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倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

シュレディンガー方程式を解こう ~井戸型ポテンシャルによる束縛状態~

量子力学 1次元 1粒子系

シュレディンガー方程式を解こうシリーズ(目次)。 今回は1次元で井戸型ポテンシャルによって束縛状態になっている系を解いてきます。

時間に依存しないシュレディンガー方程式

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2} + V(x)\right)\psi(x) = E\psi(x)
\end{align*}}

でした。

参考

井戸型ポテンシャル

今回扱うポテンシャル  { V(x) } は、幅  { L }、高さ  { V } の井戸型のポテンシャルです:

  { \displaystyle\begin{align*}
  V(x) =
    \begin{cases}
      0 & (0 < x < L ) \\[2mm]
      V & (x \leqq 0,\,L \leqq x)
    \end{cases}
\end{align*}}

ポテンシャルは底を基準にして測っています。

f:id:waman:20170325112151p:plain

シュレディンガー方程式を解く

今回は束縛状態のみを考えるので、系のエネルギー  { E } はポテンシャルの高さ  { V } より小さいとします:

  { \displaystyle\begin{align*}
  0 < E < V
\end{align*}}

領域 I, II, III を上図のように分け、まずはそれぞれの部分でシュレディンガー方程式を解いていきます。

領域 I ( { x \leqq 0 })
領域 I ではポテンシャルは定数  { V } です。 この領域での波動関数 { \psi_1(x) } とします。 まず、解として  { \psi_1(x) = e^{\kappa_1 x} } の形の特解を求めましょう。 これをシュレディンガー方程式に代入して

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(-\frac{\hbar^2\kappa_1^2}{2m} + V\right) e^{\kappa_1 x} &= Ee^{\kappa_1 x} \\
  \therefore \, \kappa_1 &= \pm\tfrac{\sqrt{2m(V-E)}}{\hbar}
\end{align*}}

を得ます。 以降、少々式を書くのが面倒なので  { \kappa = \frac{\sqrt{2m(V-E)}}{\hbar} } とおきます。 一般解は特解の線形結合で表されるのでした:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_1(x) = A_1 e^{\kappa x} + B_1 e^{-\kappa x}
\end{align*}}

境界条件として  { x \rightarrow -\infty }波動関数が0となることを課すと、 { B_1 = 0 } となります。 よって、領域 I での波動関数

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_1(x) = A_1 e^{\kappa x} \qquad \left(\kappa = \tfrac{\sqrt{2m(V-E)}}{\hbar}\right)
\end{align*}}

となります。 定数  { A_1 } は、後ほど領域 II との接続条件から決めます。

領域 II ( { 0 < x < L })
領域 II ではポテンシャルは0です。 この領域での波動関数 { \psi_2(x) } とします。 領域 I の場合と同様にして、解として  { \psi_2(x) = e^{k_2 x} } の形の特解を求めましょう。 これをシュレディンガー方程式に代入して

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{\hbar^2 k_2^2}{2m} e^{\kappa_1 x} &= Ee^{k_2 x} \\
  \therefore \, k_2 &= \pm i\tfrac{\sqrt{2mE}}{\hbar}
\end{align*}}

を得ます。  { k = \frac{\sqrt{2mE}}{\hbar} } とおくと、領域 II での一般解は以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_2(x) = A_2 e^{ikx} + B_2 e^{-ikx}
\end{align*}}

領域 III ( { x \geqq L })
領域 III では領域 I と同じくポテンシャルは定数  { V } です。 この領域での波動関数 { \psi_3(x) } として、 { \psi_3(x) = e^{\kappa_3 x} } の形の特解を求めると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(-\frac{\hbar^2\kappa_1^2}{2m} + V\right) e^{\kappa_3 x} &= Ee^{\kappa_3 x} \\
  \therefore \, \kappa_3 &= \pm \kappa \qquad \left(\kappa = \tfrac{\sqrt{2m(V-E)}}{\hbar}\right)
\end{align*}}

となります。  { \kappa } は領域 I で定義したものと同じです。 領域 III での一般解は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_3(x) = A_3 e^{\kappa x} + B_3 e^{-\kappa x}
\end{align*}}

となります。 境界条件として  { x \rightarrow \infty }波動関数が0となることを課すと、 { A_3 = 0 } となります。 よって、領域 III での波動関数

