読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

量子力学的調和振動子と生成・消滅演算子

座標演算子と運動量演算子の交換関係から始めて、生成・消滅演算子、個数演算子、個数演算子の固有状態などを簡単に見ていきます。 交換関係の計算には「角運動量演算子の交換関係」の記事で導いた交換関係の公式(反可換性、分配法則、ライプニッツ則)なども使っています。

座標・運動量演算子ハミルトニアン

エルミートな演算子である座標演算子  { x } と運動量演算子  { p } は交換関係

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[x,\,p\right] = i
\end{align*}}

を満たします。 また、調和振動子ハミルトニアン  { \mathcal{H} } は、系の単位を適当にとってパラメータを変数に含めれば以下のように表すことができます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mathcal{H} = \frac{1}{2}\left(p^2 + x^2\right) 
\end{align*}}

生成・消滅演算子  { a^\dagger,\,a }

座標演算子と運動量演算子から、生成演算子、消滅演算子を定義します。 これらはエルミートではなくなりますが、互いにエルミート共役の関係にあります。

定義
消滅演算子 (annihilation operator, destruction operator)  { a } とそのエルミート共役として定義される生成演算子 (createion operator)  { a^\dagger } は、座標・運動量演算子を用いて以下のように定義されます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  a\; &= \frac{1}{\sqrt{2}}\left(x + ip\right) \\[2mm]
  a^\dagger &= \frac{1}{\sqrt{2}}\left(x - ip\right)
\end{align*}}

交換関係
なぜそのような名前になっているかはおいておいて、これらの演算子の交換関係を計算してみましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  [a,\,a^\dagger]
    &= \frac{1}{2}[x + ip,\,x - ip] \\
    &= \frac{1}{2}\left(-i[x,\,p] + i[p,\,x] \right) \\
    &= 1
\end{align*}}

座標・運動量演算子の交換関係とは事なり、生成・消滅演算子間の交換関係は実数の1となります。 生成演算子同士、消滅演算子同士の交換関係は、自分自身との交換関係なので、当然0となります。

ハミルトニアン
ハミルトニアンを生成・消滅演算子を使って表しましょう。 実数  { x,\,y } に対する公式  { (x-iy)(x+iy) = x^2 + y^2 } を思い浮かべれば、ハミルトニアン { a^\dagger a } で表されそうですが、生成・消滅演算子が交換しないために余分の項が出てきます。  { a^\dagger a } を計算すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^\dagger a
    &= \frac{1}{2}\left(x - ip\right)\left(x + ip\right) \\
    &= \frac{1}{2}\left(x^2 + ixp - ipx + p^2\right) \\
    &= \frac{1}{2}\left(x^2 + i\left[x,\,p\right] + p^2\right) \\
    &= \frac{1}{2}\left(x^2 + p^2\right) - \frac{1}{2}
\end{align*}}

よって

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mathcal{H} = \frac{1}{2}a^\dagger a + \frac{1}{2}
\end{align*}}

となります。 ちなみに

  { \displaystyle\begin{align*}
  \hat{a} \hat{a}^\dagger
    &=  \frac{1}{2}\left(x^2 + p^2\right) + \frac{1}{2}
\end{align*}}

より

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mathcal{H} = \frac{1}{2}\left(a^\dagger a + aa^\dagger\right)
\end{align*}}

とも書けますが、あまり使われないかと思います。

個数演算子  { N }

生成・消滅演算子を使って、個数演算子を定義します。 これは定数項を除いてハミルトニアンそのものです。

定義
個数演算子(数演算子 number operator)  { N }

  { \displaystyle\begin{align*}
  N = a^\dagger a
\end{align*}}

で定義されます。

ハミルトニアンとの関係
ハミルトニアンは個数演算子を使って以下のように書けます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mathcal{H} = N + \frac{1}{2}
\end{align*}}

また、計算の必要も無く、個数演算子ハミルトニアンと交換することが分かります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[N,\,\mathcal{H}\right] = 0
\end{align*}}

