ラプラシアンの極座標表示を求めるシリーズ(目次)。 今回は n 次元でのラプラシアンの極座標表示を求めます。 次元のラプラシアンを
とし、また 次元の極座標を以下のように定めます:
ただし定義域の については とします。 のとき、ラプラシアン の極座標表示は以下で与えられます:
ただし
4次元までの結果を使って一般次元での表式を推定してみましたが、頑張ってまとめてみるとリーマン計量使える人にとっては「当たり前やん」ってな結果になって、嬉しいやら哀しいやら。 まぁ、ともかく証明を試みます。 ラプラシアンの2行目の表式は1行目のものを単純に(?)変形しただけなので、証明は1行目のものに対して行います。
証明
次元極座標のヤコビアンの証明 ▷ と同様、数学的帰納法で証明します。の場合
より
となり、これは以前の記事の結果より確かに2次元のラプラシアンの表式になっています。
次元の場合に成り立つと仮定して 次元の場合も成り立つことを示す
次元極座標のヤコビアンの表式を証明したとき ▷ と同じように、まず直交座標から 座標を変換しない円柱座標に変換し、そこから極座標に変換しましょう。 とします。直交座標 → 円柱座標
円柱座標の動径を として
と変換します。 ここで
このときラプラシアンは、成立を仮定した 次元のラプラシアンの極座標表示を使って
となります。 これをラプラシアンの円柱座標表示と呼ぶことにしましょう(この記事中では)。 円柱座標の角度変数の取り方より、和の添字 がずれていることに注意。 また
です。
円柱座標 → 極座標
次は円柱座標から極座標への変換です。 以下のような変換を行います:
ここで、 は
で定義されています。 施している変換は、実質的には ( を2次元の極座標に変換しているのと同等です。 さて、上記のラプラシアンの円柱座標表示がこの変換によってどのように変わるかを、いくつかの項に分けて見ていきましょう。 まずは と の2階微分の項。 これは2次元のラプラシアンの極座標表示 と同じになります:
次は の1階微分の項。 これは連鎖律を用いて計算できます:
より
となります。 最後は角度変数による微分の項。 この項で変換によって変わるのは の因子だけですが、これは が簡単に示せるので特に問題ないかと思います。 以上の結果をまとめると
となり、 次元でもこれが成り立つことが示せました。 【Q.E.D.】