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_3(x) = B_3e^{-\kappa x} \qquad \left(\kappa = \frac{\sqrt{2m(V-E)}}{\hbar}\right)
\end{align*}}

となります。

接続条件を課す前の結果まとめ
上記の結果をまとめると、3つの領域での波動関数は以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi(x) =
    \begin{cases}
      A_1 e^{\kappa x} & (x \leqq 0) \\
      A_2 e^{ik x} + B_2 e^{-ikx} & (0 < x < L) \\
      B_3 e^{-\kappa x} & (x \geqq L)
    \end{cases}
\end{align*}}

無限に高い井戸型ポテンシャルの場合

井戸の高さが有限の場合、接続条件を課すのが意外と大変なので、まずは簡単で有用な無限に高い井戸型ポテンシャルの場合をやっておきます。

領域 I, III での波動関数
 { V \rightarrow \infty } の場合  { \kappa \rightarrow \infty } となるので、波動関数が発散しないためには  { A_1 = B_3 = 0 } でなければなりません。 つまり

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_1(x) = \psi_3(x) = 0
\end{align*}}

となります。

領域 II での波動関数とエネルギーの量子化
領域間で波動関数が連続であることを接続条件(境界条件)として課すと、領域 II の波動関数  { \psi(x) = A_2 e^{ik x} + B_2 e^{-ikx} } より

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    A_2 + B_2 = 0 \\
    A_2 e^{ikL} + B_2 e^{-ikL} = 0
  \end{cases}
\end{align*}}

これが自明でない解( { A_2 = B_2 = 0 } でない解)を持つためには*1

  { \displaystyle\begin{align*}
  e^{ikL} - e^{-ikL} &= 0 \\
  e^{2ikL} &= 1 \\
  \therefore \, k &= \frac{n\pi}{L}\qquad\left(n = 1,\,2,\,3,\,\cdots\right)
\end{align*}}

となっていなければなりません。  { k = \frac{\sqrt{2mE}}{\hbar} } だったので、このときのエネルギーは

  { \displaystyle\begin{align*}
  E &= \frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{n\pi}{L}\right)^2 \\
     &= \frac{\hbar\pi^2}{2mL^2}n^2 \qquad(n = 1,\,2,\,3,\,\cdots)
\end{align*}}

のように飛び飛びの値しかとれなくなります。 つまり、エネルギーが量子化されます。

領域 II の波動関数
上記の  { k } に対する条件が満たされているとき、領域 II の波動関数に対する2つの接続条件は同じ条件となり、 { A_2 + B_2 = 0 } となります。 よって領域 II での波動関数

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_2(x)
    &= A_2 e^{ikx} - A_2e^{-ikx} \\
    &= 2iA_2 \sin kx \\
    &= 2iA_2 \sin \frac{n\pi}{L}x
\end{align*}}

 { A_2 }波動関数の規格化条件  { \int \left|\psi(x)\right|^2dx = 1 } から決められて

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_2(x) = \sqrt{\frac{2}{L}}\;\sin\frac{n\pi}{L}x 
\end{align*}}

を得ます。

まとめ
無限に高い井戸型ポテンシャルの場合の波動関数とエネルギー準位をまとめておくと

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi(x) &=
    \begin{cases}
      \sqrt{\dfrac{2}{L}}\;\sin\dfrac{n\pi}{L}x  & (0 < x < L) \\[2mm]
      0 & (x \leqq 0,\,L \leqq x)
    \end{cases} \\[2mm]
  E_n &= \frac{\hbar\pi^2}{2mL^2}n^2 \qquad(n = 1,\,2,\,3,\,\cdots)
\end{align*}}

となります。

有限の高さの井戸型ポテンシャルの場合

無限に高い井戸型ポテンシャルの場合と同様にして、有限の高さの井戸型ポテンシャルの場合にも接続条件を課して波動関数を求めてみましょう。 この場合もエネルギーが量子化されますが、エネルギーの具体的な表式を初等関数で表すことはできません。

接続条件とエネルギーの量子化
領域 I, II, III の境界  { x = 0,\,L }波動関数とその座標微分が連続であることを接続条件(境界条件)として課しましょう。

  •  { x = 0 } での接続条件より

  { \displaystyle\begin{align*}
  A_1 &= A_2 + B_2 \qquad\cdots(1) \\
  \kappa A_1 &= ik(A_2 - B_2) \qquad\cdots(2)
\end{align*}}