つまり、個数演算子ハミルトニアンは同時対角化可能ということですね。 後ほど、個数演算子と生成・消滅演算子を使ってハミルトニアンの固有状態を構成します。

生成・消滅演算子との交換関係
個数演算子と生成・消滅演算子との交換関係を計算しておきましょう:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[N,\,a\right]
    &= \left[a^\dagger a,\,a\right] \\
    &= \left[a^\dagger,\,a\right]a \\
    &= -a
\end{align*}}

同様にして

  { \displaystyle\begin{align*}
  \left[N,\,a^\dagger\right]
    &= \left[a^\dagger a,\,a^\dagger\right] \\
    &= a^\dagger \left[a,\,a^\dagger\right] \\
    &= a^\dagger
\end{align*}}

交換関係の定義より、これらは以下のような関係を導きます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  Na &= a(N-1) \\
  Na^\dagger &= a^\dagger(N+1)
\end{align*}}

これらの関係は個数演算子(とハミルトニアン)の固有状態を作る際に使います。

個数演算子の固有状態  { |n\rangle }

生成・消滅演算子を使って個数演算子固有状態を作ることで、ハミルトニアンの固有状態、つまりエネルギー固有状態を構築します。

基底状態  { |0\rangle }
消滅演算子によって消される状態  { |0\rangle } が存在すると仮定します:

  { \displaystyle\begin{align*}
  a|0\rangle = 0
\end{align*}}

この状態は規格化されているとします( { \langle 0|0\rangle = 1 })。 この状態に個数演算子  { N = a^\dagger a } を作用させると当然消えるので、状態  { |0\rangle } は個数演算子  { N }固有値0に属する固有状態となります(なので状態のラベルに0を使ってました)。 また、ハミルトニアン  { \mathcal{H} = N + \frac{1}{2} } を作用させると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mathcal{H}|0\rangle = \frac{1}{2}|0\rangle
\end{align*}}

となり、この状態はエネルギー  { \frac{1}{2} } のエネルギー固有状態であることも分かります。

第1励起状態  { |1\rangle }
 { c_1 } を規格化定数として、状態  { |1\rangle }

  { \displaystyle\begin{align*}
  |1\rangle = c_1a^\dagger|0\rangle
\end{align*}}

と定義します。 この状態に個数演算子  { N } を作用させると

  { \displaystyle\begin{align*}
  N|1\rangle
    &= c_1 Na^\dagger |0\rangle \\
    &= c_1 a^\dagger(N+1)|0\rangle \qquad(\because Na^\dagger = a^\dagger (N+1)) \\
    &= c_1 a^\dagger|0\rangle \\
    &= |1\rangle
\end{align*}}

よって  { |1\rangle } は個数演算子固有値1に属する固有状態であることが分かります。 また、ハミルトニアンを作用させると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mathcal{H}|1\rangle &= \frac{3}{2}|1\rangle
\end{align*}}

となり、 { |1\rangle } はエネルギー  { \frac{3}{2} } のエネルギー固有状態です。 規格化定数  { c_1 } の値も求めておきましょう。

  { \displaystyle\begin{align*}
  \langle 1|1\rangle
    &= |c_1|^2\langle 0|aa^\dagger|0\rangle \\
    &= |c_1|^2\langle 0|\left(a^\dagger a + 1\right)|0\rangle \\
    &= |c_1|^2
\end{align*}}

よって  { c_1 = 1 } となります。 したがって、状態  { |1\rangle } は最終的に以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  |1\rangle = a^\dagger|0\rangle
\end{align*}}

一般の固有状態  { |n\rangle }
 { |1\rangle } の場合を参考にして、状態  { |n\rangle } を以下のように帰納的に定義します:

  { \displaystyle\begin{align*}
  |n\rangle = c_na^\dagger|n-1\rangle
\end{align*}}

