ひもの両端を持って垂らしたときにできる曲線を懸垂曲線(wikipedia:カテナリー曲線 catenary)といいますが、この曲線の方程式を導いてみます。 結果は双曲線関数の1つ を使って表されます。
高校時代にどこかで導出を読んだ覚えがあるんですが、その過程で積分方程式が出てきた気がしないので、別の導出方法(ここのものよりも簡単?)もあるかと思います。
準備
ひもの底を原点 とし、水平方向に 軸、鉛直方向に 軸(上方向を正)にとります。 ひもの曲線を とおいて関数 を求めます。ひもの の部分に点 をとり、これを とします。 また、ひもの から の部分(両端を含む)を とします。
に対する微分方程式を立てる
ひもの一部 に加わる力の釣り合いの式から についての微分方程式を立てます。 には次の3つの力が加わっています:- 点 に水平方向のひもの張力
- 点 に接線方向上向きにひもの張力
- の重心に鉛直下向きに重力
は に無関係な定数です。
について、 における の接線と 軸の正の部分とのなす角を とすると、 の 成分、 成分はそれぞれ となります。 また、この角度 と は
で関係しています。 ただし、 は 微分を表します。
は の長さを , 線密度を 、重力加速度を として
で与えられます。 ただし、 の長さ は と
で関係しています。
以上の結果を踏まえて、鉛直・水平方向の力の釣り合いの式より
となります。 を消去して と の式を使うと
定数をひとまとめにして とおくと、結局以下の積分方程式が得られます:
これを解くために、微分方程式に書き換えておきましょう。 両辺を で微分すると
概ね「積分方程式 = 微分方程式 + 境界条件」なので境界条件も出しておきましょう。 積分方程式で とおいて を得ます。 また、積分方程式からは出てきませんが( しか含んでいないので)、座標系の取り方から も境界条件として課されます。 以上をまとめると
微分方程式を解く
では上記の微分方程式を解いていきましょう。 とおくと微分方程式より
となります。 両辺を積分すると、左辺は(以下の は上記で定義した接線に関連する角度と同じですが、単なる置換積分の変数と思って問題ありません)
また、右辺は簡単に積分できて となるので
ただし、 と境界条件 より、 で なので、積分定数は0になります。
さて、この関係式から を で表しましょう。 まずは について解くと
次に について解くために公式 (この公式についてはこちらなどを参照)を使うと
だったので、結局 。 を求めるためにさらに積分すると、境界条件 も課して
を得ます。