倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

『君の名は。』の彗星は反重力物質である可能性

こういう系の記事を書くときは大体機を逸している気がしますが、DVD/Blu-ray の発売とか地上波放送とかあるだろうから書いときます。 ちなみに、拙者は『君の名は。』を観てないので劇中の設定とか全く分からず書いてます。

前置き的記事はこちら。
jin115.com

通常、彗星というのは太陽を1つの焦点とする細長い楕円軌道を描いて運動します。 したがって、軌道は下図のように太陽の裏側を通ります。

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彗星の軌道は2次曲線となるので、楕円以外にも放物線や双曲線の軌道を描く場合もありますが、これらの場合でも、太陽近くで見ればやはり太陽の裏側を回る軌道を描きます。

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ちなみに、以前の記事『2次元のケプラー問題の軌跡』で、古典力学運動方程式から真面目に軌道を導いてます。

で、劇中では彗星が太陽の手前で曲がって飛び去っていく軌道をとる、みたいな話になっているそうで。

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さて、制作側の単純なミスという可能性には目を瞑って、別の説を考えてみましょう。 前置き的記事にはダークマターがあるのではないか?という説が書いてありますが、彗星にこのような軌道をとらせるダークマターがあれば、おそらく太陽以上に大質量で近くに存在しなければならないだろうから、地球の運動にも影響を与えるのは必至。 ということでこれはないでしょう。

それで、別用で惑星の運動を真面目に解いてみてて気付いてしまったのだけど、万有引力と同じ逆二乗則の力が働く運動で符号だけを変えた斥力で彗星の運動を解いてみると、太陽の手前で曲がって飛び去っていく軌道になっちゃうんですね~。 実際に解いてみた記事は『2次元のケプラー問題(斥力の場合)』にあります。 まぁ、電磁気力ではこういう斥力は普通にあるので、結果自体はよく知られてるかと思いますが。 重力に関してこのような斥力を生じる物質をここでは反重力物質と呼ぶことにしましょう。

電磁気力で同じような斥力があるとは言っても、重力の場合特有のこともあります。 上記のような軌道をとるためには、慣性質量(ニュートン運動方程式  { F = ma } { m })は通常の物質と同じく正で、重力質量(ニュートン万有引力の法則の力  { -G\frac{Mm}{r^2} } { m })が負となっていないといけません。 これを突き詰めていくと、一般相対性理論等価原理との整合性がとれなさそうです*1。 あと、反物質みたいに、反重力物質が通常の物質と対消滅して膨大なエネルギー出しそうな気もするし、負の重力質量が負のエネルギーになってプラスマイナス・ゼロでエネルギー放出なしとかになりそうな気も。 とまぁ、いろいろ科学的妄想が絶えませんな。

*1:一般相対性理論にクインテッセンスとかいう斥力を生じさせる拡張があった気がするけど、宇宙定数とか宇宙膨張とかの話だよね。