ここで  { c_n } は規格化定数です。 状態  { |n-1\rangle }

  { \displaystyle\begin{align*}
  N|n-1 \rangle = (n-1)|n-1\rangle
\end{align*}}

を満たすと仮定し、 { |n\rangle } { N|n\rangle = n|n\rangle } を満たすことを示しましょう。

  { \displaystyle\begin{align*}
  N|n\rangle
    &= c_n Na^\dagger |n-1\rangle \\
    &= c_n a^\dagger(N+1)|n-1\rangle \qquad(\because Na^\dagger = a^\dagger (N+1)) \\
    &= c_1 n a^\dagger|n-1\rangle \\
    &= n|n\rangle
\end{align*}}

よって、確かに  { |n\rangle } は個数演算子固有値  { n } に属する固有状態であることが分かりました。 また

  { \displaystyle\begin{align*}
  \mathcal{H}|n\rangle &= \left(n+\frac{1}{2}\right)|1\rangle
\end{align*}}

より、状態  { |n\rangle } はエネルギーが  { n+\frac{1}{2} } のエネルギー固有状態であることも分かります。 これより、調和振動子のエネルギーは  { \frac{1}{2} } の項を除いて個数演算子固有値で決まり、1(元の単位系では  { \hbar\omega })を単位とした個数で指定されます。  { \hbar\omega = h\nu } は(調和振動子の)エネルギー量子 (energy quantum) と呼ばれます*1。 余分な項  { \frac{1}{2} }零点エネルギー (zero-point energy) と呼ばれます。 

状態  { |n-1\rangle } が規格化されているとして、定義にある規格化定数  { c_n } を定めておきましょう。

  { \displaystyle\begin{align*}
  \langle n|n\rangle
    &= |c_n|^2\langle n-1|aa^\dagger|n-1\rangle \\
    &= |c_1|^2\langle n-1|\left(a^\dagger a + 1\right)|n-1\rangle \\
    &= |c_1|^2\langle n-1|\left(N + 1\right)|n-1\rangle \\
    &= |c_1|^2n
\end{align*}}

よって  { c_n= \frac{1}{\sqrt{n}} } と定めれば  { |n\rangle } は規格化されることがわかります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  |n\rangle = \frac{1}{\sqrt{n}}a^\dagger|n-1\rangle
\end{align*}}

この帰納的な定義を繰り返し使って、状態  { |n\rangle } は状態  { |0\rangle } と生成演算子で表すと以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  |n\rangle
    &= \frac{1}{\sqrt{n}}a^\dagger|n-1\rangle \\
    &= \frac{1}{\sqrt{n(n-1)}}\left(a^\dagger\right)^2|n-2\rangle \\
    &\vdots \\
    &= \frac{1}{\sqrt{n!}}\left(a^\dagger\right)^n|0\rangle
\end{align*}}

固有状態についてもう少し
状態  { |n\rangle } に消滅演算子を作用させると

  { \displaystyle\begin{align*}
  a|n\rangle
    &= \frac{1}{\sqrt{n}}aa^\dagger|n-1\rangle \\
    &= \frac{1}{\sqrt{n}}\left(a^\dagger a + 1\right)|n-1\rangle \\
    &= \frac{1}{\sqrt{n}}\left(N + 1\right)|n-1\rangle \\
    &= \frac{n}{\sqrt{n}}|n-1\rangle \\
    &= \sqrt{n}|n-1\rangle
\end{align*}}

となります。 よって、状態  { |n\rangle } に生成・消滅演算子を作用させると

  { \displaystyle\begin{align*}
  a^\dagger|n\rangle &= \sqrt{n+1}\;|n+1\rangle \\
  a|n\rangle \; &= \sqrt{n}\;|n-1\rangle
\end{align*}}

となり、生成演算子 { n } が1つ大きい状態を、消滅演算子 { n } が1つ小さい状態を作ります。 つまり、エネルギー量子を生成もしくは消滅させます。この意味で  { a^\dagger,\,a } を生成・消滅演算子と呼びます。 また、 { |0\rangle } は消滅演算子によって消されるので、それ以上エネルギーが低い状態がない基底状態 (ground state) となります。

