いろいろな次元で極座標のヤコビ行列とヤコビアンを求めるシリーズ(目次)。 今回は 次元。 証明はともかく、結果(体積要素)は後で使うので把握しておいてネ。
次元極座標
次元の極座標は次のように定義されます:
ただし 。
次元極座標の体積要素
次元極座標のヤコビアンと体積要素は以下のようになります:
次元極座標のヤコビ行列は、書き下すのがあまりにも面倒なのでスルーします。
証明
体積要素の表式はヤコビアンのものを書き換えただけなので、ヤコビアンの表式の証明のみをします。 証明は数学的帰納法でやりましょう。の場合を証明する
のとき、ヤコビアンの表式の右辺は
となり、「極座標のヤコビ行列とヤコビアン : 2次元」で示した2次元極座標の表式と一致します。
次元の場合成り立つと仮定して 次元の場合を証明する
以下、 とします。 次元の直交座標から極座標への変数変換を考えるのですが、この変換に関してまず直交座標から 座標を変換しない円柱座標に変換した上で、そこから極座標に変換するとしましょう。直交座標 → 円柱座標
まずは直交座標から円柱座標への変換。 座標を変換しない円柱座標では は 次元極座標へ変換されます。 次元極座標の動径座標を とすると
ここで
となります。 この変換のヤコビアンは 次元極座標のヤコビアンに等しく、それは仮定より
となります。
円柱座標 → 極座標
次は円柱座標から極座標への変換。 これは、角度座標 に関しては変換せず、 に関しては2次元の極座標へ変換します:
ここで
です。 角度座標 は変換に関与しないので省略。 この変換のヤコビアンは、2次元極座標の場合と同じく
となります。
直交座標 → 極座標
以上の結果を踏まえて直交座標から極座標への変換。 合成変換のヤコビ行列はそれぞれの変換のヤコビ行列の積に等しく、行列の積の行列式は各行列の行列式の積に等しいので*1、合成変換のヤコビアンは各変換のヤコビアンの積に等しくなります。 したがって
よって 次元の場合も成立する。
*1:要は、行列 に対して、 が成り立つってこと。