特殊関数の公式を証明していくシリーズ(目次)。 以前の記事でベッセル関数や円柱関数の定義をみましたが、今回は後で使う(かも知れない)公式をいくつか導いていきます。 大半は微分の公式です。
【この記事の内容】
定義
ベッセル関数 、ノイマン関数 、ハンケル関数 は以下のように定義されます:
準備
ベッセル関数の微分公式は級数の定義をそのまま微分すれば出るんですが、少し遠回りして以下の微分を計算しておきます:
ただし は定数です。 導出は地道に計算すればできます:
また、これらの結果を使ってノイマン関数についても同じ公式が成り立つことを示せます。 まず1つ目の公式に対応するもの:
ただし
を使いました。 同様にして、2つ目の公式に対応するものは
ただし
を使いました。 ベッセル関数とノイマン関数に対して(線型演算子についての)同じ公式が成り立つので、ハンケル関数についても同じ公式が成り立ちます。 よって、 を任意の円柱関数(ベッセル関数、ノイマン関数、ハンケル関数)として
が成り立ちます。 特に として
が1でない場合は変形されたベッセル関数に対する公式や物理の問題で使うと思いますが、この記事ではこれ以降 として (1), (2) 式を使って他の公式を導いていきます。
1階微分
(1) 式の左辺を積の微分の公式を使って変形すると(プライム (') で 微分を表すことにして)
となるので、(1) 式より
同様にして (2) 式より
を得ます。 まとめると
また (3), (4) 式の辺々和をとって をかけると
も得られます。
特に簡単になる場合として、(4) 式で として
となります。
高階微分
(2) 式より
が成り立つので、演算子 を
と定義すると
となります。 ここで
なので、結局
を得ます。 同様にして (1) 式より
を得ます。
また、(5) 式 の両辺を 回微分して
シュレーミルヒの公式
の公式。 前節で示した公式 の両辺を 回微分して
この公式を繰り返し使って
ただし は二項係数。
漸化式と連分数展開
漸化式
(3), (4) 式の辺々の差をとって微分を含む項を消去すると
連分数表示
上記の漸化式より
ここで と定義すると
となるので、これを繰り返し使って
また、 とおくと (6) 式より
これを繰り返し使って
積の冪級数展開
ここでの公式はベッセル関数 についてのみ成り立ちます。 ベッセル関数の定義の級数より
ここで「指数関数の冪級数から指数法則を導く」で行った二重和の書き換えを行うと( として)
ここで (7) 式中に現れているガンマ関数の逆数について
と変形できるので(ここでやっていることは二項係数の第1引数を実数に拡張しているようなことです。 二項係数を の展開係数として定義するのは『二項係数の加法公式を導く』参照)、(7) 式の内側の和は以下のようになります( は二項係数):
ただし、最後から2つ目の式から分かるように、この式は で が負の整数のとき となります(例えば のとき という因子が出てきますが、ガンマ関数を含む極限 は使いません)。 これを (7) 式に代入すると
を得ます。 特に を自然数として のとき
まとめ
を円柱関数、 を定数として
1階微分
特に
高階微分
特に
シュレーミルヒ () の公式
ただし は二項係数。
漸化式
連分数表示
ベッセル関数の積の冪級数展開