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倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

シュレディンガー方程式を解こう ~2次元中心力ポテンシャル~

シュレディンガー方程式を解こうシリーズ(目次)。 今回は2次元での中心力ポテンシャル系、つまりポテンシャルが動径  { r } にのみ依存する系を考えます。

中心力ポテンシャルを  { V(r) } とおくと、シュレディンガー方程式

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(-\frac{\hbar^2}{2m}\triangle + V(r)\right)\psi(\textbf{x}) = E\psi(\textbf{x})
\end{align*}}

となります。 「ラプラシアンの極座標表示 : 2次元」より、ラプラシアン極座標で表すと、これは以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[-\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{r}\frac{\partial}{\partial r}\left(r\frac{\partial}{\partial r}\right)
      +\frac{1}{r^2}\frac{\partial^2}{\partial \theta^2}\right) + V(r)\right]\psi(r,\,\theta)
    = E\psi(r,\,\theta)
\end{align*}}

以下では、変数  { r,\,\theta } を変数分離して偏角方向の方程式を解いてみます(ちょっとクドめに)。

変数分離

シュレディンガー方程式の解を以下の形に仮定します:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi(r,\,\theta) = R(r)\Theta(\theta)
\end{align*}}

これをシュレディンガー方程式に代入すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{r}\frac{d}{dr}\left(r\frac{dR(r)}{dr}\right)\Theta(\theta)
      +\frac{1}{r^2}R(r)\frac{d^2 \Theta(\theta)}{d\theta^2}\right) + V(r)R(r)\Theta(\theta)
    = ER(r)\Theta(\theta)
\end{align*}}

両辺に  { \frac{r^2}{R(r)\Theta(\theta)} } をかけて

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{R(r)}r\frac{d}{dr}\left(r\frac{dR(r)}{dr}\right)
      +\frac{1}{\Theta(\theta)}\frac{d^2 \Theta(\theta)}{d\theta^2}\right) + r^2V(r)
    = Er^2 \\[4mm]
  \therefore\,\frac{1}{R(r)}r\frac{d}{dr}\left(r\frac{dR(r)}{dr}\right)
      - \frac{2m}{\hbar^2}r^2\left(V(r) - E\right)
    = -\frac{1}{\Theta(\theta)}\frac{d^2 \Theta(\theta)}{d\theta^2}
\end{align*}}

最後の式では、左辺は  { r } のみの関数、右辺は  { \theta } のみの関数なので、両辺は  { r,\,\theta } に依存しない定数となります。 この定数を  { C } とおくと、上記の方程式は2つに分離できて

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    \displaystyle \frac{1}{R(r)}r\frac{d}{dr}\left(r\frac{dR(r)}{dr}\right)
      - \frac{2m}{\hbar^2}r^2\left(V(r) - E\right) = C \\[2mm]
    \displaystyle -\frac{1}{\Theta(\theta)}\frac{d^2 \Theta(\theta)}{d\theta^2} = C
  \end{cases}
\end{align*}}

もう少し変形して(動径方向の方程式はシュレディンガー方程式っぽく直して)

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    \displaystyle \left[-\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{r}\frac{d}{dr}\left(r\frac{d}{dr}\right)
      - \frac{C}{r^2}\right) + V(r)\right]R(r) = ER(r) \\[4mm]
    \displaystyle \frac{d^2\Theta(\theta)}{d\theta^2} = -C\Theta(\theta)
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。

偏角方向の方程式を解く

偏角方向の方程式はポテンシャルに依らずに解けるので、ここで解いてしまいましょう。

 { \theta } は角度なので周期が  { 2\pi }周期的境界条件  { \Theta(\theta+2\pi) = \Theta(\theta) } を課しましょう。 これは、高校物理で半古典的な水素原子を解くときのボーアの量子条件と同じものですね*1。 このとき、基本解は  { \Theta_n(\theta) = e^{in\theta} \quad (n = 0,\,\pm 1,\,\pm2,\cdots) } とおけるので、 { \frac{d^2\Theta_n(\theta)}{d\theta^2} = -n^2\Theta(\theta) } より

  { \displaystyle\begin{align*}
  C &= n^2
\end{align*}}

となります。 動径方向の方程式は(各  { n } に対して)

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[-\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{r}\frac{\partial}{\partial r}\left(r\frac{\partial}{\partial r}\right)
    - \frac{n^2}{r^2}\right) + V(r)\right]R_n(r) = E_nR_n(r)
\end{align*}}

となり、シュレディンガー方程式の基本解は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_n(r,\,\theta) &= R_n(r)\;e^{in\theta}
\end{align*}}

で与えられます(一般解はこの線形結合で与えられます)。

角運動量

古典的な運動方程式の場合「中心力ポテンシャル中での質点の運動方程式 ~2次元~」と対比させると、 { n }角運動量に関連する量であると予想されるので、2次元の角運動量演算子を考えてみましょう。 2次元の角運動量演算子  { L } は座標表示で以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  L &= xp_y - yp_x \\
    &= -i\hbar\left(x\frac{\partial}{\partial y} - y\frac{\partial}{\partial x}\right)
\end{align*}}

さらに「ラプラシアンの極座標表示 : 2次元」で計算した微分演算子極座標表示

  { \displaystyle\begin{align*}
\nabla
     = \begin{pmatrix}
        \dfrac{\partial}{\partial x} \\[4mm]
        \dfrac{\partial}{\partial y}
    \end{pmatrix}
    &= \begin{pmatrix}
        \cos\theta \dfrac{\partial}{\partial r} - \dfrac{\sin\theta}{r}\dfrac{\partial}{\partial \theta} \\[4mm]
        \sin\theta \dfrac{\partial}{\partial r} + \dfrac{\cos\theta}{r}\dfrac{\partial}{\partial \theta}
    \end{pmatrix}
\end{align*}}

