倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

三角関数の公式を復習する (1) : 三角関数の定義と相互関係

今回から何回かに渡って、高校数学で出てくる三角関数の公式をオイラーの公式を使って定義・導出していきます。

【シリーズ記事の目次】

  1. 三角関数の定義と相互関係
  2. 負の引数、純虚数の引数
  3. 三角関数の加法定理
  4. 倍角の公式
  5. 半角の公式
  6. 三倍角の公式
  7. 三角関数の合成
  8. 三角関数の積和の公式
  9. 三角関数の和積の公式
  10. 三角関数の微分
  11. 三角関数の積分
  12. 高校数学での三角関数の積分の確認

いくつかの記事は『もう少し三角関数の公式』に移動しました m(_ _)m

【この記事の内容】

定義

ある直角三角形に対して

  • 斜辺の長さを  { c }
  • 直角でない角度の1つを  { \theta }
  • 直角と角度  { \theta } を両端とする方の隣辺*1の長さを  { b }
  • 残りの辺の長さを  { a }

としたとき(下図参照)、正弦  { \sin\theta }余弦  { \cos\theta }正接  { \tan\theta }

  { \displaystyle\begin{align*}
  \sin\theta &= \frac{a}{c} & \textrm{(正弦)} \\
  \cos\theta &= \frac{b}{c} & \textrm{(余弦)} \\
  \tan\theta &= \frac{a}{b} \quad\left(= \frac{\sin\theta}{\cos\theta}\right) & \textrm{(正接)}
\end{align*}}

と定義します。

f:id:waman:20170702093657p:plain

【発展】その他の三角比(三角関数
辺の長さが3種あるので、比の取り方は  { {}_3P_2 = 6 } 通りあります。 高校ではこのうち、上記で定義した3種のみが出てきますが、これらの他に

  { \displaystyle\begin{align*}
  \cot\theta &= \frac{b}{a} \quad\left(=\frac{1}{\tan\theta}\right) & \textrm{(余接)} \\
  \sec\theta &= \frac{c}{b} \quad\left(=\frac{1}{\cos\theta}\right) & \textrm{(正割)} \\
  \csc \theta &= \textrm{cosec}\;\theta = \frac{c}{a} \quad\left(=\frac{1}{\sin\theta}\right) & \textrm{(余割)}
\end{align*}}

という三角比があります。

通常、三角関数の表記では  { \tan^{-1}\theta } などは  { \tan\theta }逆関数 { \textrm{arctan}\;\theta } などとも書かれる)として定義されるので、関数値の単なる逆数を表す場合には  { \frac{1}{\tan\theta} } の代わりに  { \cot\theta } と書いたりします。 ただし、多くの場合、高校で出てくる3種の三角比(三角関数)で充分です。

指数関数との関係

高校では学習しませんが、三角関数と指数関数はオイラーの公式

  { \displaystyle\begin{align*}
    e^{i\theta} = \cos\theta + i \sin\theta
\end{align*}}

によって関係しています。 ただし { i }虚数単位。 この関係を使えば、各三角関数と指数関数との間の関係を導けます:

  { \displaystyle\begin{align*}
    \sin x &= \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{2i} \\
    \cos x &= \frac{e^{ix} + e^{-ix}}{2} \\
    \tan x &= \frac{\sin x}{\cos x} = \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{e^{ix} + e^{-ix}} = \frac{e^{2ix} -1}{e^{2ix} + 1}
\end{align*}}

【発展】その他の三角関数
高校では出てこない他の3つの三角関数についても指数関数との関係を見ておきましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
    \cot x &= \frac{1}{\tan x} = \frac{e^{ix} + e^{-ix}}{e^{ix} - e^{-ix}} = \frac{e^{2ix} + 1}{e^{2ix} -1} \\
    \sec x &= \frac{2}{e^{ix} + e^{-ix}} \\
    \csc x &= \frac{2i}{e^{ix} - e^{-ix}}
\end{align*}}

相互の関係

ここでは高校数学で出てくる3つの三角関数  { \sin x,\,\cos x,\,\tan x } についての相互の関係を導きます。 他の3つの三角関数が関わる関係式も同様にして導けますが、特に有用なものはないかと思います。

三平方の定理  { a^2 + b^2 = c^2 } の両辺を  { c^2 } で割って

  { \displaystyle\begin{align*}
  & \left(\frac{a}{c}\right)^2 + \left(\frac{b}{c}\right)^2 = 1 \\
  \therefore\, &\sin^2 x + \cos^2 x &= 1 & \cdots(1)
\end{align*}}

また、(1) 式の両辺を { \cos^2 x } で割ると

  { \displaystyle\begin{align*}
    \frac{\sin^2 x}{\cos^2 x} + \frac{\cos^2 x}{\cos^2 x} = \frac{1}{\cos^2 x} \\
    \therefore \tan^2 x + 1 = \frac{1}{\cos^2 x}
\end{align*}}

同様に (1) 式の両辺を { \sin^2 x } で割ると

  { \displaystyle\begin{align*}
    1 + \frac{1}{\tan^2 x} = \frac{1}{\sin^2 x}
\end{align*}}

公式まとめ

定義

  { \displaystyle\begin{align*}
  \sin x &= \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{2i} & \textrm{(正弦)} \\
  \cos x &= \frac{e^{ix} + e^{-ix}}{2} & \textrm{(余弦)} \\
  \tan x &= \frac{\sin x}{\cos x} & \textrm{(正接)} \\[4mm]
  \cot x &= \frac{1}{\tan x} & \textrm{(余接)}\\
  \sec x &= \frac{1}{\cos x} & \textrm{(正割)}\\
  \csc x &= \frac{1}{\sin x} & \textrm{(余割)}\\
\end{align*}}

指数関数との関係

  { \displaystyle\begin{align*}
    \sin x &= \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{2i} \\
    \cos x &= \frac{e^{ix} + e^{-ix}}{2} \\
    \tan x &= \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{e^{ix} + e^{-ix}} = \frac{e^{2ix} -1}{e^{2ix} + 1} \\[4mm]
    \cot x &= \frac{e^{ix} + e^{-ix}}{e^{ix} - e^{-ix}} = \frac{e^{2ix} + 1}{e^{2ix} -1} \\
    \sec x &= \frac{2}{e^{ix} + e^{-ix}} \\
    \csc x &= \frac{2i}{e^{ix} - e^{-ix}}
\end{align*}}

相互の関係

  { \displaystyle\begin{align*}
    \sin^2 x + \cos^2 x = 1 \\ 1 + \tan^2 x = \frac{1}{\cos^2 x} \\ 1 + \frac{1}{\tan^2 x} = \frac{1}{\sin^2 x}
\end{align*}}

上から順に

  • { \sin x }{ \cos x } の関係
  • { \cos x }{ \tan x } の関係
  • { \sin x }{ \tan x } の関係

となっています。

【追記】

  •  { \cot x,\,\sec x,\,\csc x } の定義と指数関数による表式を追記しました。
  • 三角関数の定義を直角三角形を使ったものに変更しました。

*1:直角に隣接する辺