倭算数理研究所

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二項係数の自乗の和に関する公式

前回、二項係数の加法定理(加法公式)を使って、『級数・フーリエ解析 (岩波 数学公式 2)』に載っている、二項係数を2つ含む級数の公式をいくつか導きました。 ただ、いくつか加法定理からは導けない公式があったので、今回はそれらを別の方法で導いてみます。

とある公式の導出

二項係数は以下の冪展開の係数で与えられるのでした:

  { \displaystyle\begin{align*}
    (1+x)^n &= \sum_{p=0}^\infty \binom{n}{p}x^p & \cdots (1)
\end{align*}}

この展開式で  { x \rightarrow -x } の変数変換を施すと

  { \displaystyle\begin{align*}
    (1-x)^n &= \sum_{p=0}^\infty (-1)^p \binom{n}{p}x^p & \cdots (2)
\end{align*}}

を得ます。 (1), (2) 式の辺々を掛けて、前回やったような和の取り方の変更を施すと

  { \displaystyle\begin{align*}
  (1+x)^n(1-x)^n
    &= \sum_{r=0}^\infty \binom{n}{r}x^r \sum_{s=0}^\infty (-1)^s\binom{n}{s}x^s \\
    &= \sum_{r=0}^\infty\sum_{s=0}^\infty  (-1)^s \binom{n}{r}\binom{n}{s}x^{r+s} \\
    &= \sum_{p=0}^\infty\sum_{r=0}^p  (-1)^{p-r} \binom{n}{r}\binom{n}{p-r}x^p & \cdots (3) \qquad
     (p = r+s)  
\end{align*}}

また、上式の左辺の関数は以下のようにも冪展開できます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  (1+x)^n(1-x)^n
    &=\left (1-x^2\right)^n \\
    &= \sum_{m=0}^\infty (-1)^m \binom{n}{m}x^{2m} & \cdots (4) \qquad
      (\because (2) \;\textrm{with}\; x \rightarrow x^2)
\end{align*}}

(3), (4) を見比べると

  { \displaystyle\begin{align*}
    \sum_{r=0}^p  (-1)^{p-r} \binom{n}{r}\binom{n}{p-r}
        &= \begin{cases}
            \displaystyle (-1)^m \binom{n}{m} & (p = 2m) \\[4mm]
            0 & (p = 2m+1)
    \end{cases}
\end{align*}}

特に  { p = n } のとき

  { \displaystyle\begin{align*}
  \sum_{r=0}^n  (-1)^{r} \binom{n}{r}^2
    &= \begin{cases}
      \displaystyle (-1)^m \binom{2m}{m} = (-1)^m\frac{(2m)!}{(m!)^2} & (n = 2m) \\[4mm]
      0 & (n = 2m+1)
  \end{cases}
\end{align*}}

本日導いた公式

  { \displaystyle\begin{align*}
  \sum_{r=0}^n  (-1)^{r} \binom{n}{r}^2
    &= \begin{cases}
      \displaystyle (-1)^m \binom{2m}{m} = (-1)^m\frac{(2m)!}{(m!)^2} & (n = 2m) \\[4mm]
      0 & (n = 2m+1)
    \end{cases}
\end{align*}}

級数・フーリエ解析 (岩波 数学公式 2)

級数・フーリエ解析 (岩波 数学公式 2)