を使って、角運動量演算子極座標で表すと

  { \displaystyle\begin{align*}
  L &= -i\hbar\left\{
      r\cos\theta\left(\sin\theta \dfrac{\partial}{\partial r} + \dfrac{\cos\theta}{r}\dfrac{\partial}{\partial \theta}\right)
      - r\sin\theta\left(\cos\theta \dfrac{\partial}{\partial r} - \dfrac{\sin\theta}{r}\dfrac{\partial}{\partial \theta}\right)\right\} \\
    &= -i\hbar\frac{\partial}{\partial\theta}
\end{align*}}

これを使えば、状態  { \Theta_n(\theta) = e^{in\theta} }角運動量 { n\hbar } となり、プランク定数の整数倍になることがわかります。  { \Theta_n(\theta) }角運動量演算子固有値  { n\hbar } に属する固有関数であることも分かりますね。

【修正】

  • 動径方向の方程式の  { n^2 } を含む項の符号が間違っていたので修正しました。 その他、余計な因数が付いている部分があったので修正しました。

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

*1:もともとのボーアの量子条件は角運動量プランク定数の整数倍で書けるというものだったかと思いますが。

エルミートの微分方程式とその級数解

シュレディンガー方程式を解こう ~調和振動子~』に関する補足記事です。 この記事ではなるべく生成・消滅演算子の前提知識なしにシュレディンガー方程式の解を求めてみます。

適当に変数を書き換えた調和振動子シュレディンガー方程式

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{1}{2}\left(\frac{d^2}{dz^2} - z^2\right)\Psi(z) = \varepsilon\Psi(z)
\end{align*}}

でした。

参考

エルミートの微分方程式

シュレディンガー方程式の解として

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Psi(z) = H(z)e^{-\frac{1}{2}z^2}
\end{align*}}

の形のものを求めましょう。  { \Psi(z) } { z } 微分を計算すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Psi'(z) &= \Big\{H'(z) - z H(z)\Big\} e^{-\frac{1}{2}z^2} \\[2mm]
  \Psi''(z) &= \Big\{H''(z) - z H'(z) - H(z)\Big\}e^{-\frac{1}{2}z^2}
                 + \Big\{- z H'(z) + z^2 H(z)\Big\}e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
               &= \Big\{H''(z) - 2z H'(z) + \left(z^2 - 1\right)H(z)\Big\}
                 e^{-\frac{1}{2}z^2}
\end{align*}}

これをシュレディンガー方程式に代入して

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{1}{2}\Big\{H''(z) - 2z H'(z) - H(z)\Big\}e^{-\frac{1}{2}z^2}
    &= \varepsilon e^{-\frac{1}{2}z^2} \\[2mm]
  \therefore \,H''(z) - 2z H'(z) +\left(2\varepsilon - 1\right)H(z) &= 0
\end{align*}}

この  { H(z) } に対する微分方程式 { \varepsilon = n+\frac{1}{2} } のときエルミート (Hermite) の微分方程式と呼ばれ(正確には下記の【補足】参照)、その解は(各  { n } に対して)エルミート多項式  { H_n(z) } で表されることが知られています。

【補足】
正確には上記の微分方程式はエルミートの微分方程式とは言わず、 { n } を整数として

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(\frac{d^2}{dx^2} - x\frac{d}{dx} + n\right)y(x) = 0
\end{align*}}

の形のものエルミートの微分方程式を言います。 これらの微分方程式は単に  { x = \sqrt{2}\;z } と変数変換すれば互いに関係づけられます(エルミート多項式の規格化も少し変わりますが)。 この記事では上記の  { H(z) } に対する微分方程式をエルミートの微分方程式と呼ぶことにします。

エルミートの微分方程式級数解を求める

エルミートの微分方程式

  { \displaystyle\begin{align*}
  H''(z) - 2z H'(z) +\left(2\varepsilon - 1\right)H(z) &= 0
\end{align*}}

級数解を求めてみましょう。  { H(z) } の冪展開の係数  { h_m } を以下のように定義します:

  { \displaystyle\begin{align*}
  H(z) = \sum_{m=0}^\infty \frac{h_m}{m!}z^m
\end{align*}}

このとき

  { \displaystyle\begin{align*}
  z H'(z) &= \sum_{m=0}^\infty \frac{mh_m}{m!}z^m \\
  H''(z) &= \sum_{m=0}^\infty \frac{h_{m+2}}{m!}z^m
\end{align*}}

なので、エルミートの微分方程式から  { h_m } の漸化式が得られます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  & \sum_{m=0}^\infty\left\{h_{m+2} - 2 m h_m + \left(2\varepsilon - 1\right) h_m\right\} 
    \frac{z^m}{m!} = 0 \\[2mm]
  &h_{m+2} - 2 m h_m + \left(2\varepsilon - 1\right) h_m = 0 \\[2mm]
  \therefore\,& h_{m+2} = -\left(2\varepsilon - 2m - 1\right) h_m
\end{align*}}

さて、 { H(z) } のうち  { z } { n } 次の多項式となるものを  { H_n(z) } とし、その  { z^m } の係数  { h_m^{(n)} } を以下のように定義します:

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_n(z) = \sum_{m=0}^n \frac{h_m^{(n)}}{m!}z^m
\end{align*}}

当然、 { h_m^{(n)} } { h_m } と同じ漸化式を満たします:

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{m+2}^{(n)} = -\left(2\varepsilon - 2m - 1\right) h_m^{(n)}
\end{align*}}

