倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

安倍マリオが東京からリオまでいくのにかかる時間を計算してみる

ちょっと機を逸した気もしますが、リオオリンピックの閉会式で安倍マリオが東京からリオデジャネイロまで地球内部を貫通して行くのにどれくらいの時間がかかったのかを計算してみましょう。 まぁ、結構単純化したモデルなので参考程度と思ってくださいまし。

地球内部の重力ポテンシャル

地球は完全な球体とし、密度はどこでも一定であるとしましょう。 地球の中心を原点、半径を  { R }、密度を  { \rho } とすると、地球内部での重力ポテンシャル  { \Phi(\textbf{r}) } は以下で与えられます(球対称な質量分布が作る重力ポテンシャルについてはこちらを参照):

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Phi(\textbf{r})
    &= \frac{2\pi G \rho}{3} r^2 - 2\pi G \rho R^2
\end{align*}}

 { G }万有引力定数(ニュートン重力定数)、 { r = |\textbf{r}| = \sqrt{x^2 + y^2 + z^2} } です。

地球の密度よりも地球の質量の方が値を入れて計算しやすいので、この式を地球の質量  { M } を使って書き換えておきましょう。  { \rho = \frac{M}{\frac{4}{3}\pi R^3} } より

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Phi(\textbf{r})
    &= \frac{2\pi G}{3}\cdot \frac{M}{\frac{4}{3}\pi R^3} \cdot r^2
      - 2\pi G \cdot \frac{M}{\frac{4}{3}\pi R^3} \cdot R^2 \\
    &= \frac{GM}{2R^3} r^2 - \frac{3GM}{2 R}
\end{align*}}

安倍マリオの運動方程式調和振動子の角振動数

簡単のため、東京とリオは地球の正反対の位置にあるとします。 東京とリオと地球の中心を通る直線を  { x } 軸にとり、 { x } 方向の運動方程式を書き下すと、安倍マリオの質量を  { m } として

  { \displaystyle\begin{align*}
  m\frac{d^2 x}{d t^2} &= -m \frac{\partial \Phi(\textbf{r})}{\partial x}  \\[2mm]
  \therefore\quad \frac{d^2 x}{d t^2} &= - \frac{GM}{R^3} x
\end{align*}}

となります。 この方程式は安倍マリオの質量に関係なく成り立ちます*1。 さて、この微分方程式調和振動子運動方程式となっていて簡単に解けますが、すでに昔に解いたことがある(こちら)のでここでは繰り返さず、角振動数のみを求めましょう。 調和振動子の角振動数  { \omega } { x } の係数の絶対値の正の平方根で与えられるのでした:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \omega = \sqrt{\frac{GM}{R^3}}
\end{align*}}

到達時間

さて、安倍マリオが東京から初速度0で出発して*2、地球内部を通ってリオに到達するのにかかる時間を求めましょう。 この時間は調和振動子の周期  { T = \frac{2\pi}{\omega} } の半分ですね:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{1}{2}T = \pi\sqrt{\frac{R^3}{GM}}
\end{align*}}

ここで

を代入して計算すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{1}{2}T
    &\fallingdotseq \pi \sqrt{\frac{(6.37 \times 10^6)^3}{6.67 \times 10^{-11} \times 5.97 \times 10^{24}}} \\
    &= 100 \pi \sqrt{\frac{6.37^3 \times 10}{6.67 \times 5.97}} \\
    &\fallingdotseq 2.53 \times 10^3 \, [\textrm{s}] \\
    &\fallingdotseq 42 \, [\textrm{min}]
\end{align*}}

となって、おおよそ42分で到達できることがわかりました。

ちなみに・・・

 { y,\,z } 方向の運動方程式 { x } 方向のものと全く同じになるので、やはり調和振動子となります。 したがって、 { y,\,z } 方向の初期位置、初速度が0なら、この方向には運動しません。

修正
一部間違ってる箇所があった部分を削除しました。

*1:天才はここから等価原理を思いつくらしいですが。

*2:これは自由落下と言っていいんでしょうかね。 自由振動の方がいい気もしますが。