  •  { x = L } での接続条件より

  { \displaystyle\begin{align*}
  A_2e^{ikL} + B_2e^{-ikL} &= B_3e^{-\kappa L} \qquad\cdots(3) \\
  ik(A_2e^{ikL} - B_2e^{-ikL}) &= -\kappa B_3e^{-\kappa L} \qquad\cdots(4)
\end{align*}}

 { A_1,\,A_2,\,B_2,\,B_3 } を変数として、これら4つの式を解いてみましょう。 (1), (2) 式より  { A_1 } を消去して

  { \displaystyle\begin{align*}
  &\kappa(A_2 + B_2) = ik(A_2 - B_2) \\
  \therefore \, &(\kappa-ik)A_2 + (\kappa+ik)B_2 = 0 \qquad\cdots (5)
\end{align*}}

また (3), (4) 式より  { B_3 } を消去して

  { \displaystyle\begin{align*}
  &ik(A_2e^{ikL} - B_2e^{-ikL}) = -\kappa( A_2e^{ikL} + B_2e^{-ikL}) \\
  \therefore \,& (\kappa + ik)A_2e^{ikL} + (\kappa - ik)B_2e^{-ikL} = 0 \qquad\cdots (6)
\end{align*}}

(5), (6) 式が自明でない解を持つためには、

  { \displaystyle\begin{align*}
  (\kappa + ik)^2 e^{ikL} &- (\kappa - ik)^2e^{-ikL} = 0 \\
  (\kappa + ik) e^{ikL} & = \pm (\kappa - ik) \\
  \kappa
    &= -ik\frac{e^{ikL}+1}{e^{ikL}-1},\,-ik\frac{e^{ikL}-1}{e^{ikL}+1} \\
    &= -k\cot \frac{kL}{2},\,k\tan\frac{kL}{2}
\end{align*}}

ここで  { -\cot(\theta+\frac{\pi}{2}) = \tan\theta } なので、 { \varphi = 0,\,\frac{\pi}{2} } として、上記の条件はまとめて書くことができます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  &\kappa = -k\cot\left(\frac{kL}{2}+\varphi\right) \\
  \therefore \, &\tan\left(\frac{kL}{2}+\varphi\right) = -\frac{k}{\kappa}
\end{align*}}

ここで  { k = \frac{\sqrt{2mE}}{\hbar},\,\kappa = \frac{\sqrt{2m(V-E)}}{\hbar} } だったので、これは  { E } の方程式となり、その解のみがエネルギーとしてとりうる値となります。 つまりエネルギーが量子化されます。 この方程式は解析的に解けないので、とりうるエネルギーの値を具体的に求められませんが、グラフを用いたり数値計算をしたりすれば数値的に求めることはできます。

 { V \rightarrow \infty } の極限
定義より  { \frac{k}{\kappa} = \sqrt{\frac{E}{V-E}} } なので、 { V \rightarrow \infty } の極限で上記の量子化条件は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \tan\left(\frac{kL}{2}+\varphi\right) = 0
\end{align*}}

となります。 これは簡単に解けて

  { \displaystyle\begin{align*}
  k = \frac{n\pi}{L} \qquad (n = 1,\,2,\,3,\cdots)
\end{align*}}

となり、無限に高い井戸型ポテンシャルの場合と同じ量子化条件が得られます。

波動関数
エネルギーが量子化されることが分かったので、別にもういい気もしますが、一応波動関数も求めておきましょう。

量子化条件が満たされているとき接続条件の (5), (6) 式は同じ条件式となるので、4つの変数  { A_1,\,A_2,\,B_2,\,B_3 } で条件式が3つとなって、変数1つだけを残して他が決まります。 ここでは  { A_1,\,B_2,\,B_3 } { A_2 } で表すことにし、 { A_2 } を含む定数を改めて  { \mathcal{N} } と定義し直すと以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  psi(x) =
    \begin{cases}
      \mathcal{N}ke^{\kappa x} & (x \leqq 0) \\[2mm]
      \mathcal{N}(\kappa\sin kx + k\cos kx) & (0 < x < L) \\[2mm]
      \mathcal{N}(\kappa\sin kL + k\cos kL)e^{-\kappa (x-L)} & (x \geqq L)
    \end{cases}
\end{align*}}

