この記事では以下のような冪乗和
を生成母関数 (generating function) の方法を用いて求めてみます。 Wikipedia
よると、結果で得られる公式は『ファウルハーバーの公式 (Faulhaber's formula)』というそうです(「wikipedia:ファウルハーバーの公式」)。
参考文献
高校では・・・
高校では以下の4つが出てきますね:
以下で導いた の表式が正しいかどうかは、これらの表式と一致するかどうかでテストするとしましょう。
導出
の導出の仕方は、概ね『離散数学「数え上げ理論」』に載ってる方法を、和の記号 を用いて分かりにくくしたような感じですw ちょっと生成母関数の定義が異なりますが。生成母関数
まずは生成母関数の定義から。 の生成母関数 を以下で定義します:
『離散数学「数え上げ理論」』では計算を容易にするために少々定義が変えられてますが、素直な生成母関数の定義から出発してもそれほど計算が大変というわけではないので、この記事では通常の生成母関数の定義を採用します。
さて、 の定義に の式を代入して、和を実行し、生成母関数の具体的な関数形を求めましょう。 以下の計算では無限級数の収束はスルーして、自由に和の順序を変更してます、アシカラズ:
最後の式は、 が初項 公比 項数 の等比級数であることを示しているので、等比級数の和の公式より、生成母関数の表式が以下の形に求まります:
冪級数展開
さて、せっかく和を実行して生成母関数が求まりましたが、 の表式を得るために、次はこれを(定義とは異なる方法で) の冪に展開しましょう。 まずは を以下の形に書き換えます:
次にこの式の右辺の第1因子、第2因子をそれぞれ の冪に展開しましょう。 第1因子はベルヌーイ数 (Bernoulli number) を使えば簡単に冪展開できます。 ベルヌーイ数は以下の冪展開でされるのでした(定義はこちらを参照):
この定義で を に置き換えると (1) 式右辺の第1因子は簡単に冪展開できて
を得ます。 また、指数関数の冪展開から、(1) 式の第2因子も簡単に冪展開できて
となります。 よって (2), (3) 式より (1) 式は
と変形できます。 ここで、「指数関数の冪級数から指数法則を導く」で行ったように和のとり方を変更すると として
ちなみに
は二項係数(組合せ数)です。 これと の定義の冪級数を見比べると以下を得ます:
について
上記の の表式から、以下のことがわかります:- は について 次( の項)
- は についての定数項は持たない(和は までで、この項は の1次)
- の最高次( 次)の項の係数は ( [tex:{ B_0 = \,_{k+1}C_0 = 1)
- のとき、 の 次の項(2番目に次数の高い項)の係数は ( また なので)
小さい について確かめてみる
では、小さい の値について、具体的に の表式を計算してみましょう。 ベルヌーイ数の値も必要になるので、いくつか挙げておきましょう:
のとき
のとき
のとき
のとき
のとき
せっかくなので、高校ではやらない次数のところもやっときましょうか。
最後の行の変形で因数分解を行うのがちょっと面倒ですが、以前の記事「ベルヌーイ数」で導いた漸化式を使えば、 のとき以外に の因数を持つことは言えそう。 もしかしたら が(0以外の)偶数の場合に を因数に持つとか言えるかも(言えないかも)。
のとき
もう、後は結果だけ。
の最後の因子はまだ因数分解できるかも。 実数の範囲では1次式2つでくくれる模様。
【修正】
- 冪乗和の公式で二項係数とベルヌーイ数の順番を変えました。
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