前回、極値条件を解いて点と平面の距離の公式を導きましたが、拘束条件がある場合の極値問題はラグランジュの未定乗数法 (method of Lagrange multiplier) を用いるのが定石なので、今回はその方法で点と平面の距離の公式を導いてみます(目次)。
問題設定
まず、記法を簡単にするため、以下の2つの関数を導入しましょう:
これを踏まえて、 は点 と点 との距離の自乗となり、また は平面 (以下、平面 )を表します。 このとき、点 と平面 の距離は「拘束条件 のもとでの の最小値(の正の平方根)」という条件から求まります。
ラグランジュの未定乗数法
拘束条件 のもとでの の最小値を求めるために、まずこの場合の極値を求めましょう。 拘束条件がある場合の極値問題は、ラグランジュの未定乗数 を導入して以下の関数 を定義しこの関数に対して、拘束条件がない場合と同様に極値を求めればいいのでした。
極値条件
極値条件は
です。 の表式を使ってこれらの条件を具体的に計算すると
を得ます。 これらを の4つの変数の連立方程式として解きましょう。 (1), (2), (3) より
これらを (4) 式に代入すると
この の式を (5) 式に代入すれば、残りの変数の の値も求まりますが、式がちょっと込み入ってるので省略。 また
より、この極値は極小値(よって最小値)であることも分かります。
点と平面の距離
前節で求めた を (これは拘束条件 が成り立っている場合は に等しい)に代入すると、求めたい点 と平面 との距離の自乗が求まります。 の表式として (5) 式の形を用いて
となります。 よって求める距離は
また、 の表式を (5) 式に与えると、点 との距離が最小値を与える平面上 の点の座標が求まります。 実際に計算してみると
を得ます。 この点を とすると
となり、 が平面 の法線ベクトル に平行、つまり が平面 に垂直となります。 すなわち、点 は点 から平面 に下ろした垂線の足になります。
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