後は規格化条件から  { \mathcal{N} } を決めれば波動関数が求まりますが、結構複雑な式になるのでここで止めます。

補足
ここでは接続条件を「波動関数とその微分が境界で連続」としましたが、各境界で2つずつ条件式が出てくるのと、接続条件からは規格化定数(上記の  { \mathcal{N} })が決まらないことは分かっていることから、この接続条件の代わりに「対数微分の値が境界で等しい」という条件を課す方が簡単になります。 波動関数の対数微分

  { \displaystyle\begin{align*}
  \tfrac{\partial}{\partial x} \ln \psi(x) = \frac{\frac{\partial \psi(x)}{\partial x}}{\psi(x)}
\end{align*}}

となって、今の接続条件が満たされれば波動関数とその微分が等しく(まぁ比が等しいことしか言えませんが)、かつ規格化定数が分母分子で打ち消し合って接続条件に寄与しないことがわかります。

この接続条件は、今の井戸型ポテンシャルの場合には

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    \left.\frac{\partial}{\partial x} \ln \psi_1(x)\right|_{x = 0}
      = \left.\frac{\partial}{\partial x} \ln \psi_2(x)\right|_{x = 0} \\[2mm]
    \left.\frac{\partial}{\partial x} \ln \psi_2(x)\right|_{x = L}
      = \left.\frac{\partial}{\partial x} \ln \psi_3(x)\right|_{x = L}
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。

では実際に接続条件を計算してみましょう。 まずは各領域の波動関数に対して対数微分を計算してみると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \tfrac{\partial}{\partial x}\ln \psi_1(x) &= \kappa \\
  \tfrac{\partial}{\partial x}\ln \psi_2(x) &= ik \frac{A_2 e^{ikx} - B_2 e^{-ikx}}{A_2 e^{ikx} + B_2 e^{-ikx}} \\
  \tfrac{\partial}{\partial x}\ln \psi_3(x) &= -\kappa
\end{align*}}

となるので(領域 I, III では非常に簡単になりますね!)、接続条件は以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \kappa &= ik \frac{A_2 - B_2}{A_2 + B_2} \\
  -\kappa &= ik \frac{A_2e^{ikL} - B_2e^{-ikL}}{A_2e^{ikL} + B_2e^{-ikL}} \\
\end{align*}}

これは (5), (6) 式と同じ式になっています。 領域 I, III の波動関数に表れる { A_1, B_2 } は実質的に規格化条件から求まるので、今の場合の接続条件には出てきません。

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

*1:もしくは、 { B_2 } を消去した後で、 { A_2 } が0でないためには

シュレディンガー方程式を解こう ~目次~

量子力学 目次

学部でやるような量子系のシュレディンガー方程式を解いていくシリーズの目次。

ハミルトニアン { \hat{\mathcal{H}} }状態ベクトル { |\psi(t)\rangle } とすると、時間に依存するシュレディンガー方程式 (Schrödinger equation) は

  { \displaystyle\begin{align*}
  i\hbar\frac{\partial}{\partial t}|\psi(t)\rangle = \hat{\mathcal{H}}|\psi(t)\rangle
\end{align*}}

で与えられるのでした。 このシリーズ記事では、基本的にハミルトニアンは以下の形のものしか扱いません:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \hat{\mathcal{H}}(\hat{\textbf{x}},\,\hat{\textbf{p}})
    =\dfrac{\hat{\textbf{p}}^2}{2m} + V(\hat{\textbf{x}})
\end{align*}}

ただし、 { \hat{\textbf{x}},\,\hat{\textbf{p}} } はそれぞれ座標と運動量の演算子です(空間の次元を指定していないのでベクトルで書いています)。

シリーズ目次

準備

今回は具体的な系についてシュレディンガー方程式を解きはしませんが、シュレディンガー方程式を書き換えたり、一般的に解ける部分を解いておいたりします。 学部生に分かるレベルにしてるので、途中の変形式がちょっと助長に感じるかも知れません。

座標表示
上記のシュレディンガー方程式に左から  { \langle\textbf{x}| } を作用させて、波動関数の座標表示  { \psi(\textbf{x},\,t) = \langle\textbf{x}|\psi(t)\rangle } を用いると、左辺は

