前からずっと気になっていたんだけど、『数学ガール (数学ガールシリーズ 1)』(一番最初の巻)の第6章に載っている、微分・積分の公式に対応する差分・和分の公式って結構スゴイ、そしてキレイ。 んで、ふと自分の手で実際に証明してみることに(というか証明を追ってみることに)。 今回は差分に関連するものを。
いくつか定義
まずはいくつか定義を。 なぜこういう定義をするのか?というのは『数学ガール (数学ガールシリーズ 1)』を参照のこと。 それがキモだと思うので。差分演算子 
ある関数 と定義します。 対応する微分関連の公式がある場合は c.f. で並記しておきます。 今の場合、微分演算子 が対応物。 差分は幅1の変化率という感じですね。
下降階乗冪
これが少々分かりにくいやつなんですが、多項式を微分する公式が下降階乗冪を差分する公式に対応します。 この公式をこの記事で導くので詳細は後で。 とりあえず下降階乗冪の定義を。 のときは1と定義するのが自然かな。
差分と下降階乗冪に慣れよう
では、これらに慣れるために
のとき
のとき
のとき
のとき
定数の差分
ちなみに、定数に差分演算子を作用させると(
より0になります。
結果をまとめると
以上の計算で以下の結果が得られました(下降階乗冪を使うと冪乗の差分が微分と同じように書けそうだと言うことが分かります。 下降階乗冪ではなく通常の冪乗を使うと、差分演算に対してこのような形には書けません。
一般の冪乗に対して証明するための準備
下降階乗冪を使うと、差分演算子に対して
が成り立ちそうだ、という予想が立ちますが、これを一般の自然数冪について証明するためにいくつか公式を導いておきましょう。
下降階乗冪の漸化式
まずは下降階乗冪の指数が1だけずれているときの関係式を導きます。 定義より
よって
積の差分
2つの関数
よって
積の微分の公式より項が1つ増えてるのが悲しいところですね。
差分演算子の線形性
よって
一般の冪の差分について
さて、以上の準備を踏まえて、以下の公式を導きましょう:
=1 の場合
この場合は既に計算しました:
の場合に成り立つと仮定すると
このとき
よって のときも成り立つ。 以下定型文。
これでめでたく任意の自然数 に対して
が成り立つことが示せました。 のとき、下降階乗冪の指数が-1というのは定義されてませんが、係数
が0になるので0とすれば、差分が0になるとこんしすてんしー。
追記
上記の公式は数学的帰納法を使わなくても普通に導けそうですね:
なんてこった!ぱんなこった!

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