状態  { |n\rangle } { n } の値が異なれば互いに直交することを示しておきましょう。  { m > n } として

  { \displaystyle\begin{align*}
  \langle m|n\rangle
    &= \tfrac{1}{\sqrt{m!}}\langle 0| a^m|n\rangle \qquad
      \left(\because |m\rangle = \tfrac{1}{\sqrt{m!}}\left(a^\dagger\right)^m|0\rangle\right) \\
    &= \sqrt{\tfrac{n!}{m!}}\langle 0| a^{m-n}|0\rangle \qquad
      \left(\because (a)^n|n\rangle = \sqrt{n!}\;|0\rangle\right)\\
    &= 0
\end{align*}}

まとめ

生成・消滅演算子

  { \displaystyle\begin{align*}
  a\; &= \frac{1}{\sqrt{2}}\left(x + ip\right) \\[2mm]
  a^\dagger &= \frac{1}{\sqrt{2}}\left(x - ip\right) \qquad
  & [a,\,a^\dagger] = 1
\end{align*}}

個数演算子ハミルトニアン

  { \displaystyle\begin{align*}
  &N = a^\dagger a \\[2mm]
  &[N,\,a^\dagger] = a^\dagger \\
  &[N,\,a] = -a \\[2mm]
  &\mathcal{H} = N+\frac{1}{2} = a^\dagger a + \frac{1}{2}
\end{align*}}

基底状態  { |0\rangle }

  { \displaystyle\begin{align*}
  a|0\rangle &= 0 \\[2mm]
  \mathcal{H}|0\rangle &= \frac{1}{2}|0\rangle \qquad \Big(N|0\rangle = 0|0\rangle\Big)
\end{align*}}

エネルギー固有状態

  { \displaystyle\begin{align*}
  |n\rangle &= \frac{1}{\sqrt{n!}}\left(a^\dagger\right)^n|0\rangle \\[2mm]
  \mathcal{H}|n\rangle &= \left(n+\frac{1}{2}\right)|n\rangle \qquad \Big(N|n\rangle = n|n \rangle\Big) \\[4mm]
  \langle m|n\rangle &= \delta_{mn} \\[4mm]
  a^\dagger|n\rangle &= \sqrt{n+1}\;|n+1\rangle \\
  a|n\rangle \; &= \sqrt{n}\;|n-1\rangle
\end{align*}}

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

*1:「エネルギー量子」という言葉はプランクの輻射式で用いられますが、この式は箱の中の電磁波を調和振動子としてモデル化して導かれます。

続・正接関数 tan θ の高階導関数

以前の記事 { \tan\theta } の高階導関数 { \tan\theta }多項式で表したときの係数を、表を使って計算する方法を見ました。 今回はその結果を踏まえて、係数を与える式を導きたいと思います。 ただ、完全に一般的には出せていなくて、一部だけの表式となります。

 { \tan\theta } の最高次の係数

まずは  { (\tan\theta)^{(n)} } { \tan\theta } の最高次の係数。 前回出てきた表で一番右端の数です:

n \ m 0 1 2 3 4 5 6 7 8
0 1
1 1 1
2 2 2
3 2 8 6
4 16 40 24
5 16 136 240 120
6 272 1232 1680 720
7 272 3968 12096 13440 5040

この数列を  { a_m^{(0)}\quad(m \geqq 1) } { m } は表の列番号と同じ)とすると、一般項は簡単に分かって

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_m^{(0)} = (m-1)!
\end{align*}}

となります。  { \tan\theta }導関数の係数としても表しておきましょう。

  { \displaystyle\begin{align*}
  (\tan\theta)^{(n)} = \sum_{m=0}^{n+1} t_m^{(n)} \tan^m\theta
\end{align*}}

とおく、つまり  { \tan\theta } { n }導関数における  { \tan^m\theta } の係数を  { t_{m}^{(n+1)} } とおくと

  { \displaystyle\begin{align*}
  t_{n+1}^{(n)} = a_{n+1}^{(0)} = n! \qquad (n \geqq 0)
\end{align*}}

