倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

不定積分と偶関数・奇関数

高校数学では、積分については偶関数・奇関数に対する便利な公式がありますね。  { f_\textrm{even}(x),\,f_\textrm{odd}(x) } をそれぞれ偶関数、奇関数とする、つまり以下が成り立つとします:

  { \displaystyle\begin{align*}
  f_\textrm{even}(-x) &= f_\textrm{even}(x) \\
  f_\textrm{odd}(-x) &= -f_\textrm{odd}(x)
\end{align*}}

このとき、 { x = 0 } を中点とする区間での定積分に対して次の公式が成り立ちます( { a } は正の定数):

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int_{-a}^a f_\textrm{even}(x) dx &= 2\int_0^a f_\textrm{even}(x) dx \\
  \int_{-a}^a f_\textrm{odd}(x) dx &= 0
\end{align*}}

不定積分

さて、では不定積分について、偶関数・奇関数に関連して何か言えることはないか考えてみましょう。  { F(x),\,G(x) } をそれぞれ  { f_\textrm{even}(x),\,f_\textrm{odd}(x) } の原始関数*1とします。 ただし、積分定数は0とします:

  { \displaystyle\begin{align*}
  F(x) = \int f_\textrm{even}(x)dx \\
  G(x) = \int f_\textrm{odd}(x)dx
\end{align*}}

このとき、 { F(x) } について

  { \displaystyle\begin{align*}
  F(-x)
    &= F(t) \qquad (t = -x) \\
    &= \int f_\textrm{even}(t)dt \\
    &= -\int f_\textrm{even}(-x)dx \\
    &= -\int f_\textrm{even}(x)dx \qquad (\because f_\textrm{even}(-x) = f_\textrm{even}(x)) \\
    &= -F(x)
\end{align*}}

となり、 { F(x) } は奇関数になることが分かります。 同様にして、 { G(x) } について

  { \displaystyle\begin{align*}
  G(-x)
    &= G(t) \qquad (t = -x) \\
    &= \int f_\textrm{odd}(t)dt \\
    &= -\int f_\textrm{odd}(-x)dx \\
    &= \int f_\textrm{odd}(x)dx \qquad (\because f_\textrm{odd}(-x) = -f_\textrm{odd}(x)) \\
    &= G(x)
\end{align*}}

となり、 { G(x) } は偶関数になることが分かります( { G(x) } については積分定数が0である必要はないですね)。 つまり、積分定数を0としたとき、偶関数、奇関数の原始関数(不定積分)はそれぞれ奇関数、偶関数になることが分かります。

微分

ちなみ、微分についても同じような関係が成り立ちます。  { f_\textrm{even}(x),\,f_\textrm{odd}(x) }導関数をそれぞれ  { \mathfrak{f}(x),\,\mathfrak{g}(x) } としましょう。  { f_\textrm{even}(x) } は偶関数なので  { f_\textrm{even}(-x) = f_\textrm{even}(x) } が成り立ちます。 両辺を  { x }微分して

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\mathfrak{f}(-x) &= \mathfrak{f}(x) \\
  \therefore\; \mathfrak{f}(-x) &= -\mathfrak{f}(x)
\end{align*}}

よって  { \mathfrak{f}(x) } は奇関数になります。 同様にして、 { f_\textrm{odd}(x) } に対しては  {  f_\textrm{odd}(-x) = - f_\textrm{odd}(x) } が成り立ち、両辺を  { x }微分すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\mathfrak{g}(-x) &= -\mathfrak{g}(x) \\
  \therefore\; \mathfrak{g}(-x) &= \mathfrak{g}(x)
\end{align*}}

となり、 { \mathfrak{g}(x) } は偶関数になります。 まぁ、グラフを考えれば当たり前ですが。

以上、計算だけなら数秒で終わりそうな話でした。

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*1:微分するとその関数になる関数。 F'(x) = f(x) を満たす F(x)。 不定積分の結果を x の関数と見たものって感じ。