 { H_n(z) } { n } 次の多項式となるためには  { h_n^{(n)} \ne 0 } かつ  { h_{n+2}^{(n)} = 0 } となっていなければならないので、漸化式で  { m = n } として

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{n+2}^{(n)} &= -\left(2\varepsilon - 2n - 1\right) h_n^{(n)} \\
  2\varepsilon& - 2n - 1 = 0 \\
  \therefore\, \varepsilon &= n + \frac{1}{2}
\end{align*}}

を得ます。 これを使うと  { h_m^{(n)} } に対する漸化式は

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{m+2}^{(n)} = -2(n-m) h_m^{(n)}
\end{align*}}

となります。 この漸化式を繰り返し使って

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_m^{(n)}
    &= -2(n-m+2) h_{m-2}^{(n)} \\
    &= \,\,\,\,\, 2^2(n-m+2)(n-m+4) h_{m-4}^{(n)} \\
    &= -2^3(n-m+2)(n-m+4)(n-m+6) h_{m-6}^{(n)} \\
    &= \cdots \\
    &= \begin{cases}
        (-2)^{\frac{m}{2}} \frac{n!!}{(n-m)!!} h_0^{(n)} & (n,\,m :\,\textrm{even}) \\[2mm]
        (-2)^{\frac{m-1}{2}} \frac{(n-1)!!}{(n-m)!!} h_1^{(n)} & (n,\,m :\,\textrm{odd}) \\[2mm]
        0 & (\textrm{otherwise})
      \end{cases}
\end{align*}}

(詳細は書いていませんが、値が0になる場合は  { h_{n+1}^{(n)} = 0 } から導かれます) { n } が偶数なら  { z } の偶数だけの項が、 { n } が奇数なら  { z } の奇数だけの項が残ることになります。

次に、 { n } を偶数と奇数の場合に分けて  { H_n(z) } を求めましょう。

 { n } が偶数のとき、 { n = 2p,\,m = 2\ell } として

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_{2p}(z)
    &= \sum_{\ell=0}^p \frac{h_{2\ell}^{(2p)}}{(2\ell)!}z^{2\ell} \\
    &= \sum_{\ell=0}^p \frac{(-2)^{\ell} (2p)!!h_0^{(2p)}}{(2p-2\ell)!!}\frac{z^{2\ell}}{(2\ell)!} \\
    &= h_0^{(2p)}\sum_{\ell=0}^p \frac{(-2)^{\ell} 2^p p!}{2^{p-\ell}(p-\ell)!}\frac{z^{2\ell}}{(2\ell)!} \qquad
      \left(\because (2n)!! = 2^n n! \right) \\
    &= h_0^{(2p)} p! \sum_{\ell=0}^p \frac{(-)^{\ell}(2z)^{2\ell}}{(p-\ell)!(2\ell)!}
\end{align*}}

エルミートの微分方程式は線型なので全体にかかる定数  { h_0^{(2p)} } は任意にとれますが、エルミート多項式 { h_0^{(2p)} = (-)^p\frac{(2p)!}{p!} } ととり*1

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_{2p}(z)
    &= (2p)! \sum_{\ell=0}^p \frac{(-)^{p-\ell}(2z)^{2\ell}}{(p-\ell)!(2\ell)!}
\end{align*}}

となります。

 { n } が奇数のとき、 { n = 2p+1,\,m = 2\ell+1 } として

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_{2p+1}(z)
    &= \sum_{\ell=0}^p \frac{h_{2\ell+1}^{(2p+1)}}{(2\ell+1)!}z^{2\ell+1} \\
    &= \sum_{\ell=0}^p \frac{(-2)^{\ell} (2p)!!h_1^{(2p+1)}}{(2p-2\ell)!!}\frac{z^{2\ell+1}}{(2\ell+1)!} \\
    &= h_1^{(2p+1)}\sum_{\ell=0}^p \frac{(-2)^{\ell} 2^p p!}{2^{p-\ell}(p-\ell)!}
      \frac{z^{2\ell+1}}{(2\ell+1)!} \\
    &= h_1^{(2p+1)} \frac{p!}{2} \sum_{\ell=0}^p \frac{(-)^{\ell}(2z)^{2\ell+1}}{(p-\ell)!(2\ell+1)!}
\end{align*}}

全体にかかる定数は  { h_1^{(2p+1)} = (-)^p2\frac{(2p+1)!}{p!} } ととり

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_{2p+1}(z)
    &= (2p+1)! \sum_{\ell=0}^p \frac{(-)^{p-\ell}(2z)^{2\ell+1}}{(p-\ell)!(2\ell+1)!}
\end{align*}}

となります。

冪の降順に書く & まとめて書く
上記の表式は  { \ell } が増えるのに合わせて  { z } の冪も増えるので、 { z } の冪の昇順に並んでいます。 これを冪の降順に書き換えると  { n } が偶数と奇数の場合をある程度まとめて書けるので、少し変形しましょう。

まず偶数の場合。  { m = p-\ell } とおくと

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_{2p}(z)
    &= (2p)! \sum_{\ell=0}^p \frac{(-)^{p-\ell}(2z)^{2\ell}}{(p-\ell)!(2\ell)!} \\
    &= n! \sum_{m=0}^{\frac{p}{2}} \frac{(-)^m(2z)^{n-2m}}{m!(n-2m)!} \qquad
      \left(\because n = 2p,\,2\ell = 2p - 2m = n-2m\right)
\end{align*}}

奇数の場合も同様に計算できます。  { m = p - \ell  } とおいて

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_{2p+1}(z)
    &= (2p+1)! \sum_{\ell=0}^p \frac{(-)^{p-\ell}(2z)^{2\ell+1}}{(p-\ell)!(2\ell+1)!} \\
    &=n! \sum_{m=0}^{\frac{n-1}{2}} \frac{(-)^m(2z)^{n-2m}}{m!(n-2m)!} \\[2mm]
    &\qquad \left(\because n = 2p+1,\,2\ell+1 = 2p-2m+1 = n - 2m\right)
\end{align*}}

