前回、角運動量演算子の交換関係を導きましたが、実質的に計算したのは の2つだけでした。 まぁ、別にそれでも問題ないんですが、この記事ではベクトルの各成分を添字で区別して、一般的に成分の交換関係を計算してみます。 前回導いた交換関係に関する公式はここでも使います。
準備
まず道具立てをしておきましょう。 クロネッカー・デルタ (Kronecker delta) と(3次元の)レヴィ=チヴィタ・シンボル (Levi-Civita symbol) を以下のように定義します:
2つの は、添字を1つずつもしくは2つずつ縮約(繰り返された添字についてはとりうる値について和をとります(アインシュタイン規約))したときに以下の関係式を満たします:
交換関係の導出
定義
さて、では角運動量演算子の成分の交換関係を導いてみましょう。 書くまでもないかも知れませんが
です。 このとき、任意の に対して、位置演算子と運動量演算子の各成分の交換関係は以下のようになります:
これで全ての場合を網羅していますね。 前回は1つ目の式のさらにいくつか場合のみしか書けてませんでした。 運動量演算子の定義もまとめて1つの式で書けます:
角運動量演算子の成分の交換関係
以上を踏まえて、角運動量演算子の成分の交換関係を計算してみましょう。
ここで
なので、結局
が成り立つことが示せました。
角運動量演算子の2乗と成分の交換関係
同様にして、角運動量演算子の2乗 と成分の交換関係も計算しましょう。
最後の変形では、 が について対称( を入れ替えても元と等しい)なので、それらの添字についてレヴィ=チヴィタ・シンボルの反対称(添字の1回の入れ替えで値の符号が変わる)な2つの添字と縮約をとると消えることを使っています。 一応、キチンと式で導いておきましょうか。
縮約された(和をとられた)添字はダミー変数と呼ばれ、名前を書き換えても式自体の値を変化させないことに注意して、
より、最初と最後の式に注目して
となります。
したがって、
が成り立ちます。
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