  { \displaystyle\begin{align*}
  i\hbar \frac{\partial}{\partial t}\psi(\textbf{x},\,t)
\end{align*}}

となり、右辺は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \langle\textbf{x}|\hat{\mathcal{H}}(\hat{\textbf{x}},\,\hat{\textbf{p}})|\psi(t)\rangle
    &= \int d\textbf{x}' \langle\textbf{x}|\hat{\mathcal{H}}(\hat{\textbf{x}},\,\hat{\textbf{p}})|\textbf{x}'\rangle
      \langle\textbf{x}'|\psi(t)\rangle \qquad\left(\because \int d\textbf{x}'|\textbf{x}'\rangle\langle\textbf{x}'| = 1\right)\\
    &= \int d\textbf{x}' \hat{\mathcal{H}}(\textbf{x}',\,
      -i\hbar\tfrac{\partial}{\partial \textbf{x}'})\langle\textbf{x}|\textbf{x}'\rangle \psi(\textbf{x}',\,t) \\
    &= \int d\textbf{x}' \hat{\mathcal{H}}(\textbf{x}',\,
      -i\hbar\tfrac{\partial}{\partial \textbf{x}'})\delta(\textbf{x}-\textbf{x}') \psi(\textbf{x}',\,t) \\
    &= \hat{\mathcal{H}}(\textbf{x},\, -i\hbar\tfrac{\partial}{\partial \textbf{x}}) \psi(\textbf{x},\,t)
\end{align*}}

よって

  { \displaystyle\begin{align*}
  i\hbar \frac{\partial}{\partial t}\psi(\textbf{x},\,t)
    = \hat{\mathcal{H}}(\textbf{x},\,-i\hbar\tfrac{\partial}{\partial \textbf{x}})\psi(\textbf{x},\,t)
\end{align*}}

となります。 ハミルトニアンを書き下すと

  { \displaystyle\begin{align*}
  \hat{\mathcal{H}}(\textbf{x},\,-i\hbar\tfrac{\partial}{\partial \textbf{x}})
    &= \frac{1}{2m}\left(-i\hbar\frac{\partial}{\partial \textbf{x}}\right)^2 + V(\textbf{x}) \\
    &= -\frac{\hbar^2}{2m}\triangle + V(\textbf{x})
\end{align*}}

ただし  { \triangle = \nabla^2 }ラプラシアンです。 以下では単に  { \hat{\mathcal{H}} } と書きます。 このとき、座標表示の時間に依存するシュレディンガー方程式

  { \displaystyle\begin{align*}
  i\hbar \frac{\partial}{\partial t}\psi(\textbf{x},\,t) = \hat{\mathcal{H}}\psi(\textbf{x},\,t)
\end{align*}}

となります。

時間と座標の変数分離
時間に依存するシュレディンガー方程式の解として

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi(\textbf{x},\,t) = \phi(t)\psi(\textbf{x})
\end{align*}}

の形のもの考えましょう。 これを座標表示の時間に依存するシュレディンガー方程式に代入すると(ハミルトニアンが時間に依存しないとして)

  { \displaystyle\begin{align*}
  &\left(i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\phi(t)\right)\psi(\textbf{x}) = \phi(t) \hat{\mathcal{H}}\psi(\textbf{x}) \\
  \therefore \, &\frac{i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\phi(t)}{\phi(t)} = \frac{\hat{\mathcal{H}}\psi(\textbf{x})}{\psi(\textbf{x})}
\end{align*}}

左辺は時間のみ、右辺は座標のみに依存するので、これらは時間、座標に依存しない定数となります。 これを  { E } とおくと、

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\phi(t) = E\phi(t) \\
    \hat{\mathcal{H}}\psi(\textbf{x}) = E \psi(\textbf{x})
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。 1つ目の時間に関する偏微分方程式は簡単に解けて(例えば『ニュートンの冷却の法則』参照)

  { \displaystyle\begin{align*}
  \phi(t) = e^{-iEt/\hbar}
\end{align*}}

となるので、2つ目の座標に関する偏微分方程式が解ければ、その解  { \psi(\textbf{x}) } を用いて、座標表示の時間に依存するシュレディンガー方程式の解は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi(\textbf{x},\,t) = e^{-iEt/\hbar}\psi(\textbf{x})
\end{align*}}

