もう少し三角関数の公式シリーズ(目次)。 前回、余弦の 倍角の公式を導きましたが、基本的には同じ方法で正弦の
倍角の公式も導けます。 ただ、正弦の場合は
が偶数か奇数かによって結構式が異なるので少々面倒です。 とは言え、タイトルに「導く」と付けてるので結果だけ書くのはまずいでしょうから、前回の余弦の場合の導出を念頭に置きながら適宜式を書くくらいはしておきます。
倍角と書いてますが、奇数と偶数で分けてやるので、奇数倍角、偶数倍角と呼ぶことにします。
【この記事の内容】
奇数倍角の公式
ここでは前回と違って、 にはそれぞれ
の奇数次、偶数次の項しか含まれないようにしています。 前回も同じようにすることはできましたが、奇数倍角と偶数倍角をまとめて書こうとすると和の上限にガウス記号を使わないといけなくなるのと、不必要な次数の項が消えることは
倍角の公式の証明の際に簡単に示せることからやっていませんでした。
上記の級数で、特に の最高次の係数は以下を満たします:
これらの証明は数学的帰納法でできます(ここではしませんが)。
さて、
に関して、両辺を で2回微分して、公式
を用いると、多項式の係数 についての漸化式
を得ます。 これを使って を
で表すと
となるので、結局( として)
を得ます。
余弦の奇数倍角の公式との関係
余弦の奇数倍角の公式は、前回導いた公式で
となるので
とおくと
となっていることが分かります。
具体的な式
のとき
のとき
の1次の項は
になるようですね(公式で
の項の係数を計算するとたしかにそうなることが分かります)。
余弦の奇数倍角の公式
余弦の奇数倍角をなるべく
となります。 小さい について式を具体的に書き下すと
に比例する項(括弧内の定数項)は常に1になるようですね(公式で
の項を見ればたしかにそうなっています)。
偶数倍角の公式
上記の級数で、特に の最高次の係数は以下を満たします:
さて、
に関して、両辺を で2回微分して、公式
を用いると、多項式の係数 についての漸化式
を得ます。 これを使って を
で表すと
となるので、結局( として)
を得ます。
前回導いた正弦の n 倍角の公式との関係
前回導いた
となるので、
とおくと
となることが分かります。 つまり、 をなるべく使う公式と
をなるべく使う公式は、符号因子
を除いて各次数の係数が同じになっていることが分かります。
具体的な式
のとき
のとき
の項は
になるようですね(公式で
の項の係数を計算するとたしかにそうなります)。
余弦の偶数倍角の公式
余弦の偶数倍角をなるべく
となります。 前回導いた余弦の 倍角の公式(で
としたもの)と比べると、
として
という関係にあることが分かります。 小さい について式を具体的に書き下すと
公式で の項を考えれば定数項が1になることが分かります。
まとめ
今回導いた

- 作者: 森口繁一,一松信,宇田川〓久
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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