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倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

2次元の Laplace - Runge - Lenz ベクトル

古典力学 1粒子系 2次元 重力 電磁気学

古典力学のいろいろな系で運動方程式を解いていくシリーズ(目次)。 今回は、ケプラー問題でエネルギーや角運動量以外に保存される Laplace - Runge - Lenz ベクトル(以下、ラプラス・ベクトル)の2次元版を見ていきます。

ケプラー問題のある保存ベクトル』でやったように、3次元ではラプラス・ベクトルは

  { \displaystyle\begin{align*}
  \textbf{A} = \textbf{p} \times \textbf{L} - km \frac{\textbf{r}}{r}
\end{align*}}

で定義されるのでした。 2次元ではベクトル積がそのままでは定義できませんが、同じ保存ベクトルが存在することは期待できます。 3次元でのラプラス・ベクトルの成分から、2次元でのラプラス・ベクトル  { \textbf{A} } を以下で定義しましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \textbf{A} = \ell \begin{pmatrix}p_y \\ -p_x \end{pmatrix} - \frac{km}{r} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} \qquad
    \left(\ell = xp_y - yp_x\right)
\end{align*}}

 { \ell }角運動量ですが、2次元ではベクトルではありません。 ちなみに、ラプラス・ベクトルを成分で書くと以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  A_i &= \ell \epsilon_{ij}p_j -km \frac{r_i}{r} \qquad \left(i = 1,\,2\right)
\end{align*}}

ここで

  { \displaystyle\begin{align*}
  r_1 &= x,\quad r_2 = y \\
  p_1 &= p_x,\quad p_2 = p_y \\[2mm]
  \epsilon_{ij} &= \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -1 & 0 \end{pmatrix}
\end{align*}}

 { \epsilon_{ij} } は2次元の完全反対称シンボルです。 では、以下で上記の2次元版ラプラス・ベクトルが保存することを証明しましょう。

準備
証明には正準方程式運動方程式)を使うので確認しておきましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \dot{x} &= \frac{p_x}{m} & \dot{y} &= \frac{p_y}{m} \\
  \dot{p}_x &= -k\frac{x}{r^3} & \dot{p}_y &= -k\frac{y}{r^3}
\end{align*}}

証明で使う際には、1行目を使って運動量を座標の時間微分(速度)で表し、2行目を使って運動量の微分を座標で表すようにします。 つまり、運動量とその時間微分を消去するように使います。

角運動量の保存
一般的に中心力ポテンシャルの問題では角運動量は保存されますが、手慣らしにこれを示しておきましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \dot{\ell}
    &= \frac{d}{dt}\left(xp_y - yp_x\right) \\
    &= \dot{x}p_y + x\dot{p}_y - \dot{y}p_x - y\dot{p}_x \\
    &= m\dot{x}\dot{y} - x \cdot k\frac{y}{r^3} - m\dot{y}\dot{x} + y \cdot k\frac{x}{r^3} \\
    &= 0
\end{align*}}

終了。

ラプラス・ベクトルの保存
では本題のラプラス・ベクトルの保存を証明しましょう。 やることは角運動量の保存の証明と同じです。 ベクトルとして証明するとゴチャゴチャしそうなので、まずは  { x } 成分を見ていきましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \dot{A}_x
    &=\frac{d}{dt}\left(\ell p_y - km\frac{x}{r}\right) \\
    &= \ell \dot{p}_y - km\left(\frac{\dot{x}}{r} - \frac{x\dot{r}}{r^2}\right) \qquad \left(\because \dot{\ell} = 0\right)\\
    &= \left(x \cdot m\dot{y} - y \cdot m\dot{x}\right) \cdot \left(-k \frac{y}{r^3}\right)
      - km\left(\frac{\dot{x}}{r} - \frac{x\left(x\dot{x} + y\dot{y}\right)}{r^3}\right) \qquad
      \left(\because \dot{r} = \frac{x\dot{x} + y\dot{y}}{r}\right) \\
    &= -\frac{km}{r^3}\left(x\dot{y}y - \dot{x}y^2 + \dot{x}r^2 - x^2 \dot{x} - xy\dot{y}\right) \\
    &= 0 \qquad \left(\because r^2 = x^2 + y^2 \right)
\end{align*}}

よって  { A_x } が保存することが分かりました。  { y } 成分についても同様にして保存することを示せます(2次元ラプラス・ベクトルの定義の第1項で  { p_x } の前に負符号が付いていますが、これは角運動量  { \ell } の定義の  { x,\,y } についての反対称性と打ち消し合います)。 よって

  { \displaystyle\begin{align*}
  \dot{\textbf{A}} = \textbf{0}
\end{align*}}

2次元ラプラス・ベクトルの性質(ベクトルの大きさ、方向など)も3次元の場合と同様に導けますが、ここではやりません。

解析力学ではある量が保存するかどうかは Poisson 括弧(ポアソン括弧)を使って計算する方が高尚な感じがしますが、そんなに計算が簡単というわけでもなく、準備を書くのも面倒だったのでやめました。 量子力学の交換子になれていればそんなに難しい計算ではありませんが、3次元の場合にやったような、保存するベクトルに見当をつける方法としては使えなさそうというのもあります。

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