この記事では、以下の積分
を実行してみます。 結果が実数関数であることを要請すると、 の値によって の範囲に制限が出てくる場合があるのでちょっと面倒。 後のために、被積分関数の平方根の中を平方完成しておきましょう:
では、いくつかの場合に分けて積分していきましょう。
のとき
この場合、さらに平方根の中の項 の符号によって場合分けする必要があります。 より、分子の の符号を見れば充分です。のとき
のとき、任意の について なので、 に制限はつきません。では積分の実行。 平方根の中が に比例するように、積分変数を から以下で定義される へ変数変換しましょう:
このとき
のとき
この場合は で積分が定義されます。 積分自体は難しくありませんが、 と で符号だけ異なるので、複号を用いて前者を上、後者を下にして、まとめて計算しましょう:
のとき
積分が実数となる の範囲は
この場合も2つの範囲で積分が符号だけ異なるので、複号で上を 、下を の場合として、まとめて計算します。
では積分の実行。 今の場合は平方根の中が に比例するように、積分変数を から以下で定義される へ変数変換します:
常に なので、 のときは負符号をつけて定義する必要があることに注意。 また、 では 、 では とします。 このとき
4行目から5行目への変形では逆双曲線関数 の正の分岐をとっています。 では の値は負である*1一方、 の値が正なので負符号をつけています。
のとき
不定積分が実数関数として存在するためには、平方根の中の2次式に正の値をとる定義域が存在しなければならないので でなければなりません。 さらに、 の範囲は
でなければなりません。 この条件が満たされているとして、積分を実行しましょう。 とおくと
ここで、平方根の中が に比例するように積分変数 を以下のように導入しましょう:
このとき
積分定数は省略しています。
のとき
のときは簡単に積分できます:
平方根の中は正でなければならないので、定義域は
となります。 も0の場合は被積分関数が定数なので書く必要がないでしょう。
まとめ
以上をまとめると、積分定数を省略して
ここには書いてませんが、1つ目のケース以外には に範囲があります(上記参照)。 ちょっと岩波数学公式集と異なるところがあるので、そのうち修正するかも・・・
逆双曲線関数を対数関数で表す
『逆双曲線関数を対数関数で表す』の結果を使って、上記の の場合の逆双曲線関数を対数関数で表して見ましょう。の場合
を対数関数で表した公式
より
なので となることに注意。
の場合
の場合も の場合と同じように計算できます。 を対数関数で表した公式(のうち、正の分岐をとったもの)
より(複号は上記と同じ意味)
となります。
の場合
任意の について
が成り立つので、上記の2つの場合はまとめて
と書けます。
の場合は既に対数関数で書けていますが、この場合も同じであることが期待されます。 よって実際にそうなるかを確かめてみましょう。 上記で定義される について
これは のときはたしかに の場合の結果と等しいですが、 の場合は一致しません。 ただし、この場合は同様の計算で
に等しいことが分かります。 これは の の場合と同じ形でもあります。
まとめ
結果をまとめると以下のようになります: