読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

『Quantum Computing: A Gentle Introduction』の演習問題を解く A.2

Quantum Computing: A Gentle Introduction (Scientific and Engineering Computation) (English Edition)

Quantum Computing: A Gentle Introduction (Scientific and Engineering Computation) (English Edition)

目次はこちら

Exercise A.2. Show that a general distribution cannot be reconstructed from its marginals. Exhibit three distinct distributions with the same marginals.

一般的な分布に対して証明しなくても、周辺分布から再構築できない確率分布の例を示せば充分でしょう。

準備
集合  { A,\,B } { A = B = \{0,\,1\} } とします。  { A \times B } 上に定義された確率分布  { \mu(a,\,b) }  { \left(a \in A,\,b \in B\right) } を考えましょう。 全ての場合を書き下しても4つしかないので、以下のように表にします:

a \ b 0 1  { \mu_A }
0  { \mu(0,\,0) }  { \mu(0,\,1) }  { \mu_A(0) }
1  { \mu(1,\,0) }  { \mu(1,\,1) }  { \mu_A(1) }
 { \mu_B }  { \mu_B(0) }  { \mu_B(1) }  { 1 }

周辺分布  { \mu_A(a),\,\mu_B(b) }

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mu_A(a) &= \sum_{b \in B} \mu(a,\,b) & \mu_B(b) &= \sum_{a \in A} \mu(a,\,b)
\end{align*}}

で定義されます。 表では各行(もしくは各列)の2つの値を加えたものが同行(同列)の最右端(最下端)にある周辺分布になります。 例えば(ヘッダを除いた)一番上の行では

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mu(0,\,0) + \mu(0,\,1) = \mu_A(0)
\end{align*}}

となっています。

 { \mu(a,\,b) } { a,\,b } に関して独立で、特に 0, 1 が等確率で出る場合(例えば2枚のコインを投げて表裏が出る確率など)を考えましょう。 このときの確率分布は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mu(a,\,b) = \frac{1}{4}
\end{align*}}

となり、表は以下のようになります:

a \ b 0 1  { \mu_A }
0  { \frac{1}{4} }  { \frac{1}{4} }  { \frac{1}{2} }
1  { \frac{1}{4} }  { \frac{1}{4} }  { \frac{1}{2} }
 { \mu_B }  { \frac{1}{2} }  { \frac{1}{2} }  { 1 }

各行・各列の2つの値の和が対応する周辺分布の値になっていることはすぐに確かめられます。 また、あるセルに注目して、その行・列の周辺分布の積がそのセルの値になっている(まぁ、今の場合全て同じで  { \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{4} } なんですが)ことも分かります。 これは前問で示したように「独立な確率分布はその周辺分布のテンソル積である」ためです。

以下では、この確率分布表を参考にして、周辺分布  { \mu_a(a),\,\mu_b(b) } が全て  { \frac{1}{2} } で、個別の確率が今の場合と異なる確率分布を作ります。

例1
まず簡単に思いつくのは、対角成分が { \frac{1}{2} } で、残りが0の場合。 表にすると

a \ b 0 1  { \mu_A }
0  { \frac{1}{2} }  { 0 }  { \frac{1}{2} }
1  { 0 }  { \frac{1}{2} }  { \frac{1}{2} }
 { \mu_B }  { \frac{1}{2} }  { \frac{1}{2} }  { 1 }

です。 確かに各行・各列の和を計算すれば、周辺分布が全て  { \frac{1}{2} } となっていることが分かりますが、あるセルに注目してその行・列の周辺分布の積を計算しても、そのセルの値にはなりません。 これで周辺分布から再構築できない確率分布の例ができました。 終了~。

ちなみに、この確率分布を式で表すと以下のようになります( { \delta_{ab} }クロネッカーデルタ):

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mu(a,\,b) = \frac{1}{2}\delta_{ab}
    = \begin{cases}
        \frac{1}{2} & \left(a = b\right) \\
        0 & \left(a \ne b\right)
      \end{cases}
\end{align*}}

例2
周辺分布が同じだけど別の確率分布を3つ挙げろということなので、周辺分布が全て  { \frac{1}{2} } となる確率分布をもう一つ作っておきましょう:

a \ b 0 1  { \mu_A }
0  { \frac{1}{3} }  { \frac{1}{6} }  { \frac{1}{2} }
1  { \frac{1}{6} }  { \frac{1}{3} }  { \frac{1}{2} }
 { \mu_B }  { \frac{1}{2} }  { \frac{1}{2} }  { 1 }

これも独立ではないので、周辺分布からもとの確率分布を再構築することはできません。 この確率分布を式で表すと

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mu(a,\,b) = \frac{1}{6}\left(1 + \delta_{a,b}\right)
\end{align*}}

となります。