古典力学のいろいろな系で運動方程式を解いていくシリーズ(目次)。 今回は1粒子系でのニュートン(Newton)の運動方程式とその性質を見ていきましょう。
で表されます。 ただし
- : 時間
- : 質点の質量
- : 質点の位置*1
- : 質点に加わる力
です。 位置 の時間 に関する2回微分はその粒子に働いている加速度 (acceleration) なので、この運動方程式は「粒子の加速度は、その粒子に加わる力に比例する」という法則になります。 その比例定数を(慣性)質量 (inertial mass)と呼びます。
ある量の時間微分を文字の上のドット(点)で表すと、運動方程式は
とも書けます。 一般に は とその時間微分、そして時間 の関数となります:
微分方程式の1階化
2階の微分方程式である運動方程式は、位置 の時間微分である速度 を導入して1階の微分方程式系にすると便利な場合があります。
保存量・保存則
ニュートンの運動方程式に従って運動する質点には、いくつかの保存量があります:- エネルギー (energy) :
- 運動量 (momentum)
- 角運動量 (angular momentum) :
これらの量が保存するためには条件があるので注意(下記参照)。 運動量、角運動量は1粒子の質点ではあまり面白くありませんが、一応書いておきます。
エネルギーの保存
速度の関数として運動エネルギー (kinetic energy) を
で定義すると、その時間微分は
となります。 両辺を から まで積分すると(それぞれの時刻での位置を 、速度を として)
ただし は位置の変位ベクトルで、3次元の場合
です。 (*) 式の最右辺を「位置 から の間に加えられた仕事」と定義すると、(*) 式は「運動エネルギーの変化は、その間に加えられた仕事に等しい」となります。
特に力 が、あるスカラー関数 を用いて
と書かれる場合(こういう力を保存力と呼ぶ)、(*) 式の最右辺は
となり、(*) 式自体から
を得ます。 を位置 における位置エネルギー (potential energy)、運動エネルギーと位置エネルギーの和を力学的エネルギー (mechanical energy) と定義すると、(**) 式は「力学的エネルギーは保存する」と言えます。
運動量の保存
運動量 を
で定義すると、その時間微分は
となります。 両辺を から まで積分すると(それぞれの時刻での運動量を として)
を得ます。 この式の右辺を から までに加えられた力積と定義すると、「運動量の変化は、その間に加えられた力積に等しい」となります。 特に、力が加えられなければ運動量は保存します。
角運動量の保存
3次元の場合、角運動量 を
で定義すると、その時間微分は
となります。 運動量と同じように両辺を時間で積分すると(それぞれの時刻での角運動量を として)
トルク を
で定義すると
を得ます。 質点に加えられたトルクが0ならば、角運動量は保存します。
参考文献
*1:以降、ベクトル量は太字で表します。