となって、和の上限以外は同じ式で書けましたね。 この上限もガウス記号を使って

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[\tfrac{n}{2}\right]
    = \begin{cases}
        \frac{n}{2} & (n:\textrm{even}) \\
        \frac{n-1}{2} & (n:\textrm{odd})
      \end{cases}
\end{align*}}

とまとめて書けるので、結局

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_n(z) &= n! \sum_{m=0}^{\left[n/2\right]} \frac{(-)^m(2z)^{n-2m}}{m!(n-2m)!}
\end{align*}}

となります。

最初の数項
小さい  { n } に対して具体的な形を書き下してみましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_0(z) &= 1 \\
  H_1(z) &= 2z \\
  H_2(z) &= 4z^2 - 2 \\
  H_3(z) &= 8z^3 - 12z \\
  H_4(z) &= 16z^4 - 48z^2 + 12 \\
  H_5(z) &= 32z^5 - 160z^4 + 120z \\[2mm]
\end{align*}}

エルミート多項式がエルミートの微分方程式を満たすことを示す

上記の級数解のいくつかを書き下すとたしかにエルミート多項式になっているのですが、やはり全ての  { n } についてこれが成り立っていることを証明しておかないといけませんね。 ただし、普通に定義からやろうとするとナカナカ骨が折れるので、ここでは前回定義したエルミート多項式がエルミートの微分方程式を満たすことを示します。 これを示しても上記の級数解とエルミート多項式は定数倍だけ異なっていても問題ないのですが、どちらも  { z^n } の係数が  { 2^n } になることが簡単に示せるので、結局これらが同じものであることがわかります。

エルミート多項式の定義と満たす漸化式
エルミート多項式  { H_n(z) }

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_n(z) = (-)^ne^{z^2}\frac{d^n}{dz^n}e^{-z^2}
\end{align*}}

で定義され、以下の2つの漸化式を満たすのでした:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{d}{dz}H_n(z) &= 2n H_{n-1} \\
  \left(2z - \frac{d}{dz}\right)H_n(z) &= H_{n+1}
\end{align*}}

公式1つ
上記の2つの漸化式の辺々を加えると、 { \frac{d}{dz}H_n(z) } が消えて

  { \displaystyle\begin{align*}
  &2zH_n(z) = H_{n+1} + 2nH_{n-1} \\
  \therefore \,& H_{n+1} - 2zH_n(z) + 2nH_{n-1} = 0 \qquad\cdots(*)
\end{align*}}

を得ます。

エルミート多項式がエルミートの微分方程式を満たす証明
エルミート多項式の定義より

  { \displaystyle\begin{align*}
  H'_n(z)
    &= \left\{(-)^ne^{z^2}\frac{d^n}{dz^n}e^{-z^2}\right\}' \\
    &= (-)^n 2z e^{z^2}\frac{d^n}{dz^2}e^{-z^2} + (-)^ne^{z^2}\frac{d^{n+1}}{dz^{n+1}}e^{-z^2} \\
    &= 2z H_n(z) - H_{n+1}(z) \\[4mm]
  H''_n(z)
    &= 2H_n(z) + 2zH'_n(z) - H'_{n+1}(z) \\
    &= 2H_n(z) + 2z\left(2zH_n(z) - H_{n+1}(z) \right) - \left(2zH_{n+1}(z) - H_{n+2}(z)\right) \\
    &= (2+4z^2)H_n(z) - 4zH_{n+1}(z) + H_{n+2}(z)
\end{align*}}

よって

  { \displaystyle\begin{align*}
  &H''_n(z) - 2zH'(z) + 2nH_n(z) \\
    &\qquad= \Big\{(2+4z^2)H_n(z) - 4zH_{n+1}(z) + H_{n+2}(z)\Big\} \\
    &\qquad\qquad - 2z\Big\{2z H_n(z) - H_{n+1}(z)\Big\} + 2nH_n(z) \\
    &\qquad= 2(n+1)H_n(z) -2z H_{n+1}(z) + H_{n+2}(z)
\end{align*}}

これは (*) 式で  { n \rightarrow n+1 } の置き換えをした式を使うと上式が消えることが分かります。 したがって

  { \displaystyle\begin{align*}
  H''_n(z) - 2zH'(z) + 2nH_n(z) = 0
\end{align*}}

となり、エルミート多項式はエルミートの微分方程式を満たすことが示せました。

エルミート多項式を合流型超幾何関数で表す

エルミート多項式は合流型超幾何関数(こちらを参照)で表せることが知られています。 ということで実際に確かめてみましょう。 合流型超幾何関数の定義は

  { \displaystyle\begin{align*}
  F(a,\,c;\,z) = \sum_{n=0}^\infty \frac{a(a+1)(a+2)\cdots(a+n-1)}{c(c+1)(c+2)\cdots(c+n-1)}\frac{z^n}{n!}
\end{align*}}

です。  { n } が偶数か奇数かで表し方が異なるので、分けてやっていきます。 どちらも  { z } の冪の昇順に表されている表式から変形していきます。

まずは  { n } が偶数の場合。 全体にかかる因子  { h_0^{(2p)} = (-)^p\frac{(2p)!}{p!} } の部分はそのまま係数になります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_{2p}(z)
    &= (-)^p\frac{(2p)!}{p!} \sum_{\ell=0}^p \frac{(-)^ {\ell} p!}{(p-\ell)!}\frac{(2z)^{2\ell}}{(2\ell)!} \\
    &= (-)^p\frac{(2p)!}{p!} \sum_{\ell=0}^\infty \frac{(-p)(-p+1)\cdots(-p+\ell-1)}
      {\frac{1}{2}\cdot\frac{3}{2}\cdots\frac{2\ell-1}{2}}\frac{z^{2\ell}}{\ell !} \\
    &= (-)^p\frac{(2p)!}{p!}F(-p,\,\tfrac{1}{2};\,z^2)
\end{align*}}

