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倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

ベッセルの微分方程式とその級数解

中心力ポテンシャル系のシュレディンガー方程式を解く際に、動径方向の方程式として出てくるベッセルの微分方程式級数解をガリガリ求めていきます。 解はベッセル関数と呼ばれる関数になります。 ベッセル関数以外にもノイマン関数と呼ばれる関数も解になりますが、少々記事が長くなるので別記事で扱います。

【この記事の内容】

ベッセルの微分方程式

ベッセルの微分方程式は以下の形をしています:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[\frac{1}{r}\frac{d}{dr}\left(r\frac{d}{dr}\right) + \left(1-\frac{n^2}{r^2}\right)\right]Z_n(r) = 0
\end{align*}}

 { n } はとりあえず正の整数とします。

ベッセルの微分方程式級数

ベッセルの微分方程式の解  { Z_n(r) } の冪展開係数  { z_m^{(n)} } を以下のように定義しましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  Z_n(r) = \sum_{m=0}^\infty z_m^{(n)} r^m
\end{align*}}

級数解では  { m! } を分母に入れることが多いですが、ベッセルの微分方程式の場合は入れない方がちょっとだけ簡単になる(結果に入ってこないため)ので、入れずに定義しています*1。  このとき

  { \displaystyle\begin{align*}
  r\frac{d Z_n(r)}{dr}
    &= \sum_{m=1}^\infty m z_m^{(n)} r^m \\[2mm]
  \frac{1}{r}\frac{d}{dr}\left(r\frac{d Z_n(r)}{dr}\right)
    &= \sum_{m=1}^\infty m^2 z_m^{(n)} r^{m-2} \\
    &= \frac{z_1^{(n)}}{r} + \sum_{m=0}^\infty (m+2)^2 z_{m+2}^{(n)} r^m \\[2mm]
  \frac{Z_n(r)}{r^2}
    &= \sum_{m=0}^\infty z_m^{(n)} r^{m-2} \\
    &= \frac{z_0^{(n)}}{r^2} + \frac{z_1^{(n)}}{r} + \sum_{m=0}^\infty z_{m+2}^{(n)} r^m
\end{align*}}

となるので、これをベッセルの微分方程式に代入して

  { \displaystyle\begin{align*}
  &-\tfrac{n^2 z_0^{(n)}}{r^2} + \tfrac{(1 - n^2)z_1^{(n)}}{r}
    + \sum_{m=0}^\infty \left\{(m+2)^2 z_{m+2}^{(n)} + z_m^{(n)}
    - n^2 z_{m+2}^{(n)}\right\}r^m = 0  \\[4mm]
  &-\tfrac{n^2 z_0^{(n)}}{r^2} + \tfrac{(1 - n^2)z_1^{(n)}}{r} 
    + \sum_{m=0}^\infty \left\{(m+2-n)(m+2+n)z_{m+2}^{(n)} + z_m^{(n)}\right\} r^m = 0  
\end{align*}}

よって  { r } の各冪の係数が消えるためには

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    n^2 z_0^{(n)} = 0 \\[2mm]
    (1-n^2)z_1^{(n)} = 0 \\[2mm]
    (m+2-n)(m+2+n)z_{m+2}^{(n)} = -z_m^{(n)} \qquad\left(m \geqq 0\right)
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。 1つ目と2つ目の式は  { z_{-2}^{(n)} = z_{-1}^{(n)} = 0 } とすれば3つ目の式にまとめて書けます。 後のために3つ目の式で  { m \rightarrow m-2 } の置き換えをして、結局係数の初項と漸化式は以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    z_{-2}^{(n)} = z_{-1}^{(n)} = 0 & \cdots (1) \\[2mm]
    (m-n)(m+n)z_{m}^{(n)} = -z_{m-2}^{(n)} \qquad\left(m \geqq 0\right) & \cdots (2)
  \end{cases}
\end{align*}}

(1), (2) 式より  { z_{m-2}^{(n)} = 0} かつ  { z_m^{(n)} \ne 0 } となるのは  { m = n } のときで、 { z_m^{(n)} } が0でないのは  { m } { n } と等しいか  { n } より偶数だけ大きいときであることが分かります。  { p }自然数として  { z_{n+2p}^{(n)} } を (2) 式を使って変形していくと