となります。

 { \tan\theta } の2番目に高次の項

次は少しずらして、以下の部分の数列の一般項を求めます。

n \ m 0 1 2 3 4 5 6 7 8
0 1
1 1 1
2 2 2
3 2 8 6
4 16 40 24
5 16 136 240 120
6 272 1232 1680 720
7 272 3968 12096 13440 5040

この一般項を  { a_m^{(1)} } とおくと( { m } は表の列番号と同じ)、前回の表の計算方法より以下の漸化式が得られます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_m^{(1)}
    &= (m-1)a_{m-1}^{(1)} + (m+1)a_{m+1}^{(0)} \qquad(m \geqq 1) \\
    &= (m-1)a_{m-1}^{(1)} + (m+1)! \qquad(\because a_{m+1}^{(0)} = m!)
\end{align*}}

よって、 { a_m^{(1)} } の初項と漸化式は以下のようになります:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    a_0^{(1)} = a_1^{(0)} = 1 \\[2mm]
    a_m^{(1)} = (m-1)a_{m-1}^{(1)} + (m+1)! & (m \geqq 1)
  \end{cases}
\end{align*}}

では、この数列の一般項を求めましょう。 漸化式の両辺を  { (m-1)! } で割ると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \frac{a_m^{(1)}}{(m-1)!} = \frac{a_{m-1}^{(1)}}{(m-2)!} + m(m+1)
\end{align*}}

ここで  { m \geqq 1 } に対して  { b_m = \frac{a_m^{(1)}}{(m-1)!} } とおくと、 { b_m } の初項と漸化式は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    b_1= 2 \\[2mm]
    b_m = b_{m-1} + m(m+1) & (m \geqq 2)
  \end{cases}
\end{align*}}

となるので、 { m \geqq 2 } のとき

  { \displaystyle\begin{align*}
  b_m
    &= b_1 + \sum_{\ell = 2}^m(b_\ell - b_{\ell-1}) \\
    &= 2 + \sum_{\ell = 2}^m \ell(\ell+1) \\
    &= \sum_{\ell = 1}^m \ell(\ell+1)
\end{align*}}

ここで、「階乗冪の和の公式」で導いた和の公式

  { \displaystyle\begin{align*}
  \sum_{\ell=1}^m \ell(\ell+1)(\ell+2)\cdots(\ell+r-1) = \frac{1}{r+1}m(m+1)(m+2)\cdots(m+r)
\end{align*}}

を( { r = 2 } として)使うと

  { \displaystyle\begin{align*}
  b_m &= \frac{1}{3}m(m+1)(m+2) \\
  \therefore \, a_m^{(1)} &= \frac{1}{3}(m+2)! \qquad (m \geqq 2)
\end{align*}}

となります。 これは  { m = 1 } のときも成り立ちます。 よって、結果をまとめると

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_m^{(1)} =
    \begin{cases}
      1 & (m = 0) \\[2mm]
      \dfrac{1}{3}(m+2)! & (m \geqq 1)
    \end{cases}
\end{align*}}

となります。 前節の  { t_m^{(n)} } を表すと

  { \displaystyle\begin{align*}
  t_{n-1}^{(n)}
    &= a_{n-1}^{(1)} \\[2mm]
    &= 
    \begin{cases}
      1 & (n = 1) \\[2mm]
      \dfrac{1}{3}(n+1)! & (n \geqq 2)
    \end{cases}
\end{align*}}

 { \tan\theta } の3番目に高次の項

また少しずらして、以下の数列の一般項を求めましょう。

n \ m 0 1 2 3 4 5 6 7 8
0 1
1 1 1
2 2 2
3 2 8 6
4 16 40 24
5 16 136 240 120
6 272 1232 1680 720
7 272 3968 12096 13440 5040

この数列を  { a_m^{(2)} } とすると、初項と漸化式は

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    a_0^{(2)} = a_1^{(1)} \\[2mm]
    a_m^{(2)} = (m-1)a_{m-1}^{(2)} + (m+1)a_{m+1}^{(1)} & (m \geqq 1)
  \end{cases}
\end{align*}}

となります。 ここに前節の  { a_m^{(1)} } の結果を使うと

  { \displaystyle\begin{align*}
  \begin{cases}
    a_0^{(2)} = 2 \\[2mm]
    a_m^{(2)} = (m-1)a_{m-1}^{(2)} + \tfrac{1}{3}(m+1)(m+3)! & (m \geqq 1)
  \end{cases}
\end{align*}}

漸化式をもう少し変形して

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_m^{(2)}
    &= (m-1)a_{m-1}^{(2)} + \frac{1}{3}(m+1)(m+3)! \\
    &= (m-1)a_{m-1}^{(2)} + \frac{1}{3}(m+4)! - (m+3)! \\
\end{align*}}

ここから前節と同じ手順で  { a_m^{(2)} } の一般項を求めると

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_m^{(2)} =
    \begin{cases}
      2 & (m = 0) \\[2mm]
      \dfrac{1}{18}(m+5)! - \dfrac{1}{5}(m+4)! & (m \geqq 1)
    \end{cases}
\end{align*}}

となります。 また  { t_m^{(n)} }

  { \displaystyle\begin{align*}
  t_{n-3}^{(n)}
    &= a_{n-3}^{(2)} \\[2mm]
    &= 
    \begin{cases}
      2 & (n = 3) \\[2mm]
      \dfrac{1}{18}(n+2)! - \dfrac{1}{5}(n+1)! & (n \geqq 4)
    \end{cases}
\end{align*}}

 { \tan\theta } の4番目に高次の項

次は結果だけ。

  { \displaystyle\begin{align*}
  a_m^{(3)} =
    \begin{cases}
      16 & (m = 0) \\[2mm]
      \dfrac{1}{162}(m+8)! - \dfrac{1}{15}(m+7)! + \dfrac{1}{7}(m+6)! & (m \geqq 1)
    \end{cases}
\end{align*}}

 { t_m^{(n)} }

  { \displaystyle\begin{align*}
  t_{n-5}^{(n)}
    &= a_{n-5}^{(3)} \\[2mm]
    &= 
    \begin{cases}
      16 & (n = 5) \\[2mm]
       \dfrac{1}{162}(n+3)! - \dfrac{1}{15}(n+2)! + \dfrac{1}{7}(n+1)! & (n \geqq 6)
    \end{cases}
\end{align*}}

これ以降も同様に計算できますが、一般項を出すのは大変なのでここまで。

級数・フーリエ解析 (岩波 数学公式 2)

級数・フーリエ解析 (岩波 数学公式 2)

階乗冪の和の公式

以下のような積の和を一般に与える公式を導きます。

  { \displaystyle\begin{align*}
  S_2(n) &= 1 \cdot 2 + 2 \cdot 3 + 3 \cdot 4 + \cdots + n(n+1) \\[2mm]
  S_3(n) &=1 \cdot 2 \cdot 3 + 2 \cdot 3 \cdot 4 + 3 \cdot 4 \cdot 5 + \cdots + n(n+1)(n+2)
\end{align*}}

参考

概要

後でもう少し一般化した場合を導出しますが、 { n = 2,\,3 } の場合に算数っぽく導出しておきます。 まずは  { n = 2 } の場合。

  { \displaystyle\begin{align*}
  S_2(n)
    &= 1 \cdot 2 + 2 \cdot 3 + 3 \cdot 4 + \cdots + n(n+1) \\
    &= \frac{1}{3}\Big[
        \left(1 \cdot 2 \cdot 3 - 0 \cdot 1 \cdot 2\right) \\
        &\qquad + \left(2 \cdot 3 \cdot 4 - 1 \cdot 2 \cdot 3\right) \\
        &\qquad + \left(3 \cdot 4 \cdot 5 - 2 \cdot 3 \cdot 4\right) \\
        &\qquad + \cdots \\
        &\qquad + \big\{n(n+1)(n+2) - (n-1)n(n+1)\big\}
      \Big] \\
    &= \frac{1}{3}n(n+1)(n+2)
\end{align*}}

