倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

波動

高校レベルの波動の理論を復習。 少し高校の範囲をはみ出てますが、そんなに難しくないと思います。 また、ここで見た形式を用いて、後日に音波のドップラー効果を導いてみます。

波の方程式

時刻 { t } での位置 { x } における正弦波の変位 { \phi(x,\,t) } は以下で与えられます:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \phi(x,\,t)
        &= A \sin\left\{2\pi\left(\frac{t}{T} - \frac{x}{\lambda}\right) + \delta\right\} \\[4mm]
        &= A \sin\left\{\frac{2\pi}{T}\left(t - \frac{x}{v}\right) + \delta\right\} & \left(v = \frac{\lambda}{T}\right)
\end{align*}
}

ここで

  • { T } : 周期 period [s]
  • { \lambda } : 波長 wavelength [m]
  • { v } : 波の(位相)速度 (phase) velocity [m/s]
  • { A } : 振幅 amplitude [m]
  • { \delta } : 位相 phase

です。 括弧 [ ] 内は単位。 角度部分をまとめて「位相」と呼ぶこともしばしばあります。 { v,\,T,\,\lambda } の間には以下の関係があります:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    v = \frac{\lambda}{T}
\end{align*}
}

導出方法は後で見ますが、公式自体は単位に気を付ければすぐに覚えられるでしょう。

以下では位相 { \delta } は考えません。

波の式の角度部分について

正弦波を特徴づける時間と距離はそれぞれ周期波長です。 ただし、通常はこれらと同等の、別に定義された量を使うことが多いと思います。 対応関係は下表の通り:

時間 [単位] 距離 [単位]
周期 / 波長 {  T } [s] { \lambda } [m]
振動数(周波数) { f = \nu = \frac{1}{T} } [Hz]
角振動数 / 波数 { \omega = \frac{2\pi}{T} = 2\pi f } [rad/s] { k = \frac{2\pi}{\lambda} } [/m]

波数 { k } (wave number)
波数 { k } は高校では出てきませんが、大学以降は波長よりもこちらの方が良く使います。 意味は { 2\pi } [m] あたりに含まれる波の数です(「波数」って言葉そのまま)。 角振動数が { 2\pi } [s] あたりに含まれる振動の回数であることと対応しています。 波数 { k }、角振動数 { \omega }、波の速度 { v } の間には

  { \displaystyle
\begin{align*}
    kv = \omega
\end{align*}
}

の関係があります。 これは波長 { \lambda }、周期 { T }、波の速度 { v } の間の関係と同等です。

波数ベクトル { \textbf{k} } (wave number vector)
2次元以上の波を扱う場合は、波数を一般化して波数ベクトル { \textbf{k} } を以下のように定義します:

  • ベクトルの絶対値は波数 k に等しい。
  • ベクトルの方向は波の進行方向に等しい。 波の速度ベクトルを { \textbf{v} } としたとき、{ \textbf{k} }{ \textbf{v} } は平行。

{ \textbf{k} } は以下の関係式を満たします:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textbf{k}\cdot\textbf{v} &= \omega, &
    |\textbf{k}| &= k = \frac{2\pi}{\lambda}
\end{align*}
}

波の位相
正弦波を波数 { k } と角振動数 { \omega } を用いて表すと

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \phi(x,\,t) = A\sin\left(\omega t - kx + \delta \right)
\end{align*}
}

ここで { \delta = \pi } とおいて少々変形すると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \phi(x,\,t) = A\sin\left(kx - \omega t\right)
\end{align*}
}

この角度部分を { \theta(x,\,t) } とおき、({ \delta } と混同しない場合に)位相と呼ぶことにします*1。 2次元以上では

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \theta(\textbf{x},\,t) = \textbf{k}\cdot\textbf{x} - \omega t
\end{align*}
}

と書けます。

波の伝搬速度

波の伝搬速度は、位相が一定の位置を時間的に追ったときどのように移動していくかで分かります。 簡単のため、1次元で考えましょう。 位相が一定(例えば山の位置を追うなら { \frac{\pi}{2} } としたとき

  { \displaystyle
\begin{align*}
    kx - \omega t = \textrm{const}
\end{align*}
}

両辺を { t }微分すると

  { \displaystyle
\begin{align*}
    k\frac{dx}{dt} - \omega &= 0 \\
    \therefore \frac{dx}{dt} &= \frac{\omega}{k}
\end{align*}
}

{ \frac{dx}{dt} } は位相を一定にする位置(例えば山)の速度なので、これはまさに波の速さ { v } となります:

  { \displaystyle v = \frac{\omega}{k} }

2次元の場合の同等な式は

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \textbf{v} = \begin{pmatrix} \dfrac{\omega}{k_x} \\[4mm] \dfrac{\omega}{k_y} \end{pmatrix}
\end{align*}
}

となります。

ド・ブロイの関係式

ド・ブロイの関係式は高校でギリギリやりますよね:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    E &= h\nu ,&
    p &= \frac{h}{\lambda}
\end{align*}
}

これも、大学以降では波数(ベクトル)と角振動数を用いて書くのが普通です:

  { \displaystyle
\begin{align*}
    E &= \hbar\omega , &
    \textbf{p} &= \hbar\textbf{k}
\end{align*}
}

またまた分数を使わずに書けます。 ディラック定数 { \hbar }プランク定数 { h = 6.63 × 10^{-34}\,[\textrm{Js}] } を用いて

  { \displaystyle
\begin{align*}
    \hbar = \frac{h}{2\pi} = 1.05 \times 10^{-34} \,[\textrm{J s}]
\end{align*}
}

と定義された定数です。

理論電磁気学 電磁場の古典論 (新物理学シリーズ)

*1:{ \delta } と混同しそうな場合は位相関数(造語)と呼びます。