  { \displaystyle\begin{align*}
  z_{n+2p}^{(n)}
    &= -\frac{1}{2p\cdot(2n+2p)}z_{n+2p-2}^{(n)} \\
    &= \frac{1}{2p(2p-2)\cdot(2n+2p)(2n+2p-2)}z_{n+2p-4}^{(n)} \\
    &\qquad \vdots \\
    &= \frac{(-1)^p}{2p(2p-2) \cdots 2 \cdot (2n+2p)(2n+2p-2) \cdots (2n+2)}z_n^{(n)} \\
    &=\frac{ (-1)^p n!}{2^{2p} p! (n+p)!}z_n^{(n)}
\end{align*}}

となります。 これをもとの級数に代入して

  { \displaystyle\begin{align*}
  Z_n(r)
    &= z_n^{(n)}\sum_{p=0}^\infty \frac{(-1)^p n!}{p!(n+p)!2^{2p}} r^{n+2p} \\
    &= z_n^{(n)} n!\; r^n\sum_{p=0}^\infty \frac{(-1)^p}{p!(n+p)!}\left(\frac{r}{2}\right)^{2p}
\end{align*}}

全体にかかる定数を  { z_n^{(n)} = \frac{1}{2^n n!} } ととって、この級数で定義される関数を  { J_n(r) } とおき

  { \displaystyle\begin{align*}
  J_n(r) = \left(\frac{r}{2}\right)^n\sum_{p=0}^\infty \frac{(-1)^p}{p!(p+n)!} \left(\frac{r}{2}\right)^{2p}
\end{align*}}

となります。 これは(第1種)ベッセル関数 (Bessel function) と呼ばれます。

n が実数の場合

ベッセル関数は、球ベッセル関数などのように  { n } が整数でない場合にも有用なので、上記の定義を  { n } が実数  { \nu } の場合にも拡張して

  { \displaystyle\begin{align*}
  J_\nu(r) = \left(\frac{r}{2}\right)^\nu\sum_{p=0}^\infty \frac{(-1)^p}{p!\;\Gamma(p+n+1)} \left(\frac{r}{2}\right)^{2p}
\end{align*}}

と定義します*2。  { \nu } が実数なので、元の定義で和の中にあった因子  { (p+n)! } をガンマ関数を使って  { \Gamma(p+\nu+1) } に拡張しています( { \nu } が非正の整数の場合は後ほど)。 このベッセル関数は、当然以下のベッセルの微分方程式を満たします:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[\frac{1}{r}\frac{d}{dr}\left(r\frac{d}{dr}\right) + \left(1-\frac{\nu^2}{r^2}\right)\right]J_\nu(r) = 0
\end{align*}}

少し補足
ベッセル関数  { J_\nu(r) } がベッセルの微分方程式を満たすのは実際に微分方程式に代入して計算すればいいだけですが、ベッセルの微分方程式級数解を求める上記の手順をパラメータ  { \nu } が実数の場合にやると少し怪しいところがあります。 この場合

  { \displaystyle\begin{align*}
  Z_\nu(r) = r^\nu \zeta_\nu(r)
\end{align*}}

によって関数  { \zeta_\nu(r) } を定義して(したがって、 { \nu } が整数でなければ  { Z_\nu(r) } { r } の整数冪ではなくなるということですが)、ベッセルの微分方程式から  { \zeta_\nu(r) } が満たす微分方程式を求めると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left(\frac{d^2}{dr^2} + \frac{2\nu+1}{r}\frac{d}{dr} + 1\right)\zeta_\nu(r) = 0
\end{align*}}

が得られます。 この  { \zeta_\nu(r) }級数解は上記の方法と同じように求められて、パラメータが実数  { \nu } の場合の表式が得られます。

ベッセルの微分方程式の2つの基本解(ノイマン関数とハンケル関数)
 { J_\nu(r) } { J_{-\nu}(r) } は同じベッセルの微分方程式を満たすので、( { \nu } が非正の整数でないとき)これらはベッセルの微分方程式の2つの基本解となります。 2つの基本解として  { J_{-\nu}(r) } の代わりに

