倭算数理研究所

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ガンマ関数とベータ関数のよくある関係

特殊関数の公式を証明していくシリーズ(目次)。 今回は、ガンマ関数とベータ関数を関係づける以下の式を証明します:

  { \displaystyle\begin{align*}
  B(x,\,y) = B(y,\,x) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x+y)}
\end{align*}}

ただし、{ B(x,\,y) = B(y,\,x) }積分変数を { s = 1 - t } に変換すればすぐに示せるので、証明は省略。

【この記事の内容】

ガンマ関数とベータ関数の定義

まずはガンマ関数とベータ関数の定義は以下で与えられます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Gamma(x) &= \int_0^\infty e^{-t}\,t^{x-1} dt \\[2mm]
  B(x,\,y) &= \int_0^1 t^{x-1}(1-t)^{y-1} dt
\end{align*}}

証明

証明には上記のガンマ関数、ベータ関数の定義ではなく別の表現を使うので、まずはそれらを求めます。 それらが求めた後、それらを使って上記の関係式を示します:

  1. ガンマ関数の別表現
  2. ベータ関数の別表現
  3. ガンマ関数とベータ関数の関係式

ガンマ関数の別表現
ガンマ関数の定義に現れる積分変数 { t } を以下のように { r } に変換しましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  t = r^2 \qquad(r > 0)
\end{align*}}

このとき

なので

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Gamma(x)
    &= \int_0^\infty e^{-r^2} \left(r^2\right)^{x-1} 2rdr \\
    &= 2\int_0^\infty e^{-r^2}\,r^{2x-1}dr
\end{align*}}

となります。

ベータ関数の別表現
ベータ関数の定義に現れる積分変数 { t } を以下のように { \theta } に変換しましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  t = \sin^2\theta
\end{align*}}

このとき

なので

  { \displaystyle\begin{align*}
  B(x,\,y)
    &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^{2x-2}\theta\; \cos^{2y-2}\theta\; 2\sin\theta\cos\theta d\theta \\
    &= 2\int_0^\frac{\pi}{2} \sin^{2x-1}\theta\;\cos^{2y-1}\theta\;d\theta
\end{align*}}

となります。

ガンマ関数とベータ関数の関係式
{ \Gamma(x)\Gamma(y) } を変形していって { \Gamma(x+y) B(x,\,y) } になることを示します。

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Gamma(x)\Gamma(y)
    &= 2\int_0^\infty e^{-u^2}\,u^{2x-1}du \cdot 2 \int_0^\infty e^{-v^2}\,v^{2y-1}dv \\
    &= 4 \int_0^\infty\int_0^\infty e^{-(u^2+v^2)}\,u^{2x-1}v^{2y-1}dudv
\end{align*}}

ここで { u,\,v } 積分を以下の変数 { r,\,\theta }積分に変換しましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    u = r\cos\theta \\
    v = r\sin\theta
  \end{cases}
\end{align*}}

このとき

なので

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Gamma(x)\Gamma(y)
    &= 4\int_0^\frac{\pi}{2}\int_0^\infty e^{-r^2} 
      \left(r\cos\theta\right)^{2x-1}\left(r\sin\theta\right)^{2y-1}rdrd\theta \\
    &= 4\int_0^\infty e^{-r^2}\,r^{2(x+y)-1}dr \int_0^\frac{\pi}{2}
      \cos^{2x-1}\theta\sin^{2y-1}\theta d\theta \\[2mm]
    &= \Gamma(x+y) B(y,\,x) \\
    &= \Gamma(x+y)B(x,\,y)
\end{align*}}

よって

  { \displaystyle\begin{align*}
  B(x,\,y) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x+y)}
\end{align*}}

が示せました。

【補足】

とあるガンマ関数の公式目録』で示した公式

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Gamma(x+1) = x\Gamma(x)
\end{align*}}

より、 { n }自然数のとき  { \Gamma(n+1) = n! } となるので、ガンマ関数は階乗を拡張した関数となるのでした。 これと二項係数  { {}_nC_r = \binom{n}{r} = \frac{n!}{(n-r)!r!} } を踏まえると、上記で示した公式はベータ関数の逆数が二項定理を拡張したようなものに対応していることが分かります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{1}{B(x,\,y)} = \frac{\Gamma(x+y)}{\Gamma(x)\Gamma(y)}
\end{align*}}

 { x,\,y } が正の自然数  { n,\,m } のときにきちんと計算してみると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{1}{B(n,\,m)}
    &= \frac{\Gamma(n+m)}{\Gamma(n)\Gamma(m)}
    = \frac{(n+m-1)!}{(n-1)!(m-1)!} \\[2mm]
    &= n \binom{n+m-1}{n} \\[2mm]
    &= m \binom{n+m-1}{m}
\end{align*}}

のように、余計な因子が出てきますが、確かに二項係数と簡単な関係があることが分かります。

まとめ

ガンマ関数

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Gamma(x)
    &= \int_0^\infty e^{-t}\,t^{x-1} dt \\
    &= 2\int_0^\infty e^{-r^2}\,r^{2x-1}dr
\end{align*}}

ベータ関数

  { \displaystyle\begin{align*}
  B(x,\,y)
    &= \int_0^1 t^{x-1}(1-t)^{y-1} dt \\
    &= 2\int_0^\frac{\pi}{2} \sin^{2x-1}\theta\;\cos^{2y-1}\theta\;d\theta
\end{align*}}

ガンマ関数とベータ関数の関係式

  { \displaystyle\begin{align*}
  B(x,\,y) = B(y,\,x) = \frac{\Gamma(x)\Gamma(y)}{\Gamma(x+y)}
\end{align*}}

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{1}{B(n,\,m)}
    &= n \binom{n+m-1}{n} 
    = m \binom{n+m-1}{m}
\end{align*}}

【追記】

  • 補足を追記しました。

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