古典力学のいろいろな系で運動方程式を解いていくシリーズ(目次)。 今回はニュートンの運動方程式の極座標表示を導いてみます。 ラグランジアン形式や正準形式の方がラクだったかと思いますが、ついでにやろうと思ったら意外と記事が長くなったのでこれらは後日。
準備
運動方程式
変位ベクトルが で表される質量 の質点に の力が働いているとき、この質点の運動方程式は
で与えられます。
極座標
また、極座標における基底ベクトルを
で定めると、これらの内積は以下を満たします:
ちなみに、変位ベクトルを極座標で書くと以下のようになります(念のため):
変位ベクトルの時間微分を極座標で表す
質点の変位ベクトル の時間微分を計算していきましょう。 表記を簡単にするため、変数の上にドット()を付けて時間微分を表すことにします。1階微分
まず1階微分。 成分表示を直接微分してもいいんですが、ベクトル表記を使って計算していきましょう:
ここで
なので
となります。
2階微分
1階微分の場合と同様にして2階微分も計算しましょう:
ここで
なので、結局
となります。
運動方程式
以上の結果より、運動方程式は
となります。 質点に作用する力 が動径成分と偏角成分に分けて
と書けるとき、運動方程式は以下の様に分けて書くことができます:
ちなみに、 は角速度なので、 成分の方程式に現れる は高校物理でも出てくる向心加速度ですね(高校では と書く項。 質量をかけて向心力 にした方が見覚えがあるかも)。
力がポテンシャルで書ける場合
質点に働く力 が保存力、つまりポテンシャル を使って
と書ける場合を考えましょう(引数の は面倒なので省略します)。 の勾配の各成分を計算すると、連鎖律より(直交座標の成分を極座標の成分で微分した結果はこちらを参照)
よって
つまり
となります。 よって運動方程式は以下の様になります: