以前の記事「あれ、部分分数に分解して計算する級数って、もうちょっとキチンと解かないといけなくない?」で、高校数学の問題としてよく出題される級数の計算についてちょっと疑問に思ったことを書いたのですが、今回はちょっと一般化した問題について同じことが成り立つことを見ていきます。
問題の級数
以前の記事では
という形の級数を考えて、一般項を導きました。 結果は
となりました。 この記事では、これらの級数を少し一般化して
という形の級数を考えます。
が
に比べて充分大きい場合の解法
まぁ、これは難しくないと思います。 次に級数の各項を書き並べて、互いに打ち消しあう項を取り除き、残りの項をまとめます。 項を沢山書き並べますが、大きく分けて次の3つに分類できます:
に対応する項が残り、
に対応する項が消える[1]
に対応する項がどちらも消える[2]
に対応する項が消え、
に対応する項が残る[3]
これを踏まえて、(1) の級数は以下のように計算できます:
さて、最後の式で和のとる順序を変えて、もう少し変形しましょう:
なんか、級数を計算して簡単な式を導こうとしたのに結果が級数になってしまった・・・ 一瞬、一周して元に戻ったようにも見えるけど、最初の級数が までの和であるのに対して、結果の級数は
までの和になってます。 というか、
と
の役割が入れ替わってますね。 これは、上で示した式
を以下のように変形すると、もっと象徴的:
えー、これって、高校くらいで出てくるような公式かなぁ? 結果だけ見るとなんてことなさそうな公式なんだけど。 この記事中では、この関係式を双対性 (duality)とでも読んでおきましょう。
が
に比べて充分大きいとは?
級数が一応計算できたので、次はこの導出が問題なく成り立つ条件を考えましょう。 例えば (1) の級数で さて、まず問題なく上記の導出が成り立つのは、導出仮定で沢山の項を分類した3種類がきちんと現れている場合です。 これを満たすのは、種類[2]の項が1個以上ある場合で、この条件は となります。 また、もし種類[2]の項がなくても、残る項が
と
それぞれに対応する項から
個ずつあれば、上記の導出が問題なく成り立つこともちょっと考えれば分かると思います。 これに対応する条件は
です。 ということで、
の場合に (2) の級数が (1) の級数と等しいことを示せばいいことが分かります。
で、このことはどうやって示せるかというと、この級数の双対性から明らかだよ!・・・で終わりでいいかな? と
の大小関係が逆転するのがミソです。 あんまり自明と感じない人は、(1) から (2) を導いたのとほぼ同じこと(
と
を入れ替えただけ)を (2) に適用して、部分分数に展開して出てくる項があれこれ打ち消しあって (1) 式の級数になることを確かめて下さいな。

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