倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

続・正接関数 tan x の高階導関数

以前の記事 { \tan x } の高階導関数 { \tan x }多項式で表したときの係数を、表を使って計算する方法を見ました。 今回はその結果を踏まえて、係数を与える式を導きたいと思います。 ただ、完全に一般的には出せていなくて、一部だけの表式となります。

 { \tan x } の最高次の係数

まずは  { (\tan x)^{(n)} } { \tan x } の最高次の係数。 前回出てきた表で一番右端の数です:

n \ m 0 1 2 3 4 5 6 7 8
0 1
1 1 1
2 2 2
3 2 8 6
4 16 40 24
5 16 136 240 120
6 272 1232 1680 720
7 272 3968 12096 13440 5040

この数列を  { a_{0,m}\quad(m \geqq 1) } { m } は表の列番号と同じ)とすると、一般項は簡単に分かって

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_{0,m} = (m-1)!
\end{align*}}

となります。  { \tan x }導関数の係数としても表しておきましょう。

  { \displaystyle\begin{align*}
  (\tan x)^{(n)} = \sum_{m=0}^{n+1} t_{n,m} \tan^m x
\end{align*}}

とおく、つまり  { \tan x } { n }導関数における  { \tan^m x } の係数を  { t_{n+1,m} } とおくと

  { \displaystyle\begin{align*}
  t_{n,n+1} = a_{0,n+1} = n! \qquad (n \geqq 0)
\end{align*}}

となります。

 { \tan x } の2番目に高次の項

次は少しずらして、以下の部分の数列の一般項を求めます。

n \ m 0 1 2 3 4 5 6 7 8
0 1
1 1 1
2 2 2
3 2 8 6
4 16 40 24
5 16 136 240 120
6 272 1232 1680 720
7 272 3968 12096 13440 5040

この一般項を  { a_{1,m} } とおくと( { m } は表の列番号と同じ)、前回の表の計算方法より以下の漸化式が得られます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_{1,m}
    &= (m-1)a_{1,m-1} + (m+1)a_{0,m+1} \qquad(m \geqq 1) \\
    &= (m-1)a_{1,m-1} + (m+1)! \qquad(\because a_{0,m+1} = m!)
\end{align*}}

よって、 { a_{1,m} } の初項と漸化式は以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    a_{1,0} = a_{0,1} = 1 \\[2mm]
    a_{1,m} = (m-1)a_{1,m-1} + (m+1)! & (m \geqq 1)
  \end{cases}
\end{align*}}

では、この数列の一般項を求めましょう。 漸化式の両辺を  { (m-1)! } で割ると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{a_{1,m}}{(m-1)!} = \frac{a_{1,m-1}}{(m-2)!} + m(m+1)
\end{align*}}

ここで  { m \geqq 1 } に対して  { b_m = \frac{a_{1,m}}{(m-1)!} } とおくと、 { b_m } の初項と漸化式は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    b_1= 2 \\[2mm]
    b_m = b_{m-1} + m(m+1) & (m \geqq 2)
  \end{cases}
\end{align*}}

となるので、 { m \geqq 2 } のとき

  { \displaystyle\begin{align*}
  b_m
    &= b_1 + \sum_{\ell = 2}^m(b_\ell - b_{\ell-1}) \\
    &= 2 + \sum_{\ell = 2}^m \ell(\ell+1) \\
    &= \sum_{\ell = 1}^m \ell(\ell+1)
\end{align*}}

ここで、「階乗冪の和の公式」で導いた和の公式

  { \displaystyle\begin{align*}
  \sum_{\ell=1}^m \ell(\ell+1)(\ell+2)\cdots(\ell+r-1) = \frac{1}{r+1}m(m+1)(m+2)\cdots(m+r)
\end{align*}}

を( { r = 2 } として)使うと

  { \displaystyle\begin{align*}
  b_m &= \frac{1}{3}m(m+1)(m+2) \\
  \therefore \, a_{1,m} &= \frac{1}{3}(m+2)! \qquad (m \geqq 2)
\end{align*}}

となります。 これは  { m = 1 } のときも成り立ちます。 よって、結果をまとめると

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_{1,m} =
    \begin{cases}
      1 & (m = 0) \\[2mm]
      \dfrac{1}{3}(m+2)! & (m \geqq 1)
    \end{cases}
\end{align*}}

となります。 前節の  { t_m^{(n)} } を表すと

  { \displaystyle\begin{align*}
  t_{n,n-1}
    &= a_{1,n-1} \\[2mm]
    &= 
    \begin{cases}
      1 & (n = 1) \\[2mm]
      \dfrac{1}{3}(n+1)! & (n \geqq 2)
    \end{cases}
\end{align*}}

 { \tan x } の3番目に高次の項

また少しずらして、以下の数列の一般項を求めましょう。

n \ m 0 1 2 3 4 5 6 7 8
0 1
1 1 1
2 2 2
3 2 8 6
4 16 40 24
5 16 136 240 120
6 272 1232 1680 720
7 272 3968 12096 13440 5040

この数列を  { a_{2,m} } とすると、初項と漸化式は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    a_{2,0} = a_{1,1} \\[2mm]
    a_{2,m} = (m-1)a_{2,m-1} + (m+1)a_{1,m+1} & (m \geqq 1)
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。 ここに前節の  { a_{1,m} } の結果を使うと

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    a_{2,0} = 2 \\[2mm]
    a_{2,m} = (m-1)a_{2,m-1} + \tfrac{1}{3}(m+1)(m+3)! & (m \geqq 1)
  \end{cases}
\end{align*}}

漸化式をもう少し変形して

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_{2,m}
    &= (m-1)a_{2,m-1} + \frac{1}{3}(m+1)(m+3)! \\
    &= (m-1)a_{2,m-1} + \frac{1}{3}(m+4)! - (m+3)! \\
\end{align*}}

ここから前節と同じ手順で  { a_m^{(2)} } の一般項を求めると

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_{2,m} =
    \begin{cases}
      2 & (m = 0) \\[2mm]
      \dfrac{1}{18}(m+5)! - \dfrac{1}{5}(m+4)! & (m \geqq 1)
    \end{cases}
\end{align*}}

となります。 また  { t_{n,m} }

  { \displaystyle\begin{align*}
  t_{n,n-3}
    &= a_{2,n-3} \\[2mm]
    &= 
    \begin{cases}
      2 & (n = 3) \\[2mm]
      \dfrac{1}{18}(n+2)! - \dfrac{1}{5}(n+1)! & (n \geqq 4)
    \end{cases}
\end{align*}}

 { \tan\theta } の4番目に高次の項

次は結果だけ。

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_{3,m} =
    \begin{cases}
      16 & (m = 0) \\[2mm]
      \dfrac{1}{162}(m+8)! - \dfrac{1}{15}(m+7)! + \dfrac{1}{7}(m+6)! & (m \geqq 1)
    \end{cases}
\end{align*}}

 { t_{n,m} }

  { \displaystyle\begin{align*}
  t_{n,n-5}
    &= a_{3,n-5} \\[2mm]
    &= 
    \begin{cases}
      16 & (n = 5) \\[2mm]
       \dfrac{1}{162}(n+3)! - \dfrac{1}{15}(n+2)! + \dfrac{1}{7}(n+1)! & (n \geqq 6)
    \end{cases}
\end{align*}}

これ以降も同様に計算できますが、一般項を出すのは大変なのでここまで。

【修正】

  •  { a_m^{(n)}, t_m^{(n)} } などを  { a_{n,m},\,t_{n,m} } と表記を変えました。
  • 変数を  { \theta } から  { x } に変更しました。