  { \displaystyle\begin{align*}
  N_\nu(r) = Y_\nu(r) = \frac{J_\nu(r) \cos \nu\pi - J_{-\nu}(r)}{\sin\nu\pi}
    \qquad \left(\nu \ne 0,\,\pm1,\,\pm2,\,\cdots\right)
\end{align*}}

で定義されるノイマン関数 (Neumann function) もしくは第2種ベッセル関数も用いられます。  { \nu } が非正の整数の場合は  { \displaystyle N_n(r) = \lim_{\nu \rightarrow n} N_\nu(r) } という極限で定義されます。

上記のノイマン関数の唐突な定義は、球ノイマン関数が球ベッセル関数と簡単な関係になるようにとられているいるのだと思います*3

また、

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_\nu^{(1)}(r) &= J_\nu(r) + iN_\nu(r) \\
  H_\nu^{(2)}(r) &= J_\nu(r) - iN_\nu(r) \\
\end{align*}}

で定義されるハンケル関数 (Hankel function) もしくは第3種ベッセル関数というのもあります。

パラメータが非正の整数の場合

パラメータ  { \nu } が0の場合は、明らかに  { J_{-\nu}(r) = J_\nu(r) } となります。

また  { \nu } が負の場合、 { n } を正の整数として  { J_{-n} } を考えると、 { \frac{1}{\Gamma(-n)} = 0 } より、定義の級数 { 0 \leqq p < n } の項が消えて

  { \displaystyle\begin{align*}
  J_{-n}(r)
    &= \left(\frac{r}{2}\right)^{-n}\sum_{p=n}^\infty \frac{(-1)^p}{p!\;\Gamma(p-n+1)}\left(\frac{r}{2}\right)^{2p} \\
    &= \left(\frac{r}{2}\right)^{-n}\sum_{p'=0}^\infty \frac{(-1)^{p'+n}}{(p'+n)!\;\Gamma(p'+1)}
      \left(\frac{r}{2}\right)^{2(p'+n)} \qquad (p' = p-n) \\
    &= (-1)^n\left(\frac{r}{2}\right)^n\sum_{p'=0}^\infty \frac{(-1)^{p'}}{(p'+n)!p'!}\left(\frac{r}{2}\right)^{2p'} \\
    &= (-1)^nJ_n(r)
\end{align*}}

となって、 { J_{-n}(r) } { J_n(r) } と実質同じ関数となります。 したがって、パラメータが非正の整数の場合には、ベッセルの微分方程式には他の基本解があります。 これは上記で出てきたノイマン関数(で極限をとったもの)になるのですが、ちょっと定義が天下り的なので別記事でもう少しだけきちんと求めてみたいと思います。

まとめ

ベッセルの微分方程式

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[\frac{1}{r}\frac{d}{dr}\left(r\frac{d}{dr}\right) + \left(1-\frac{\nu^2}{r^2}\right)\right]Z_\nu(r) = 0
\end{align*}}

ベッセル関数

  { \displaystyle\begin{align*}
  J_\nu(r) = \left(\frac{r}{2}\right)^\nu\sum_{p=0}^\infty \frac{(-1)^p}{p!\;\Gamma(p+n+1)} \left(\frac{r}{2}\right)^{2p}
\end{align*}}

ノイマン関数

  { \displaystyle\begin{align*}
  N_\nu(r) = Y_\nu(r) = \frac{J_\nu(r) \cos \nu\pi - J_{-\nu}(r)}{\sin\nu\pi}
    \qquad \left(\nu \ne 0,\,\pm1,\,\pm2,\,\cdots\right)
\end{align*}}

ハンケル関数

  { \displaystyle\begin{align*}
  H_\nu^{(1)}(r) &= J_\nu(r) + iN_\nu(r) \\
  H_\nu^{(2)}(r) &= J_\nu(r) - iN_\nu(r) \\
\end{align*}}

【修正】

  • ノイマン関数の定義についてのコメントを少し修正しました。

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

*1:もちろん、入れて定義しても同じ級数が得られますが、全体にかかる定数の定義を少し変える必要があります。

*2: { \nu } が整数でない場合、複素関数としては多価関数となるので  { z } が負の実数でないという条件が要るようです。

*3:ベッセルの微分方程式に対するフックス解と一致するのかと思ってましたが、実際にやるとそういうわけではないようです。 こちら参照