倭算数理研究所

科学・数学・学習関連の記事を、「倭マン日記」とは別に書いていくのだ!

複素変数の三角関数

もう少し三角関数の公式シリーズ(目次)。 この記事では、引数が複素数の場合の三角関数の表式を導きます。 もう少し具体的に言うと、{ \sin(x + iy) }{ \cos(x + iy) } などを { \sin x }{ \cos y } などを使って表そうということです。 ちなみに、この記事中では { x,\,y } は実数とします(別に複素数でも式自体は成り立ちますが)。

以前の記事「もしも高校で双曲線関数をやったなら (2) : 負の引数、純虚数の引数」で導いた公式

  { \displaystyle\begin{align*}
    \sin ix &= i\sinh x \\
    \cos ix &= \cosh x
\end{align*}}

より、複素関数三角関数では、自然に双曲線関数が出てきます。

正弦・余弦

正弦・余弦関数は、加法定理を使えば簡単に導けます。

  { \displaystyle\begin{align*}
    \sin(x + iy)
        &= \sin x \cos iy + \cos x \sin iy \\
        &= \sin x \cosh y + i \cos x \sinh y\\[2mm]
    \cos(x + iy)
        &= \cos x \cos iy - \sin x \sin iy \\
        &= \cos x \cosh y - i \sin x \sinh y
\end{align*}}

{ x,\,y } が実数なら)実部と虚部がキチンと分離された表式になってます。

正接

複素変数の正接関数を導くには、「もしも高校で双曲線関数をやったなら (10) : 双曲線関数 tanh の加法定理 再考」で導いた加法定理の表式

  { \displaystyle\begin{align*}
    \tan(\alpha + \beta) = \frac{\sin 2\alpha + \sin 2\beta}{\cos 2\alpha + \cos 2\beta}
\end{align*}}

を使います。 後は正弦・余弦で導いたのと同じです:

  { \displaystyle\begin{align*}
    \tan(x + iy)
        &= \frac{\sin 2x + \sin 2iy}{\cos 2x + \cos 2iy} \\[2mm]
        &= \frac{\sin 2x + i\sinh 2y}{\cos 2x + \cosh 2y}
\end{align*}}

この表式は、分母が実数、分子は実部と虚部が分離されているので、全体としても実部と虚部が分離された形になっています。 「もしも高校で双曲線関数をやったなら (3) : 双曲線関数の加法定理」で導いた正接の加法定理では、このような形にはなりません。

余接

ついでに余接

  { \displaystyle\begin{align*}
    \cot \theta = \frac{\cos\theta}{\sin\theta}
\end{align*}}

についての同様の式も導いてみましょう。 まずは加法定理から。 これには積和の公式を使います。

  { \displaystyle\begin{align*}
    \cot(\alpha + \beta)
        &= \frac{\cos(\alpha + \beta)}{\sin(\alpha + \beta)} \\
        &= \frac{\cos(\alpha + \beta)\sin(\alpha - \beta)}{\sin(\alpha + \beta)\sin(\alpha - \beta)} \\
        &= \frac{\frac{1}{2}(\sin 2\alpha - \sin 2\beta)}{-\frac{1}{2}(\cos 2\alpha - \cos2\beta)} \\
        &= -\frac{\sin 2\alpha - \sin 2\beta}{\cos 2\alpha - \cos2\beta}
\end{align*}}

分母・分子に { \sin(\alpha - \beta) } を掛けて積和の公式を使っています。 { \cos(\alpha - \beta) } を掛けて同様の変形をすることもできますが、次に見る複素変数の表式が、実部と虚部が分離された形にならない(少なくとも綺麗な形では)ため、このように変形しています。

加法定理の表式が導けたので、後は正接の場合とやることは同じです:

  { \displaystyle\begin{align*}
    \cot(x + iy)
        &= -\frac{\sin 2x - \sin 2iy}{\cos 2x - \cos 2iy} \\[2mm]
        &= -\frac{\sin 2x - i\sinh 2y}{\cos 2x - \cosh 2y}
\end{align*}}

あれこれ負符号が付いてますが、基本的には正接の表式と変わりありませんね。

まとめ

  { \displaystyle\begin{align*}
    \sin(x + iy) &= \sin x \cosh y + i \cos x \sinh y \\
    \cos(x + iy) &= \cos x \cosh y - i \sin x \sinh y \\[2mm]
    \tan(x + iy) &= \frac{\sin 2x + i\sinh 2y}{\cos 2x + \cosh 2y} \\[2mm]
    \cot(x + iy) &= -\frac{\sin 2x - i\sinh 2y}{\cos 2x - \cosh 2y}
\end{align*}}

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