特殊関数の公式を証明していくシリーズ(目次)。 今回は、以下の合流型超幾何微分方程式 (confluent hypergeometric differential equation)
(ただし は定数)に関して、級数解を求めてみましょう。 まぁ、それは合流型超幾何関数になるんですが。
参考
- 「wikipedia:超幾何級数」
- Wikipedia 「Confluent hypergeometric function」
- Walflam Math World 「Confluent Hypergeometric Differential Equation」
導出
を以下の冪級数の形で求めましょう:
この級数が合流型超幾何微分方程式 (*) を満たすという条件から展開係数 の満たす漸化式を導き、 の一般項を求めます。
の漸化式を求める
では、まず展開係数 が満たす漸化式を求めましょう。 まぁ、級数の形の を微分方程式 (*) にぶち込めばいいんですが、一気にやるとゴチャゴチャするのでステップ・バイ・ステップでやっていきましょう。 次の4つを の冪級数で表します:
後の計算のため、(途中はともかく)最終的には級数を以下のような形に整理することにします:
- 和は から まで
- 全て の 乗( 乗とかではなく)で書く
- 分母には ( とかではなく)を残す
これを踏まえて
についての和で の項が実際には消えるところもありますが、和の範囲を揃えておく方が後が楽。 で、(1), (3), (4), (5) 式を合流型超幾何微分方程式 (*) の左辺に代入して変形していくと
これが に関して恒等的に0となるとして
もう少し書き換えると(簡単のため は非正の整数ではないとします。 つまり、以下の式で全ての に対して分母が0にならないとします。)
おっ、綺麗な漸化式が出てきたっ。 まぁ、そうなるようにうまく微分方程式の方を作ってるんでしょうけどね。
の一般項を求める
上記で得られた の一般項はそんなに難しくなく求まります。 初項 とりあえずそのままにして、 を で表しましょう。
ここでポッホハマー記号 (Pochhammer symbol) を
によって導入すると
となります。 これは のときも成り立ちます。 ちなみに、ポッホハマーの記号は以前の記事「下降階乗冪ってのがあったので上昇階乗冪ってのも試してミルカ」でやった、上昇階乗冪というのと同じです。
ちなみに が非正の整数の場合、つまり と表されるとき、 の漸化式より
となり、また を満たす整数に対しても となります。
の級数解
上記で求めた を の冪級数に代入すると
定数 を除いた級数
を合流型超幾何関数 (confluent hypergeometric function)と呼びます。 前節最後に言及した事項より、 のとき、 は 次の多項式になります。
合流型超幾何微分方程式のもう一つの基本解
さて、合流型超幾何微分方程式は2階の線形常微分方程式ですが、こういう微分方程式には2つの基本解*1があるそうですね。 1つは上記の合流型超幾何関数 ですが、もう1つも合流型超幾何関数を使って
と書けるそうです(ただし が正の整数でない場合)。 これをちょっと確かめてみましょう。
解の形
上記の関数をそのまま微分方程式に代入して成り立っているのを確かめてもいいんですが、 を
という形に仮定して( は後で決める定数)、合流型超幾何微分方程式を の微分方程式に書き換えてその解の形を考えるという方法をとります。
の満たすべき微分方程式
まず後の計算のために (5) 式の を で微分しておきましょう。
さて、これらを合流型超幾何微分方程式の左辺に (5) 式を代入して変形していくと
ここで とおくと、微分方程式は
となり、大括弧内 はパラメータを
と置き換えた合流型超幾何微分方程式となります。 よって は合流型超幾何関数を使って書けて
となります。 も合わせて、
が合流型超幾何微分方程式を満たすことが分かります。 これが と線型独立だとかいうのは他を当たってもらうことにしましょう。
同様のことを(合流型でない)超幾何微分方程式についてもやる予定ですが・・・
まとめ
合流型超幾何関数
の解は、 が非正の整数でない場合、合流型超幾何関数
と
で与えられます。 ただし はポッホハマー記号
です。
【修正】
- 展開係数 はパラメータの と混同する可能性がないでもないので、 に変更しました。
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*1:一般解をそれらの線型結合で書ける、って定義だっけ?