前回は、微分の離散版である差分に関する公式をいくつか導きました。 今回は積分の離散版である和分についての公式をいくつか導いていましょう。 前回と同じく『数学ガール (数学ガールシリーズ 1)』に載ってる公式です。
和分の定義
まずは和分の定義。 差分演算子は で表してましたが、和分演算子は で表します。 定義は以下の通り:特に断らない限り、和分は について行い、結果は の関数になるとします。 定義に現れる についての和は0から始まり までであることに注意。 なぜこのような定義にするのかは、次節の差分演算との関係を見れば明らかだと思います。
和分と差分
和分は積分の離散版なので、微分の離散版である差分と逆の演算になっていてほしいですね。 では実際にどうなっているのかを計算してみましょう。 ちなみに差分は以下のように定義されているのでした:これを踏まえて、まずは任意の関数 を和分して得られた関数に差分演算子を作用させてみましょう:
よって、確かに差分と和分が打ち消しあって、元の関数が得られました。 次は逆に任意の関数 の差分に対して和分演算子を作用させてみましょう:
こちらは という余計な項が出てきますが、これは積分定数みたいなもんでしょうか。 を満たす関数 なら、こういう面倒な項は出てこなさそうですが、和分と差分がおおまかに言って逆の演算だってことはよさそうですね。
下降階乗冪の和分
上記の差分演算子との関係と、前回導いた公式を使って、下降階乗冪の和分の公式を導いて見ましょう。 上記の差分の公式で変数を から に変えて、両辺に和分演算を作用させると
よって
を にずらして
まぁ当然ながら、冪乗の積分に対する公式と類似の関係が成り立ちます。
が小さい値で具体的に確かめてみよう
上記の公式を、いくつかの小さい n の値について確かめてみましょう。 下降階乗冪はと定義されているのでした。 のときは1。 また、以前の記事「自然数の冪乗和の公式を導いてみるよ 」で扱った累乗和 もちょっと使います:
これらを踏まえた上で
のとき
より
を に変えて
を使って書き換えると
ふむ、これはそのままの公式ですな。
のとき
より
を に変えて を使って書くと
について解くと
これも知ってる公式ですね。
のとき
より
を に変えて を使って書くと
について解くと
ふむふむ。
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