倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

x^n - 1 の因数分解

高校数学にも出てきてそうな

  { \displaystyle
\begin{align*}
    P_n(x) = x^n - 1
\end{align*}
}

因数分解について少々。 係数は整数の範囲で。 ガロア理論知ってる人には常識っぽい話かもしれませんが。

因数 { x - 1 }
とりあえず任意の { n } について { P_n(1) = 0 } なので、因数定理より { P(x) }{ (x - 1) } を因数に持ちますね。 この因数でくくると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    P(x) = (x - 1)(x^{n-1} + x^{n-2} + \cdots + x + 1)
\end{align*}
}

となります。 後のため、左辺の第2因数を { Q_n(x) } とおきましょう:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    Q_n(x) = x^{n-1} + x^{n-2} + \cdots + x + 1
\end{align*}
}

{ Q_n(x) }{ x }{ n-1 }で、項数は ( n }] 個{ x } の0次から { n-1 } 次まで)です。

{ n } が偶数の場合の { Q_n(x) }因数分解
さて、{ Q_n(x) } がどのように因数分解されるかですが、これはもちろん { n } の値によって変わってきます。 例えば高校で出てくる例としては { n } が偶数のとき { P_n(-1) = 0 } より { P(x) }{ (x + 1) } を持つので、{ Q_n(x) }{ (x + 1) } を因数として持ちます:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    Q_n(x) = (x + 1)(x^{n-2} + x^{n-4} + x^{n-6} + \cdots + x^2 + 1)
\end{align*}
}

さて、この因数分解を実行する方法は、{ x } の整式の割り算を筆算でやったり、組み立て除法でやったりすることができますが、以下のような手順で行うこともできます:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    Q_n(x)
        &= x^{n-1} + x^{n-2} + x^{n-3} + x^{n-4} + \cdots + x^3 + x^2 + x + 1 \\
        &= (x + 1)x^{n-2} + (x + 1) x^{n-4} + \cdots + (x+1) x^2 + (x + 1) \\
        &= (x + 1)(x^{n-2} + x^{n-4} + \cdots + x^2 + 1)
\end{align*}
}

{ n } が偶数の場合には項数は偶数個なので、2つずつペアにして因数分解し、各組から { (x + 1) } という因数が出てくるのでそれでくくっています。

一般の { n } についての { Q_n }因数分解
{ n } が偶数の場合の因数分解の手順を一般化すると、{ p }{ n } の素因数として { Q_n(x) }

  { \displaystyle
\begin{align*}
    x^{p-1} + x^{p-2} + \cdots + 1
\end{align*}
}

を因数に持つことが分かります。 ここで { q_p(x) }

  { \displaystyle
\begin{align*}
    q_p(x) = x^{p-1} + x^{p-2} + \cdots + 1
\end{align*}
}

で定義しましょう。 { q_p(x) } はまぁ { Q_p(x) } と同じなんですが、{ p }素数ってのを強調したいがために小文字にしてます。 このとき、「{ Q_n(x) } は、{ p }{ n } の素因数として { q_p(x) } を因数に持つ」 が成り立ちます。 { n } が偶数のとき、{ n } は 2 を素因数として持つので、{ p = 2 } として { Q_n(x) }{ q_2(x) = x + 1 } を因数に持つ、となります。

別の例を具体的にやってみましょう。 { n = 6 } の場合(これは以前の記事「6次の因数分解を考える」でやった因数分解{ y = 1 } とおいたものです)。 6の素因数は 2, 3 ですね。 { p =2 } とすると偶数の場合と同じになるので { p = 3 } としましょう。 このとき

  { \displaystyle
\begin{align*}
    Q_6(x)
        &= x^5 + x^4 + x^3 + x^2 + x + 1 \\
        &= (x^2 + x + 1)x^3 + (x^2 + x + 1) \\
        &= (x^2 + x + 1)(x^3 + 1)
\end{align*}
}

第2因数はさらに因数分解できて({ p = 2 } とすれば { x + 1 } を因数に持つハズでもあるので)

  { \displaystyle
\begin{align*}
    Q_6(x) = (x^2 + x + 1)(x + 1)(x^2 - x + 1)
\end{align*}
}

よって

  { \displaystyle
\begin{align*}
    x^6 - 1 = (x - 1)(x + 1)(x^2 + x + 1)(x^2 - x + 1)
\end{align*}
}

n が小さい整数の場合

  { \displaystyle
\begin{align*}
    x^3 - 1 &= (x-1)q_3(x) \\
    x^4 - 1 &= (x-1)q_2(x)(x^2+1) \\
    x^5 - 1 &= (x-1)q_5(x) \\
    x^6 - 1 &= (x-1)q_2(x)q_3(x)(x^2 - x +1) \\
    x^7 - 1 &= (x-1)q_7(x) \\
    x^8 - 1 &= (x-1)q_2(x)(x^2+1)(x^4+1) \\
    x^9 - 1 &= (x-1)q_3(x)(x^6 + x^3 + 1) \\
    x^{10} - 1 &= (x-1)q_2(x)q_5(x)(x^4-x^3+x^2-x+1) \\
    x^{11} - 1 &= (x-1)q_{11}(x) \\
    x^{12} - 1 &= (x-1)q_2(x)q_3(x)(x^2+1)(x^2-x+1)(x^4-x^2+1)
\end{align*}
}

因数分解しきれてなかったらごめんなさい。

何がやりたかったかというと・・・

まぁ、何がやりたかったかというと・・・

  • { P_n(x) }複素数の範囲で因数分解するのはガロア理論(最初の最初)でやるようなことで、1の { n } 乗根のうち1でないものを用いて { x } の1次式 { n } 個の積に因数分解できますよね。
  • 実数の範囲での因数分解では、1の { n } 乗根の中に互いに共役な複素数があることを使えば、{ (x-1) } と(あれば) { (x+1) } を除いて2次式の因数として書き表せます。

を踏まえて、整数の範囲で因数分解した場合にはどんな因数が出てくるのかなぁというのをやりたかったわけです。 ただ、結構中途半端なところまでしか到達してなくて

  • { q_p(x) } 自体は整数の範囲で因数分解できないのか?
  • { (x-1),\,(x+1),\,q_p(x) } 以外の因数をどう因数分解するか(できないなら、それをどう判断するか)?

くらいのことは知りたいところ。

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