倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

極座標のヤコビアン〜計量テンソル編〜 : n次元

前回までで、計量テンソルを用いてラプラシアン (Laplacian) の極座標表示を計算しましたが、極座標ヤコビアン (Jacobian) も計量テンソルを用いて計算することができます。

計算できると言っても、実際には既に計算していて、実は { \sqrt{g} }ヤコビアンになります。 以前の記事で書いたように、計量テンソルが以下のように対角なら

  { \displaystyle
\begin{align*}
    g_{ij} = \rho_i^2 \delta_{ij}
\end{align*}
}

ヤコビアンはもっと簡単にできます:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sqrt{g} = \prod_i \rho_i
\end{align*}
}

これを踏まえて、各次元でのヤコビアンの表式を見ていきましょう。

2次元

ラプラシアンの極座標表示?計量テンソル編? : 2次元」の結果より

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \rho_r &= 1,&
    \rho_\theta &= r
\end{align*}
}

なので

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sqrt{g} = r
\end{align*}
}

となり、「極座標のヤコビ行列とヤコビアン : 2次元」の結果とと一致します。

3次元

ラプラシアンの極座標表示?計量テンソル編? : 3次元」の結果より

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \rho_r &= 1, &
    \rho_\theta &= r, &
    \rho_\varphi &= r\sin\theta
\end{align*}
}

なので

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sqrt{g} = r^2\sin\theta
\end{align*}
}

となり、「極座標のヤコビ行列とヤコビアン : 3次元」の結果とと一致します。

4次元

ラプラシアンの極座標表示?計量テンソル編? : 4次元」の結果より

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \rho_r &= 1, &
    \rho_1 &= r, &
    \rho_2 &= r\sin\theta_1, &
    \rho_2 &= r\sin\theta_1\sin\theta_2
\end{align*}
}

なので

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sqrt{g} = r^3\sin^2\theta_1\sin\theta_2
\end{align*}
}

となり、「極座標のヤコビ行列とヤコビアン : 4次元」の結果とと一致します。

{ n } 次元

ラプラシアンの極座標表示?計量テンソル編? : n次元」の結果より

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \rho_r &= 1, &
    \rho_1 &= r, &
    \rho_i &= r\prod_{\ell=1}^{i-1}\sin\theta_\ell & \left(2 \le i \le n-1 \right)
\end{align*}
}

なので

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \sqrt{g} = r^{n-1}\prod_{i=1}^{n-1}\left(\sin\theta_i\right)^{n-i-1}
\end{align*}
}

となり、「極座標のヤコビ行列とヤコビアン : n次元」の結果とと一致します。 n次元、恐るるに足らず!