Quantum Computing: A Gentle Introduction (Scientific and Engineering Computation) (English Edition)
- 作者: Eleanor G. Rieffel,Wolfgang H. Polak
- 出版社/メーカー: The MIT Press
- 発売日: 2011/03/04
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
目次はこちら。
Exercise 3.11. Let be an -qubit state. Show that the sum of the distances from to the standard basis vectors is bounded below by a positive constant that depends only on ,
where indicates the length of the enclosed vector. Specify such a constant in terms of .
最小値を求める和の各項 を変形すると
となるので、問題の和は
と書けます。
問題を少し書き換える
さて、 は を正規直交基底 で展開したときの係数となる複素数ですが、これの実部と虚部をそれぞれ とおく () と、 の規格化条件より
が成り立っています。 また、(1) 式は
と書き換えられます。 したがって、問題は を変数として、 (2) 式の条件下で
の最小値を求めることに帰着します(因子 は後で付けます)。
が負のときは、 の代わりに を使うと、規格化条件 (2) 式を満たしつつ (1') 式の和は小さくなるので、以下では の値は とします。
極値条件を求める
拘束条件がある場合の最小値はラグランジュの未定乗数法を用いて解けます。 を未定乗数として、関数 を
( の前の は式を簡単にするため)で定義すると、 の極値条件は
となります。 (4) 式より、全ての は消えることが分かります。 また、(3) 式より
となりますが、 は の範囲で任意なので、この範囲内の 以外の整数 をとって
(5), (6) 式を辺々引いて
付録でやるように2番目の因子は の範囲で0にならないので、 のときに が極小値(極大値ではなく)をとればそれが最小値になります。
極値の性質を調べる
ここでは として、このときに が極小値をとるかどうかを調べましょう。 これは の2階微分 の極値をとる点での符号で判定できます。まずは の値を求めます。 は任意だったので、 より、全ての が等しくなります。 このとき、規格化条件 (2) 式と より
を得ます。
次に の値を求めます。 (5) 式に の値 (7) を使うと
となります。
これらの結果を使って、 の2階微分は
となり、 のときに正となる、つまり がこの点で極小値(最小値)をとることが分かります。 のときは極大値、 のときはこれだけでは判定できませんが、これらの場合は(付録より)最小値をとるのは のどちらかなので、直接最小値を求めましょう。
最小値を求める
のとき、 は で最小値をとるので、求める最小値 は
となります。
のとき、 は で極大値をとるので、 で最小値をとります。 規格化条件 (2) より、 のうち1となるのは1つだけなので、 として計算すると
となります。
のときは のときと のときを計算して大小関係を比べましょう。 のときは のときと同じ式が使えて となります。 一方、 のときは となるので、結局 のときが最小値であることが分かります。 これは の場合とまとめられます。
以上の結果をまとめると
となります。
付録
についての2次関数
が、 の範囲で0とならないことを示します。 は上に凸ですが
(2行目では規格化条件 (2) 式を使った)なので、グラフを考えると の範囲内に実数解が存在しないことが分かります。