倭算数理研究所

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シュレディンガー方程式を解こう ~2次元中心力ポテンシャル~

シュレディンガー方程式を解こうシリーズ(目次)。 今回は2次元での中心力ポテンシャル系、つまりポテンシャルが動径  { r } にのみ依存する系を考えます。

中心力ポテンシャルを  { V(r) } とおくと、シュレディンガー方程式

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(-\frac{\hbar^2}{2m}\triangle + V(r)\right)\psi(\textbf{x}) = E\psi(\textbf{x})
\end{align*}}

となります。 「ラプラシアンの極座標表示 : 2次元」より、ラプラシアン極座標で表すと、これは以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[-\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{r}\frac{\partial}{\partial r}\left(r\frac{\partial}{\partial r}\right)
      +\frac{1}{r^2}\frac{\partial^2}{\partial \theta^2}\right) + V(r)\right]\psi(r,\,\theta)
    = E\psi(r,\,\theta)
\end{align*}}

以下では、変数  { r,\,\theta } を変数分離して偏角方向の方程式を解いてみます(ちょっとクドめに)。

変数分離

シュレディンガー方程式の解を以下の形に仮定します:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi(r,\,\theta) = R(r)\Theta(\theta)
\end{align*}}

これをシュレディンガー方程式に代入すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{r}\frac{d}{dr}\left(r\frac{dR(r)}{dr}\right)\Theta(\theta)
      +\frac{1}{r^2}R(r)\frac{d^2 \Theta(\theta)}{d\theta^2}\right) + V(r)R(r)\Theta(\theta)
    = ER(r)\Theta(\theta)
\end{align*}}

両辺に  { \frac{r^2}{R(r)\Theta(\theta)} } をかけて

  { \displaystyle\begin{align*}
  -\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{R(r)}r\frac{d}{dr}\left(r\frac{dR(r)}{dr}\right)
      +\frac{1}{\Theta(\theta)}\frac{d^2 \Theta(\theta)}{d\theta^2}\right) + r^2V(r)
    = Er^2 \\[4mm]
  \therefore\,\frac{1}{R(r)}r\frac{d}{dr}\left(r\frac{dR(r)}{dr}\right)
      - \frac{2m}{\hbar^2}r^2\left(V(r) - E\right)
    = -\frac{1}{\Theta(\theta)}\frac{d^2 \Theta(\theta)}{d\theta^2}
\end{align*}}

最後の式では、左辺は  { r } のみの関数、右辺は  { \theta } のみの関数なので、両辺は  { r,\,\theta } に依存しない定数となります。 この定数を  { C } とおくと、上記の方程式は2つに分離できて

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    \displaystyle \frac{1}{R(r)}r\frac{d}{dr}\left(r\frac{dR(r)}{dr}\right)
      - \frac{2m}{\hbar^2}r^2\left(V(r) - E\right) = C \\[2mm]
    \displaystyle -\frac{1}{\Theta(\theta)}\frac{d^2 \Theta(\theta)}{d\theta^2} = C
  \end{cases}
\end{align*}}

もう少し変形して(動径方向の方程式はシュレディンガー方程式っぽく直して)

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    \displaystyle \left[-\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{r}\frac{d}{dr}\left(r\frac{d}{dr}\right)
      - \frac{C}{r^2}\right) + V(r)\right]R(r) = ER(r) \\[4mm]
    \displaystyle \frac{d^2\Theta(\theta)}{d\theta^2} = -C\Theta(\theta)
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。

偏角方向の方程式を解く

偏角方向の方程式はポテンシャルに依らずに解けるので、ここで解いてしまいましょう。

 { \theta } は角度なので周期が  { 2\pi }周期的境界条件  { \Theta(\theta+2\pi) = \Theta(\theta) } を課しましょう。 これは、高校物理で半古典的な水素原子を解くときのボーアの量子条件と同じものですね*1。 このとき、基本解は  { \Theta_\ell(\theta) = e^{i\ell\theta} \quad (\ell = 0,\,\pm 1,\,\pm2,\cdots) } とおけるので、 { \frac{d^2\Theta_\ell(\theta)}{d\theta^2} = -\ell^2\Theta(\theta) } より

  { \displaystyle\begin{align*}
  C &= \ell^2
\end{align*}}

となります。 動径方向の方程式は(各  { \ell } に対して)

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[-\frac{\hbar^2}{2m}\left(\frac{1}{r}\frac{\partial}{\partial r}\left(r\frac{\partial}{\partial r}\right)
    - \frac{\ell^2}{r^2}\right) + V(r)\right]R_\ell(r) = E_\ell R_\ell(r)
\end{align*}}

となり、シュレディンガー方程式の基本解は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \psi_\ell(r,\,\theta) &= R_\ell(r)\;e^{i\ell\theta}
\end{align*}}

で与えられます(一般解はこの線形結合で与えられます)。 ここでは波動関数  { \psi_\ell(r,\,\theta) } の量子数として  { \ell } のみを明示していますが、動径方向の方程式を解くと新たな量子数が出てくる場合があります(動径方向に束縛条件がある場合)。

角運動量

古典的な運動方程式の場合「中心力ポテンシャル中での質点の運動方程式 ~2次元~」と対比させると、 { n }角運動量に関連する量であると予想されるので、2次元の角運動量演算子を考えてみましょう。 2次元の角運動量演算子  { L } は座標表示で以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  L &= xp_y - yp_x \\
    &= -i\hbar\left(x\frac{\partial}{\partial y} - y\frac{\partial}{\partial x}\right)
\end{align*}}

さらに「ラプラシアンの極座標表示 : 2次元」で計算した微分演算子極座標表示

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    \dfrac{\partial}{\partial x}
      = \cos\theta \dfrac{\partial}{\partial r} - \dfrac{\sin\theta}{r}\dfrac{\partial}{\partial \theta} \\[4mm]
    \dfrac{\partial}{\partial y}
      = \sin\theta \dfrac{\partial}{\partial r} + \dfrac{\cos\theta}{r}\dfrac{\partial}{\partial \theta}
  \end{cases}
\end{align*}}

を使って、角運動量演算子極座標で表すと

  { \displaystyle\begin{align*}
  L &= -i\hbar\left\{
      r\cos\theta\left(\sin\theta \dfrac{\partial}{\partial r} + \dfrac{\cos\theta}{r}\dfrac{\partial}{\partial \theta}\right)
      - r\sin\theta\left(\cos\theta \dfrac{\partial}{\partial r} - \dfrac{\sin\theta}{r}\dfrac{\partial}{\partial \theta}\right)\right\} \\
    &= -i\hbar\frac{\partial}{\partial\theta}
\end{align*}}

これを使えば、状態  { \Theta_\ell(\theta) = e^{i\ell\theta} }角運動量 { \ell\hbar } となり、プランク定数の整数倍になることがわかります。  { \Theta_\ell(\theta) }角運動量演算子固有値  { \ell\hbar } に属する固有関数であることも分かりますね。

【修正】

  • 動径方向の方程式の  { n^2 } を含む項の符号が間違っていたので修正しました。 その他、余計な因数が付いている部分があったので修正しました。
  • 偏角方向の波動関数に現れる量子数を  { n } から  { \ell } に変更しました。

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

*1:もともとのボーアの量子条件は角運動量プランク定数の整数倍で書けるというものだったかと思いますが。