同様にして  { n } が奇数の場合。 こちらは  { z } を1つ括り出します:

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_{2p+1}(z)
    &= (-)^p 2\frac{(2p+1)!}{p!} \sum_{\ell=0}^p \frac{(-)^{\ell} p!}{2(p-\ell)!}\frac{(2z)^{2\ell+1}}{(2\ell+1)!} \\
    &= (-)^p 2\frac{(2p+1)!}{p!} z \sum_{\ell=0}^\infty \frac{(-p)(-p+1)\cdots(-p+\ell-1)}
      {\frac{3}{2}\cdot\frac{5}{2}\cdots\frac{2\ell+1}{2}}\frac{z^{2\ell}}{\ell !} \\
    &= (-)^p 2\frac{(2p+1)!}{p!} z F(-p,\,\tfrac{3}{2};\,z^2)
\end{align*}}

結果だけを改めて書くと

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    H_{2p}(z)
      &= (-)^p\dfrac{(2p)!}{p!}F(-p,\,\tfrac{1}{2};\,z^2) \\[2mm]
    H_{2p+1}(z)
      &= (-)^p 2\dfrac{(2p+1)!}{p!} z F(-p,\,\tfrac{3}{2};\,z^2)
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。

第2種エルミート関数

エルミート多項式では級数解が多項式になるという条件を課していましたが、級数解が多項式ではなく無限級数となることを許すと、エルミートの微分方程式の解としてエルミート多項式以外の解を構築することができます。 この解となる級数第2種エルミート関数 (Hermite function of the second kind) と言います。  { n } が偶数・奇数の場合に分けてこの解を見ていきましょう。

n が偶数の場合
展開係数  { h_m^{(n)} } { m } が偶数のものを0とし(これはエルミート多項式となる)、奇数のもののみをとって  { n = 2p,\,m = 2\ell+1 } とすると

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{2\ell+1}^{(2p)}
    &= -2(2p-2\ell+1) h_{2\ell-1}^{(2p)} \\
    &= (-2)^2 (2p-2\ell+1)(2p-2\ell+3) h_{2\ell-3}^{(2p)} \\
    & \qquad \vdots \\
    &= (-2)^\ell h_1^{(2p)}\prod_{j=0}^{\ell-1} (2p-2j-1)
\end{align*}}

この結果は二重階乗を使って書くと

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{2\ell+1}^{(2p)}
    &= \begin{cases}
        (-2)^\ell \frac{(2p-1)!!}{(2p-2\ell-1)!!} \; h_1^{(2p)} & (2\ell+1 < 2p) \\
        (-1)^{p-1} 2^\ell (2p-1)!!(2\ell-2p+1)!! h_1^{(2p)} & (2\ell+1 > 2p)
      \end{cases}
\end{align*}}

となりますが、 { 2p } { 2\ell+1 } (つまり  { n } { m })の大小関係で場合分けしないといけないので、この式を使って級数解を書き下すのはちょっと面倒です。 ここでは場合分けをしていない積の表式を使って、級数解を合流型超幾何関数で表すことにします。 求める級数解を  { h_{2p}(z) } とすると

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{2p}(z)
    &= \sum_{\ell=0}^\infty \frac{h_{2\ell+1}^{(2p)}}{(2\ell+1)!}z^{2\ell+1} \\
    &=  h_1^{(2p)}\sum_{\ell=0}^\infty \frac{\displaystyle (-2)^\ell \prod_{j=0}^{\ell-1} (2p-2j-1)}{(2\ell+1)!!}
      \frac{z^{2\ell+1}}{(2\ell)!!} \\
    &=  h_1^{(2p)}z\sum_{\ell=0}^\infty \left(\prod_{j=0}^{\ell-1} \frac{- p + \frac{1}{2} + j}{\frac{3}{2} + j}\right)
      \frac{z^{2\ell}}{\ell!} \\
    &= h_1^{(2p)} z \; F(-p+\tfrac{1}{2},\,\tfrac{3}{2};\,z^2)
\end{align*}}

全体にかかる定数を  { h_1^{(2p)} = (-)^p \frac{(2p)!}{p!} } ととって(これは慣習と一致しているかどうか分からないので使う場合はご注意を)

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{2p}(z) &=  (-)^p \frac{(2p)!}{p!} z \; F(-p+\tfrac{1}{2},\,\tfrac{3}{2};\,z^2)
\end{align*}}

となります。

n が奇数の場合
 { n } が奇数の場合も偶数の場合と同じように計算していきましょう。 展開係数  { h_m^{(n)} } { m } が偶数のもののみをとって、 { n = 2p+1,\,m = 2\ell } とすると

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{2\ell}^{(2p+1)}
    &= -2(2p-2\ell+2) h_{2\ell-2}^{(2p+1)} \\
    &= (-2)^2 (2p-2\ell+3)(2p-2\ell+5) h_{2\ell-4}^{(2p+1)} \\
    & \qquad \vdots \\
    &= (-2)^\ell h_0^{(2p)}\prod_{j=0}^{\ell-1} (2p-2j+1) \\
    &\left(
      = \begin{cases}
        (-2)^\ell \frac{(2p+1)!!}{(2p-2\ell+1)!!} \; h_0^{(2p+1)} & (2\ell < 2p+1) \\
        (-1)^{p+1} 2^\ell (2p+1)!!(2\ell-2p-1)!! h_0^{(2p+1)} & (2\ell > 2p+1)
      \end{cases}
   \right)
\end{align*}}

