もう少し三角関数の公式シリーズ(目次)。 以前の記事(『逆三角関数の定義域を実数全体に拡張する』、『逆三角関数の公式:純虚数の引数』)で実関数としての逆三角関数を少し複素数に拡張しましたが、今回は回りくどいことをせずに定義域・値域ともに複素数の逆三角関数の表式を導きます。
以下、 を複素数とします。
逆正弦関数
の関係があるとき、 より
ここで とおくと
この についての2次方程式を解くと
複号は複素関数の分岐を与えますが、逆正弦関数では通常 の方をとるので、 の表式として以下を得ます:
あるいは、少し変形して
ブランチカットは実軸の です。
逆余弦関数
逆余弦関数は、実関数の場合の逆正弦関数との関係 が複素関数の場合も成り立つとして導けます。 逆正弦関数の最後の表式から
逆正弦関数の場合と同じように少し変形した形も同じように導けて
を得ます。 ブランチカットは逆正弦関数の場合と同じく実軸の です。
【別導出】
もちろん逆余弦関数の場合も逆正弦関数の場合と同じ方法で導くこともできます。 の関係があるとき、 より
とおいて整理すると
この についての2次方程式を解くと
(根号の中を変形しているのはブランチカットを逆正弦関数と同じようにするためです)複号の の方をとって、 の表式として以下を得ます:
逆正接関数
逆正接関数は逆正弦関数の場合と同じ方法で導きましょう。 の関係があるとき
より、 とおくと
複号は の方をとって を得るので、 より
よって、 の表式として以下を得ます:
ブランチカットは虚軸の です。
その他の逆三角関数
上記で導いた以外の逆三角関数の表式は、 等の公式を使って導けます。
まとめ
【修正】
- ブランチカットの記述を追記しました。
- 逆余弦関数の箇所が間違ってたので修正しました。 また、別の形も追記しました。