倭算数理研究所

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三角関数の公式を復習する (11) : 三角関数の積分

三角関数の公式を復習するシリーズ(目次)。 今回は三角関数積分

微分公式の場合と同じように、ここでは正弦・余弦微分公式はオイラーの公式を使って導いているので高校の範囲を逸脱していますが、結果は公式として覚えておくということでいいでしょう。 それら以外の三角関数積分公式は(正弦・余弦積分公式も使って)高校数学の範囲で導けます。

正弦・余弦

正弦・余弦積分は正弦・余弦微分公式から簡単に分かりますが、微分公式の場合と同じようにオイラーの公式を使って導いてみます。

オイラーの公式で正弦・余弦積分公式をまとめて導く
オイラーの公式

  { \displaystyle\begin{align*}
  e^{ix} = \cos x + i\sin x
\end{align*}}

の両辺を積分すれば

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int e^{ix} dx = \int \cos x dx + i \int \sin x dx
\end{align*}}

となりますが、左辺の積分を実行すると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int e^{ix} dx
    &= \frac{1}{i}e^{ix} \\
    &= \sin x - i \cos x
\end{align*}}

となるので

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int \cos x dx + i \int \sin x dx = \sin x - i \cos x
\end{align*}}

実部と虚部を比べると

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int \sin x dx &= -\cos x, &
  \int \cos x dx &= \sin x
\end{align*}}

を得ます。 きちんと微分公式の逆になっていますね。

正弦・余弦積分公式を別々に導く
オイラーの公式を使って三角関数を指数関数で表すと

  { \displaystyle\begin{align*}
  \sin x &= \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{2i}, &
  \cos x &= \frac{e^{ix} + e^{-ix}}{2}
\end{align*}}

となります。 これを使って正弦・余弦積分公式を導いて見ましょう。 まずは正弦:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int\sin x dx
    &= \int \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{2i}dx \\
    &= \frac{\frac{1}{i}e^{ix} + \frac{1}{i}e^{-ix}}{2i} \\
    &= -\frac{e^{ix} + e^{-ix}}{2} \\
    &= -\cos x
\end{align*}}

 { i } がうまく消えて余弦の式(に負符号を付けたもの)になりますね。 余弦の場合も同様に計算できます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int\cos x dx
    &= \int \frac{e^{ix} + e^{-ix}}{2}dx \\
    &= \frac{\frac{1}{i}e^{ix} - \frac{1}{i}e^{-ix}}{2} \\
    &= \frac{e^{ix} - e^{-ix}}{2i} \\
    &= \sin x
\end{align*}}

正接・余接

正接と余接(正接の逆数)の積分は、 { \sin x,\,\cos x } で表せば分母の微分が分子になっている形に持ち込めるので、簡単に積分できます。

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int \tan x \,dx
    &= \int \frac{\sin x}{\cos x} dx \\
    &= -\int \frac{(\cos x)'}{\cos x} dx \\
    &= -\log|\cos x|
\end{align*}}

余接も同じように簡単に積分できます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int \cot x \,dx
    &= \int \frac{\cos x}{\sin x} dx \\
    &= \int \frac{(\sin x)'}{\sin x} dx \\
    &= \log|\sin x|
\end{align*}}

【発展】その他の三角関数

正割・余割の積分はもう少し面倒。 分母・分子に  { \sin\theta } もしくは  { \cos\theta } を掛けて、置換積分で有理式の積分に持ち込みます。 まずは正割:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int \frac{d\theta}{\sin\theta}
    &= \int\frac{\sin\theta d\theta}{\sin^2\theta} \\
    &= -\int\frac{dc}{1-c^2} \qquad(c = \cos\theta,\,dc = -\sin\theta d\theta) \\
    &= -\frac{1}{2}\int\left(\frac{1}{1-c}+\frac{1}{1+c}\right)dc \\
    &= \frac{1}{2}\log \left|\frac{1-c}{1+c}\right| \\
    &= \frac{1}{2}\log \frac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}
    \qquad\left(= \log\left|\tan\frac{\theta}{2}\right|\right)
\end{align*}}

余割も正割と同様に計算できます:

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int \frac{d\theta}{\cos\theta}
    &= \int\frac{\cos\theta d\theta}{\cos^2\theta} \\
    &= \int\frac{ds}{1-s^2} \qquad(s = \sin\theta,\,ds = \cos\theta d\theta) \\
    &= \frac{1}{2}\log \left|\frac{1+s}{1-s}\right| \\
    &= \frac{1}{2}\log \frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
\end{align*}}

まとめ

積分定数は省略してます。

  { \displaystyle\begin{align*}
  \int\sin x \,dx &= -\cos x \\
  \int\cos x \;dx &= \sin x \\[4mm]
  \int\tan x \;dx &= -\log|\cos x| \\[2mm]
  \int\cot x \;dx &= \int\frac{dx}{\tan x} = \log|\sin x| \\[4mm]
  \int\sec x \;dx &= \frac{1}{2}\log \frac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta} = \log\left|\tan\frac{\theta}{2}\right| \\[2mm]
  \int\csc x \;dx &= \frac{1}{2}\log \frac{1+\sin\theta}{1-\sin\theta}
\end{align*}}

高校数学での三角関数の積分の確認』では、ここで示した公式を含めて、いくつかの三角関数の冪の積分を計算しています。