となります。 よって級数解を  { h_{2p+1}(z) } として

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{2p+1}(z)
    &= \sum_{\ell=0}^\infty \frac{h_{2\ell}^{(2p+1)}}{(2\ell)!}z^{2\ell} \\
    &=  h_0^{(2p+1)} \sum_{\ell=0}^\infty \frac{\displaystyle (-2)^\ell \prod_{j=0}^{\ell-1} (2p-2j+1)}{(2\ell-1)!!} 
      \frac{z^{2\ell}}{(2\ell)!!} \\
    &=  h_0^{(2p+1)} \sum_{\ell=0}^\infty \left(\prod_{j=0}^{\ell-1} \frac{- p - \frac{1}{2} + j}{\frac{1}{2} + j}\right)
      \frac{z^{2\ell}}{\ell!} \\
    &= h_1^{(2p+1)}\;F(- p - \tfrac{1}{2},\,\tfrac{1}{2};\,x^2)
\end{align*}}

全体にかかる定数を  { h_1^{(2p+1)} = (-)^p \frac{(2p+1)!!}{p!} } ととって(慣習と一致していないかも?)

  { \displaystyle\begin{align*}
  h_{2p}(z) &= (-)^p \frac{(2p+1)!!}{p!} F(-p - \tfrac{1}{2},\,\tfrac{1}{2};\,z^2)
\end{align*}}

となります。

まとめ
以上の結果をまとめると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    h_{2p}(z)
      &= (-)^p \frac{(2p)!}{p!} z \; F(-p+\tfrac{1}{2},\,\tfrac{3}{2};\,z^2) \\[2mm]
    h_{2p+1}(z)
      &= (-)^p \frac{(2p+1)!!}{p!} F(-p - \tfrac{1}{2},\,\tfrac{1}{2};\,z^2)
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。 これらを第2種エルミート関数と呼びます。 ここでとった全体にかかる定数は、慣習と一致していないかもしれないので使う際はご注意を。

さて、これで大体エルミートの微分方程式に関連する話はいいでしょう。 これで1次元での量子力学調和振動子はひとまず終了。 次は次元を上げて中心力ポテンシャルの系を解いていく予定。エルミートの微分方程式

【修正】

  • 級数解の係数の表記を変更しました:  { h_n^{(m)} \rightarrow h_m^{(n)} }
  • エルミートの微分方程式の正確な定義について【補足】しました。
  • 第2種エルミート関数の箇所を追記しました

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

*1:この定数は規格化条件やエルミート多項式の漸化式などから導けなくもないですが、結局は慣習と変わらないので、ここでは天下り的に与えることにします。

シュレディンガー方程式を解こう ~調和振動子~

シュレディンガー方程式を解こうシリーズ(目次)。 今回は調和振動子

調和振動子シュレディンガー方程式は生成・消滅演算子による定式化の知識を使わずに解くこともできますが、固有関数の規格化や直交性を示そうと思うと結局この定式化と同じようなことをやらないといけないので、ある程度生成・消滅演算子の知識があることを前提に解いていきます。 生成・消滅演算子の簡単な導入は「量子力学的調和振動子と生成・消滅演算子」参照。

参考

調和振動子のポテンシャル

調和振動子のポテンシャルは以下で表されます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  V(x) = \frac{1}{2}kx^2
\end{align*}}

 { k } は(ばね)定数。 時間に依存しないシュレディンガー方程式

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2} + \frac{1}{2}kx^2\right)\psi(x) = E\psi(x)
\end{align*}}

となります。

方程式を書き換える

シュレディンガー方程式の両辺に  { \frac{m}{\hbar^2} } を書けて

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{1}{2}\left(\frac{d^2}{dx^2} - \frac{km}{\hbar^2}x^2\right)\psi(x) = \frac{mE}{\hbar^2}\psi(x)
\end{align*}}

ここで  { \lambda = \frac{\sqrt{km}}{\hbar} } とおくと

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{1}{2}\left(\frac{d^2}{dx^2} - \lambda^2x^2\right)\psi(x) = \frac{mE}{\hbar^2}\psi(x) \\
  -\frac{1}{2}\left(\frac{1}{\lambda}\frac{d^2}{dx^2} - \lambda x^2\right)\psi(x)
    = \frac{mE}{\hbar^2\lambda}\psi(x)
\end{align*}}

さらに

  { \displaystyle\begin{align*}
  z &= \sqrt{\lambda}\;x, &
  \varepsilon &= \frac{mE}{\hbar^2\lambda} = \frac{E}{\hbar}\sqrt{\frac{m}{k}}, &
  \Psi(z) &= \tfrac{1}{\sqrt[4]{\lambda}}\psi(x) = \tfrac{1}{\sqrt[4]{\lambda}}\psi(\tfrac{z}{\sqrt{\lambda}})
\end{align*}}

とおくと( { \psi(x) } の前の定数は  { \int|\Psi(z)|^2dz = \int|\psi(x)|^2dx = 1 } からくる規格化定数)、シュレディンガー方程式

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{1}{2}\left(\frac{d^2}{dz^2} - z^2\right)\Psi(z) = \varepsilon\Psi(z)
\end{align*}}

となります。 以降、これをシュレディンガー方程式として扱います。  { \varepsilon }古典力学調和振動子に出てくる角振動数  { \omega = \sqrt{\frac{k}{m}} } を使って表すと  { \varepsilon = \frac{E}{\hbar\omega} } となり、エネルギーを  { \hbar\omega } 単位で測った量になります。

