶数の有理数が存在し、この値での指数が定義されないので、無理数の指数がうまく定義できません。

よって、指数関数は底  { a } { a > 0,\, a\ne 1 } で定義されます。

まとめ

さて、以上を踏まえて振り返ると、指数関数では底  { a } { a > 0,\, a \ne 0 } でなければなりませんが、指数法則は分母が偶数でない有理数ならば、負の底についても問題なく成り立ちます。 高校数学で底の範囲を明示的に問われるのは指数関数についてだけなので、何となく指数法則も同じ範囲だと思い込んでる場合がしばしばあるような気がします(でも  { \sqrt[3]{-27} } の計算などは普通にできるんですが)。
チャート式基礎からの数学2+B―新課程

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