となります。 よって、問題は上記の座標に関する偏微分方程式を解くことに帰着します。 この方程式を時間に依存しないシュレディンガー方程式と呼びます。 方程式の形より、時間に依存しないシュレディンガー方程式を解くことは、ハミルトニアン固有値固有ベクトルを求めることと同義です。 ちなみに、この固有値は系のエネルギーとなり、通常たくさん出てくるエネルギー固有値は系のエネルギー準位となります。

ここでは解が時間の関数と座標の関数の単純な積であると仮定しましたが、シュレディンガー方程式が線型微分方程式なので、一般的な解はいろいろなエネルギー固有値に属する固有ベクトルの線形結合として書けます。 単に1つのエネルギー固有値の固有関数で書ける場合は定常状態に対応します。 このシリーズ記事では、だいたいこの定常状態を求めるくらいまでしかやりません。

まとめ

  { \displaystyle\begin{align*}
  i\hbar \frac{\partial}{\partial t}\psi(\textbf{x},\,t) = \hat{\mathcal{H}}\psi(\textbf{x},\,t)
\end{align*}}

  { \displaystyle\begin{align*}
  \hat{\mathcal{H}}\psi(\textbf{x}) = E \psi(\textbf{x})
\end{align*}}

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi(\textbf{x},\,t) = e^{-iEt/\hbar}\psi(\textbf{x})
\end{align*}}

  { \displaystyle\begin{align*}
   \hat{\mathcal{H}} = -\frac{\hbar^2}{2m}\triangle + V(\textbf{x})
\end{align*}}

懸垂曲線の方程式を導く

初等関数 重力

ひもの両端を持って垂らしたときにできる曲線を懸垂曲線(wikipedia:カテナリー曲線 catenary)といいますが、この曲線の方程式を導いてみます。 結果は双曲線関数の1つ  { \cosh x } を使って表されます。

高校時代にどこかで導出を読んだ覚えがあるんですが、その過程で積分方程式が出てきた気がしないので、別の導出方法(ここのものよりも簡単?)もあるかと思います。

準備

ひもの底を原点  { O } とし、水平方向に  { x } 軸、鉛直方向に  { y } 軸(上方向を正)にとります。 ひもの曲線を  { y = f(x) } とおいて関数  { f(x) } を求めます。

ひもの  { x > 0 } の部分に点  { (x,\,f(x)) } をとり、これを  { P } とします。 また、ひもの  { O } から  { P } の部分(両端を含む)を  { C } とします。

f:id:waman:20170302114623p:plain

 { f(x) } に対する微分方程式を立てる

ひもの一部  { C } に加わる力の釣り合いの式から  { f(x) } についての微分方程式を立てます。  { C } には次の3つの力が加わっています:

  •  { O } に水平方向のひもの張力  { T_0 }
  •  { P } に接線方向上向きにひもの張力  { T }
  •  { C } の重心に鉛直下向きに重力  { G }

 { T_0 } { x } に無関係な定数です。

 { T } について、 { P } における  { f(x) } の接線と  { x } 軸の正の部分とのなす角を  { \theta } とすると、 { T } { x } 成分、 { y } 成分はそれぞれ  { T\cos\theta,\,T\sin\theta } となります。 また、この角度  { \theta } { f(x) }

  { \displaystyle\begin{align*}
  f'(x) = \tan\theta
\end{align*}}

で関係しています。 ただし、 { ' } { x } 微分を表します。

 { G } { C } の長さを  { \ell }, 線密度を  { \rho }、重力加速度を  { g } として

  { \displaystyle\begin{align*}
  G = \rho \ell g
\end{align*}}

で与えられます。 ただし、 { C } の長さ  { \ell } { f(x) }

  { \displaystyle\begin{align*}
  \ell = \int_0^x \sqrt{1+\left\{f'(x)\right\}^2} \,dx
\end{align*}}

で関係しています。

以上の結果を踏まえて、鉛直・水平方向の力の釣り合いの式より

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    \textrm{鉛直方向}: & T \sin\theta = \rho \ell g \\[2mm]
    \textrm{水平方向}: & T \cos\theta = T_0
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。  { T } を消去して  { f'(x) = \tan\theta } { \ell } の式を使うと

  { \displaystyle\begin{align*}
  f'(x) &= \frac{\rho g}{T_0} \int_0^x \sqrt{1+\{f'(x)\}^2}\,dx
\end{align*}}