シュレディンガー方程式を解く

生成・消滅演算子
座標表示での生成・消滅演算子

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^\dagger &= \frac{1}{\sqrt{2}}\left(z - \frac{d}{dz}\right) \\
  a \,&= \frac{1}{\sqrt{2}}\left(z + \frac{d}{dz}\right)
\end{align*}}

となります。

基底状態
座標表示の基底状態 { \Psi_0(z) = \langle z|0\rangle } とおくと、基底状態は消滅演算子によって消されるので

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{1}{\sqrt{2}}\left(z + \frac{d}{dz}\right)\Psi_0(z) = 0
\end{align*}}

この微分方程式を解くと( { A }積分定数として)

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{d\Psi_0}{\Psi_0} &= -zdz \\
  \therefore \, \Psi_0(z) &= Ae^{-\frac{1}{2}z^2}
\end{align*}}

となります。 規格化条件から  { A } を求めると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int_{-\infty}^\infty |\Psi_0(z)|^2 dz
    &= |A|^2 \int_{-\infty}^\infty e^{-z^2} dz \\
    &= |A|^2 \sqrt{\pi} = 1
\end{align*}}

より  { A = \frac{1}{\sqrt[4]{\pi}} } となるので、結局

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Psi_0(z) &= \frac{1}{\sqrt[4]{\pi}} \; e^{-\frac{1}{2}z^2}
\end{align*}}

を得ます。 エネルギー固有値 { \varepsilon = \frac{1}{2} } です。

一般のエネルギー固有状態
一般的にエネルギー  { \varepsilon = n + \frac{1}{2} } に属するエネルギー固有状態  { |n\rangle }

  { \displaystyle\begin{align*}
  |n\rangle = \frac{1}{\sqrt{n!}}\left(a^\dagger\right)^n|0\rangle
\end{align*}}

で与えられますが、この状態の座標表示を  { \Psi_n(z) = \langle z|n\rangle } とおくと

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Psi_n(z)
    &= \frac{1}{\sqrt{n!}}\left\{\frac{1}{\sqrt{2}}\left(z - \frac{d}{dz}\right)\right\}^n \Psi_0(z) \\
    &= \frac{1}{\left(\sqrt{\pi}\;2^n n!\right)^{1/2}}\left(z - \frac{d}{dz}\right)^n e^{-\frac{1}{2}z^2}
\end{align*}}

となります。 小さい  { n } について具体的に微分を実行すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Psi_0(z) &= \tfrac{1}{\left(\sqrt{\pi}\right)^{1/2}}\;e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
  \Psi_1(z) &= \tfrac{1}{\left(2\sqrt{\pi}\right)^{1/2}}\cdot 2z\;e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
  \Psi_2(z) &= \tfrac{1}{2\left(2\sqrt{\pi}\right)^{1/2}}\cdot(4z^2-2)\;e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
  \Psi_3(z) &= \tfrac{1}{4\left(3\sqrt{\pi}\right)^{1/2}}\cdot(8z^3-12z)\;e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
  \Psi_4(z) &= \tfrac{1}{8\left(6\sqrt{\pi}\right)^{1/2}}\cdot(16z^4-48z^2+12)\;e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
  \Psi_5(z) &= \tfrac{1}{16\left(15\sqrt{\pi}\right)^{1/2}}\cdot(32z^5-160z^3+120z)\;e^{-\frac{1}{2}z^2}
\end{align*}}

を得ます。 規格化定数と  { z }多項式の部分は約分できるものもありますが、後のために分けてあります。

エルミート多項式
 { \Psi_n(z) } { e^{-\frac{1}{2}z^2} }微分を含む演算子を作用させて得られる関数ですが、結果に  { e^{-\frac{1}{2}z^2} } という因子が残るのは明らかなので、この因子と規格化定数を除いた  { z } に関する多項式の部分を  { H_n(z) } とおきましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \Psi_n(z) &= \frac{1}{\left(\sqrt{\pi}\;2^n n!\right)^{1/2}} H_n(z)\; e^{-\frac{1}{2}z^2}
\end{align*}}

この  { H_n(z) }エルミート多項式 (Hermite polynomials) と呼ばれるものになっています。 以下でいくつかその性質を見ていきます。 具体的な形は上記の  { \Psi_n(z) } の具体的な形を書き下した箇所の  { z }多項式の部分です。

漸化式
状態  { |n\rangle } に生成・消滅演算子を作用させると

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^\dagger|n\rangle &= \sqrt{n+1}|n+1\rangle \\
  a|n\rangle \, &= \sqrt{n}|n-1\rangle
\end{align*}}

となるのでした。 座標表示でこれを実行すると、 { H_n(z) } { z } に関する漸化式が得られます。

まずは生成演算子を作用させた場合:

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^\dagger\Psi_n(z)
    &= \tfrac{1}{\left(2^n n! \sqrt{\pi}\right)^{1/2}\sqrt{2}}
      \left(z - \frac{d}{dz}\right)\left(H_n(z)\;e^{-\frac{1}{2}z^2}\right) \\
    &= \tfrac{\sqrt{n+1}}{\left(2^{n+1} (n+1)! \sqrt{\pi}\right)^{1/2}}
      \left(zH_n - \frac{dH_n}{dz} + zH_n\right)e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
    &= \tfrac{\sqrt{n+1}}{\left(2^{n+1} (n+1)! \sqrt{\pi}\right)^{1/2}}
      \left\{\left(2z - \frac{d}{dz}\right)H_n(z)\right\}e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
\end{align*}}

これが  { \sqrt{n+1}\Psi_{n+1}(z) } となるので

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(2z - \frac{d}{dz}\right)H_n(z) = H_{n+1}(z)
\end{align*}}

