もう少し三角関数の公式シリーズ(目次)。 今回は三角関数の逆関数である逆三角関数の導関数を計算します。
逆三角関数は角度にあたる値域に制限を加える必要がありますが、その制限は各逆三角関数の箇所で指定しています。 たぶんここで指定している制限は通常使われているものだと思いますが、別のものを使う場合もあるようです。 逆正接・逆余接関数以外は値域の範囲を変えれば導関数の符号が変わる場合があるので注意が必要です。
この記事では逆三角関数の記法として を使いますが、 なども使われます*1。
逆正弦関数 ・逆余弦関数
逆正接関数の値域は以下のようにとります( は目安のために入れているだけです):
この値域内で導関数を計算すると
となります。 これは常に正なので単調増加関数であることが分かります(まぁ、指定した値域を定義域とした正弦関数が単調増加なので当たり前ですが)。 三角関数や逆三角関数が出てこなくて結構簡単な形になりますね。
この範囲内で導関数を計算すると
表式としては逆正弦関数の場合と符号が変わっただけです。 逆余接関数は単調減少関数ですね。
逆正接関数 ・逆余接関数
逆正接関数の値域を以下を以下のようにとります:
この範囲内で導関数を計算すると
逆正弦関数などの場合と違って平方根の分岐もないのでもっと簡単な感じがしますね。 逆正接関数は単調増加関数となります。
次は逆余接関数。 逆余接関数の値域を以下のようにとります:
のときに を引いて値域を にする流儀もあるようですが、 で不連続になって結構面倒なのでここでは採用しません。 というより、導関数の式は同じになりますね。 上記の範囲で導関数を計算すると
となり、表式としては逆正接関数の場合と符号が異なるだけです。 の範囲でそれぞれ単調減少関数です。
逆正割関数 ・逆余割関数
逆正割関数・逆余割関数は定義域が分離しているので値域のとりかたもちょっと複雑(というほどでもないですが)。逆正割関数の値域を以下のようにとります:
この範囲内で導関数を計算すると
となります。 ただし、複号は のとき上()、 のとき下()とします。 逆正割関数は のそれぞれの範囲で単調増加となります(上記の値域のとりかたの表より、 の範囲の値より の範囲の値の方が大きくなりますが)。
逆余割関数の値域を以下のようにとります:
この範囲内で導関数を計算すると
となります。 複号は のとき上、 のとき下とします。 逆余割関数は のそれぞれの範囲で単調減少となります(上記の値域のとりかたの表より、 の範囲の値より の範囲の値の方が大きくなります)。
まとめ
逆正接関数・逆余接関数以外は、値域の取り方が異なると導関数の符号が異なる場合があるので注意。
【修正】
- の値域の取り方を に変更しました。
- の値域を に戻しました(導関数の式は同じ)。