倭式極座標を見ていくシリーズ(目次)。 以前の記事『極座標のヤコビ行列とヤコビアン : n次元』で n 次元極座標というものを導入しましたが、4次元以上の高次空間になると極座標の導入の仕方にもある程度任意性が出てきます*1(この世界が3次元空間であることと何か関係が?)。
今回は偶数次元で、ちょっと違った極座標の定義をしてみます(奇数次元は後日)。 この方法では、体積要素がキレイな形(個人の美的感覚による?)にまとまります。 なにより、各変数の積分が簡単に実行できて、n 次元球の体積が(比較的)簡単に求まります。
また、(今までの話とは全然関係ありませんが)シミュレーションなどで n 次元球体内や n 次元球面上の一様分布を生成する際にも使えます(方法について今回は触れません)。
この極座標について、幾何学的な意味はあまり気にしないで下さい。
目次
- 4次元倭式極座標
- 4次元倭式極座標で求める4次元球の体積
- 偶数次元の倭式極座標
- 奇数次元の倭式極座標
- 単位球体内の一様分布 : 4次元
- 単位球体内と単位球面上の一様分布
- n次元単位球面上・単位球体内の一様分布
2次元
2次元は以前に紹介した極座標と本質的に同じです。
この極座標における体積要素は以下のようになります:
この体積要素を使うと半径 の2次元球の体積(円の面積) は以下のように求められます:
4次元
4次元はこちらで定義した倭式極座標と同じです:
この極座標での体積要素の変換公式は以下のようになります:
この極座標を使って4次元球の体積 を計算すると
6次元
6次元の倭式極座標は以下のように定義します:
体積要素の変換公式は
また、6次元球の体積 は
2m 次元
2m 次元の倭式極座標は (2m-2) 次元の極座標を元に定義します。 新に定義する(角度)変数は の2つ。 を (2m-2) 次元での極座標として
もちろん上記の4, 6次元の倭式極座標はこれを満たすように定義しています。 体積要素の変換公式は
2m 次元球の体積 も上記と同様に計算できて
となります。 この結果は、n = 2m を使って書き換えると、以前の結果『大学数学で求める球の体積:n次元』と同じになります。