を得ます。 生成演算子の座標表示と違って  { z } の前に係数2が付くことに注意。

同様にして消滅演算子を作用させた場合:

  { \displaystyle\begin{align*}
  a\Psi_n(z)
    &= \tfrac{1}{\left(2^n n! \sqrt{\pi}\right)^{1/2}\sqrt{2}}
      \left(z + \frac{d}{dz}\right)\left(H_n(z)\;e^{-\frac{1}{2}z^2}\right) \\
    &= \tfrac{1}{2\sqrt{n}\left(2^{n-1} (n-1)! \sqrt{\pi}\right)^{1/2}}
      \left(zH_n + \frac{dH_n}{dz} - zH_n\right)e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
    &= \tfrac{\sqrt{n}}{2n\left(2^{n-1} (n-1)! \sqrt{\pi}\right)^{1/2}}
      \frac{dH_n}{dz}\;e^{-\frac{1}{2}z^2} \\
\end{align*}}

これが  { \sqrt{n}\Psi_{n-1}(z) } となるので

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{d}{dz}H_n(z) = 2nH_{n-1}(z)
\end{align*}}

数学的な定義
任意の関数  { f(z) } に対して

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(2z - \frac{d}{dz}\right)f(z) = -e^{z^2}\frac{d}{dz}\left(e^{-z^2}f(z)\right)
\end{align*}}

が成り立つので、 { f(z) } に作用させている演算子 { n } 回作用させて

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(2z - \frac{d}{dz}\right)^nf(z)
    &= \left\{-e^{z^2}\frac{d}{dz}e^{-z^2}\right\}^n f(z) \\
    &= (-)^n e^{z^2}\frac{d^n}{dz^n}\left(e^{-z^2}f(z)\right)
\end{align*}}

となります。 したがって、上記で導いた  { H_n(z) } が満たす漸化式  { \left(2z - \frac{d}{dz}\right)H_n(z) = H_{n+1}(z) } より

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_n(z)
    &= \left(2z - \frac{d}{dz}\right)^nH_0(z) \\
    &= (-)^n e^{z^2}\frac{d^n}{dz^n}e^{-z^2} \qquad\left(\because H_0(z) = 1\right) \\
\end{align*}}

となります。 実際には、こちらがエルミート多項式の定義となります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_n(z) = (-1)^ne^{z^2}\frac{d^n}{dz^n}e^{-z^2}
\end{align*}}

直交性
 { |n\rangle } { n } の値が異なると直交する( { \langle m|n\rangle = \delta_{mn} })ので、エルミート多項式は以下の直交条件を満たします:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int_{-\infty}^\infty H_m(z)H_n(z)e^{-z^2}dz = \sqrt{\pi}\; 2^n n! \delta_{mn}
\end{align*}}

右辺のクロネッカーデルタの前の係数は、固有関数  { \Psi_n(z) } にある規格化定数の自乗です。

大体これくらいでエルミート多項式の性質はいいでしょう。

解を元の変数で表す

 { \omega = \sqrt{\frac{k}{m}} } として、エネルギー固有値

  { \displaystyle\begin{align*}
  E = \left(n+\dfrac{1}{2}\right)\hbar\omega
\end{align*}}

に属する波動関数  { \psi_n(x) }

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_n(x)
    &= \frac{1}{\sqrt{2^n n!}}\left(\frac{\lambda}{\pi}\right)^{\frac{1}{4}}
    H_n(\sqrt{\lambda}x)\; e^{-\frac{1}{2}\lambda x^2}
\end{align*}}

で与えられます。 ただし  { \lambda = \frac{\sqrt{km}}{\hbar} } です。 小さい  { n } について具体的に書き下すと以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_0(z) &= \left(\tfrac{\lambda}{\pi}\right)^{\frac{1}{4}}\;e^{-\frac{1}{2}\lambda x^2} \\
  \psi_1(z) &= \tfrac{1}{\sqrt{2}}\left(\tfrac{\lambda}{\pi}\right)^{\frac{1}{4}}\cdot
    2\sqrt{\lambda} x\;e^{-\frac{1}{2}\lambda x^2} \\
  \psi_2(z) &= \tfrac{1}{2\sqrt{2}}\left(\tfrac{\lambda}{\pi}\right)^{\frac{1}{4}}\cdot
    (4\lambda x^2-2)\;e^{-\frac{1}{2}\lambda x^2} \\
  \psi_3(z) &= \tfrac{1}{4\sqrt{3}}\left(\tfrac{\lambda}{\pi}\right)^{\frac{1}{4}}\cdot
    \sqrt{\lambda}(8\lambda x^3-12x)\;e^{-\frac{1}{2}\lambda x^2} \\
  \psi_4(z) &= \tfrac{1}{8\sqrt{6}}\left(\tfrac{\lambda}{\pi}\right)^{\frac{1}{4}}\cdot
    (16\lambda^2 x^4-48\lambda z^2+12)\;
    e^{-\frac{1}{2}\lambda x^2} \\
  \psi_5(z) &= \tfrac{1}{16\sqrt{15}}\left(\tfrac{\lambda}{\pi}\right)^{\frac{1}{4}}\cdot
    \sqrt{\lambda}(32\lambda^2 x^5-160\lambda x^3+120x)\;e^{-\frac{1}{2}\lambda x^2} \\
\end{align*}}

となります。

今回はやりませんでしたが、シュレディンガー方程式 { \Psi(z) = H(z)e^{-\frac{1}{2}z^2} } の形の解を仮定して  { H(z) } の満たす微分方程式(エルミートの微分方程式)を導き、その級数解を求めるという方法もよくされます。 こちらの記事でやってみたのでご興味があればどうぞ。

【追記】

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)