特殊関数の公式を証明していくシリーズ(目次)。 前回の記事『合流型超幾何微分方程式の級数解を求めてみる。 もちろんそれは合流型超幾何関数になる。』で、合流型超幾何微分方程式の級数解を構築していくと合流型超幾何関数が得られることを示しました。 今回はそれを超幾何微分方程式について行います。 ちなみに、「合流型 (confluent)」という小難しい修飾子が付いている方が実際には簡単な微分方程式、関数になります。 名前の由来は、超幾何微分方程式の特異点(3つあるうちの2つ)が合流することから来ています。 特異点の数が減るので「合流型」の方が簡単になる、という寸法です。
さて、今回の本題の超幾何微分方程式 (hypergeometric function) とは、以下のような微分方程式です:
は定数です。
参考
- wikipedia:超幾何級数
- wikipedia 「Hypergeometric function」
- Walflam Math World 「Hypergeometric Differential Equation」
級数解の導出
上記の微分方程式 (*) の級数解を前回と同様の手順で求めていきましょう。 級数解は以下の形で定義します:
手順は
- 微分方程式 (*) から、 が満たす漸化式を導く
- の一般項を求める
です。
の漸化式
まず、前回と同様に (1) 式の微分等を計算しましょう:
これを微分方程式 (*) の左辺に代入して変形していくと
この級数が に関して恒等的に0になるとして
右辺の中括弧内 {...} をもう少し整理すると
というふうに綺麗にまとまります。 もとの漸化式に戻ると
よって についての漸化式は(簡単のため は非正の整数ではないとして)
となります。
の一般項
上記の漸化式から、 の一般項は
となることが分かります。 前回導入したポッホハマー記号
を使うと、 の一般項は
となります。
超幾何関数
前節で得られた を (1) 式に代入すると
定数 を除いた級数
を(Gauss の)超幾何関数 (hypergeometric function) と呼びます。 合流型超幾何微分方程式の場合と同様に、超幾何微分方程式の他の基本解も超幾何関数を使って書けるようですが、拙者の能力の許容量を超えてるのでスルー。
合流型超幾何微分方程式と超幾何微分方程式
超幾何微分方程式で、変数を に変換して の極限をとると合流型超幾何微分方程式になります。 これは超幾何微分方程式の特異点 のうち、 のものを と「合流」させることに対応します( の特異点はそのままに)。 これと同様の操作を超幾何関数に対して行うと合流型超幾何関数が得られます。 実際にやってみましょう。超幾何微分方程式
まずは微分方程式の方。 変数変換 の下で微分の変換は
となるので微分方程式 (*) の左辺は
と変換されます。 よって微分方程式 (*) は(両辺を で割って)
となります。 ここで の極限をとると
となり、合流型超幾何微分方程式が得られます。
超幾何関数
微分方程式の場合と同じ変換&極限を、超幾何関数 にも施してみましょう。
ここでポッホハマー記号 の定義より
なので
となって、 の極限で超幾何関数は合流型超幾何関数になることが分かりました。
まとめ
超幾何微分方程式
の級数解は
で与えられます。 ただし はポッホハマー記号
です。
【修正】
- ポッホハマーの公式の定義で符号が間違っていたので修正しました。
- 展開係数として使っていた はパラメータの と混同のおそれがないでもないので、展開係数を に変更しました。
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