角括弧内の第1項内の1つ目の項  { 1 \cdot 2 \cdot 3 } と第2項内の2つ目の項  { -1 \cdot 2 \cdot 3 } が打ち消しあい、第2項内の1つ目の項  { 2 \cdot 3 \cdot 4 } と第3項内の2つ目の項  { -2 \cdot 3 \cdot 4 } が打ち消しあい、というのが続いて、結果的に第1項内の2つ目の項(これは0)と第  { n } 項内の1つ目の項が残ります。

同様にして  { n = 3 } の場合も計算できます。

  { \displaystyle\begin{align*}
  S_3(n)
    &= 1 \cdot 2 \cdot 3 + 2 \cdot 3 \cdot 4 + 3 \cdot 4 \cdot 5 + \cdots + n(n+1)(n+2) \\
    &= \frac{1}{4}\Big[
        \left(1 \cdot 2 \cdot 3 \cdot 4 - 0 \cdot 1 \cdot 2 \cdot 3\right) \\
        &\qquad + \left(2 \cdot 3 \cdot 4 \cdot 5 - 1 \cdot 2 \cdot 3 \cdot 4\right) \\
        &\qquad + \left(3 \cdot 4 \cdot 5 \cdot 6 - 2 \cdot 3 \cdot 4 \cdot 5\right) \\
        &\qquad + \cdots \\
        &\qquad + \big\{n(n+1)(n+2)(n+3) - (n-1)n(n+1)(n+2)\big\}
      \Big] \\
    &= \frac{1}{4}n(n+1)(n+2)(n+3)
\end{align*}}

これで問題の式は導出できましたが、もう少し一般化した公式を導いておきましょう。

導出

 { f_r(n) }

  { \displaystyle\begin{align*}
  f_r(n) = n(n+1)(n+2)\cdots (n+r-1)
\end{align*}}

で定義します。 これを用いて、問題の和を一般化した

  { \displaystyle\begin{align*}
  S_r(n) &= \sum_{m=1}^n f_r(m)
\end{align*}}

を求めます。 求め方は前節で行った方法と基本的に同じです。

まず、 { f_r(n) } を以下のように変形します:

  { \displaystyle\begin{align*}
  f_r(n)
    &= n(n+1)(n+2)\cdots(n+r-1) \\
    &= \frac{(n+r) - (n-1)}{r+1}\cdot n(n+1)(n+2)\cdots(n+r-1) \\
    &= \frac{1}{r+1}\Big\{n(n+1)(n+2)\cdots(n+r-1)(n+r) \\
      &\qquad - (n-1)n(n+1)(n+2)\cdots(n+r-1)\Big\} \\
    &= \frac{1}{r+1}\left\{f_{r+1}(n) - f_{r+1}(n-1)\right\}
\end{align*}}

 { n = 1 } から  { n = N } まで和をとると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \sum_{n=1}^N f_r(n)
    &= \frac{1}{r+1}\Big[
        \left(f_{r+1}(1) - f_{r+1}(0)\right) \\
        &\qquad + \left(f_{r+1}(2) - f_{r+1}(1)\right) \\
        &\qquad + \left(f_{r+1}(3) - f_{r+1}(2)\right) \\
        &\qquad + \cdots \\
        &\qquad + \left(f_{r+1}(N) - f_{r+1}(N-1)\right)
      \Big] \\
    &= \frac{1}{r+1}f_{r+1}(N) \qquad (\because f_{r+1}(0) = 0) \\
    &= \frac{1}{r+1}N(N+1)(N+2)\cdots(N+r)
\end{align*}}

よって

  { \displaystyle\begin{align*}
  S_r(n)
    &= \frac{1}{r+1}n(n+1)(n+2)\cdots(n+r) \\
    &= \frac{1}{r+1}\frac{(n+r)!}{(n-1)!} \\
    &= \frac{1}{r+1} {}_{n+r}P_{r+1}
\end{align*}}

を得ます。

級数・フーリエ解析 (岩波 数学公式 2)

級数・フーリエ解析 (岩波 数学公式 2)