定数をひとまとめにして  { k = \frac{\rho g}{T_0} } とおくと、結局以下の積分方程式が得られます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  f'(x) &= k \int_0^x \sqrt{1+\{f'(x)\}^2}\,dx
\end{align*}}

これを解くために、微分方程式に書き換えておきましょう。 両辺を  { x }微分すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  f''(x) &= k \sqrt{1+\{f'(x)\}^2}
\end{align*}}

概ね「積分方程式 = 微分方程式 + 境界条件」なので境界条件も出しておきましょう。 積分方程式 { x = 0 } とおいて  { f'(0) = 0 } を得ます。 また、積分方程式からは出てきませんが( { f'(x) } しか含んでいないので)、座標系の取り方から  { f(0) = 0 }境界条件として課されます。 以上をまとめると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    {\displaystyle f''(x) = k \sqrt{1+\{f'(x)\}^2} } \\[2mm]
    f(0) = 0, \quad f'(0) = 0
  \end{cases}
\end{align*}}

微分方程式を解く

では上記の微分方程式を解いていきましょう。  { z = f'(x) } とおくと微分方程式より

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{dz}{dx} &= k\sqrt{1+z^2} \\[2mm]
  \frac{dz}{\sqrt{1+z^2}} &= k dx
\end{align*}}

となります。 両辺を積分すると、左辺は(以下の  { \theta } は上記で定義した接線に関連する角度と同じですが、単なる置換積分の変数と思って問題ありません)

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int \frac{dz}{\sqrt{1+z^2}}
    &= \int \frac{1}{\sqrt{1+\tan^2\theta}}\frac{d\theta}{\cos^2\theta} \qquad \left(z = \tan\theta\right) \\
    &= \int \frac{d\theta}{\cos\theta} \\
    &= \int \frac{d(\sin\theta)}{\cos^2\theta} \\
    &= \frac{1}{2}\int \left(\frac{1}{1-\sin\theta}+\frac{1}{1+\sin\theta}\right)d(\sin\theta) \\
    &= \frac{1}{2} \Big\{-\log(1-\sin\theta) + \log(1+\sin\theta)\Big\} \\
    &= \frac{1}{2} \log\left(\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}\right)
\end{align*}}

また、右辺は簡単に積分できて  { kx } となるので

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{1}{2} \log\left(\frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}\right) &= kx \\
  \frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta} &= e^{2kx} \\
\end{align*}}

ただし、 { f'(x) = z = \tan\theta }境界条件  { f'(x) = 0 } より、 { x = 0 } { \theta = 0 } なので、積分定数は0になります。

さて、この関係式から  { \tan\theta \,(= f'(x)) } { x } で表しましょう。 まずは  { \sin\theta } について解くと

  { \displaystyle\begin{align*}
  1 + \sin\theta &= e^{2kx} (1 - \sin\theta) \\
  (e^{2kx} + 1) \sin\theta &= e^{2kx} - 1 \\
  \sin\theta &= \frac{e^{2kx} - 1}{e^{2kx} + 1} \quad \left( = \tanh kx\right)
\end{align*}}

次に  { \tan\theta } について解くために公式  { 1+\frac{1}{\tan^2\theta} = \frac{1}{\sin^2\theta} } (この公式についてはこちらなどを参照)を使うと

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{1}{\tan^2\theta}
    &= \left(\frac{e^{2kx} + 1}{e^{2kx} - 1}\right)^2 - 1 \\
    &= \frac{\left(e^{2kx}+1\right)^2 - \left(e^{2kx}-1\right)^2}
      {\left(e^{2kx}-1\right)^2} \\
    &= \frac{4e^{2kx}}{\left(e^{2kx}-1\right)^2} \\[2mm]
  \tan\theta &= \frac{e^{2kx}-1}{2\,e^{kx}} \\
    &= \frac{e^{kx} - e^{-kx}}{2} \\
    &= \sinh kx
\end{align*}}

 { f'(x) = z = \tan\theta } だったので、結局  { f'(x) = \sinh kx }。  { f(x) } を求めるためにさらに積分すると、境界条件  { f(0) = 0 } も課して

  { \displaystyle\begin{align*}
  f(x) &= \frac{\cosh kx-1}{k}
\end{align*}}

を得ます。