学部でやるような量子系のシュレディンガー方程式を解いていくシリーズの目次。
ハミルトニアンを 、状態ベクトルを とすると、時間に依存するシュレディンガー方程式 (Schrödinger equation) は
で与えられるのでした。 このシリーズ記事では、基本的にハミルトニアンは以下の形のものしか扱いません:
ただし、 はそれぞれ座標と運動量の演算子です(空間の次元を指定していないのでベクトルで書いています)。
シリーズ目次
- 目次 & 準備(この記事)
- 1次元
- 2次元
- 中心力ポテンシャル
- 井戸型ポテンシャル
- 中心力ポテンシャル
準備
今回は具体的な系についてシュレディンガー方程式を解きはしませんが、シュレディンガー方程式を書き換えたり、一般的に解ける部分を解いておいたりします。 学部生に分かるレベルにしてるので、途中の変形式がちょっと助長に感じるかも知れません。座標表示
上記のシュレディンガー方程式に左から を作用させて、波動関数の座標表示 を用いると、左辺は
となり、右辺は
よって
となります。 ハミルトニアンを書き下すと
ただし はラプラシアンです。 以下では単に と書きます。 このとき、座標表示の時間に依存するシュレディンガー方程式は
となります。
時間と座標の変数分離
時間に依存するシュレディンガー方程式の解として
の形のもの考えましょう。 これを座標表示の時間に依存するシュレディンガー方程式に代入すると(ハミルトニアンが時間に依存しないとして)
左辺は時間のみ、右辺は座標のみに依存するので、これらは時間、座標に依存しない定数となります。 これを とおくと、
となります。 1つ目の時間に関する偏微分方程式は簡単に解けて(例えば『ニュートンの冷却の法則』参照)
となるので、2つ目の座標に関する偏微分方程式が解ければ、その解 を用いて、座標表示の時間に依存するシュレディンガー方程式の解は
となります。 よって、問題は上記の座標に関する偏微分方程式を解くことに帰着します。 この方程式を時間に依存しないシュレディンガー方程式と呼びます。 方程式の形より、時間に依存しないシュレディンガー方程式を解くことは、ハミルトニアンの固有値・固有ベクトルを求めることと同義です。 ちなみに、この固有値は系のエネルギーとなり、通常たくさん出てくるエネルギー固有値は系のエネルギー準位となります。
ここでは解が時間の関数と座標の関数の単純な積であると仮定しましたが、シュレディンガー方程式が線型微分方程式なので、一般的な解はいろいろなエネルギー固有値に属する固有ベクトルの線形結合として書けます。 単に1つのエネルギー固有値の固有関数で書ける場合は定常状態に対応します。 このシリーズ記事では、だいたいこの定常状態を求めるくらいまでしかやりません。
まとめ
- 時間に依存するシュレディンガー方程式(座標表示)
- 時間に依存しないシュレディンガー方程式(ハミルトニアンが時間に依存しない場合)
- 時間に依存するシュレディンガー方程式の解 と時間に依存しないシュレディンガー方程式の解 との関係
- このシリーズ記事で扱うハミルトニアン